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【短編】missing あとがき~ エゴイズムとの葛藤 ~

僕は忘れられない経験をしたことがある。ある素敵な女性を愛した3か月の経験だ。その女性は周りからはメンヘラと呼ばれ、よく言われてはいなかった。僕自身も最初は良く思っていなかった。

ある日、その女性とたまたま二人になったことがあり、話した。彼女はやさしかった。彼女は知的であった。彼女の笑顔は素敵であった。僕は彼女と連絡先を交換したのだった。メッセージをやり取りして感じたことは、彼女のメッセージはとにかく丁寧だったということだ。それは、当時、僕が心のなかに抱えていた寂しさや、疎外感を癒したのであった。僕はやがて彼女に恋をした。彼女も僕のことを好きだといってくれた。

やがて僕らは恋愛関係になった。二人で話すときや、メッセージを交換する、二人で作り上げた世界はこの上ない安心感をもたらし、そこにいることはとてつもなく楽しかった。しかし、それは二人でいる時だけだった。二人でいる姿を見られると、腫物どうしのように見られる。悪口も聞こえてきた。僕が彼女とつながりのある女性に悪口を言われたときに彼女が数少ない友人のその女性と縁を切ってくれたということもあった。僕は怖かった、不安だった。

彼女といることは楽しかった。でも、第三者がそこに見えればたちまち僕は恐怖や、不安に駆られた。結局僕はそれに耐えられなかった。

別れを切り出したとき、彼女は怒らなかった。優しかった。なにか僕の決断を根底からすべて知り尽くしているようであった。別れた僕はあろうことか悲しさよりも安心感を覚えたのだった。

また一人に戻ってから、2か月後の正月。彼女から「あけましておめでとう。」のメッセージと共に、「大好きでした、私を好きでいてくれてありがとう。これからも頑張ってね。」というメッセージが送られてきた。僕は、やはり彼女のことが好きであり、あの決断は誰のせいでもなく、自分のエゴというものであったということに気が付いた。僕は、結局彼女に何も返信できなかった。「ごめんね。」とすら送ることができなかった。

僕は涙だけ流した。僕はやはり彼女のことが大好きだったのだ。

この作品は、そのような僕の実体験ではないが、なにかその体験の後悔や反省に突き動かされて書いた作品のように思える。「さみしさ」や「孤独感」というものを感じ、それを何かによって埋めたい、そのために友人や女性を利用するというエゴイズムと、それに対してこれで本当にいいのかと、揺れ動く心、反省、ためらい。その葛藤のなかに僕らはもがき、苦しむのだ。最後にあのような状況に陥った主人公の牧人であったが、彼はまたそこで感じた「さみしさ」や「孤独」を埋め合わせるために、何かをするだろう。そしてまたそれを後悔し、彼なりに葛藤し続けるだろう。この後に自死をしたという連想を読者がされることを拒んだところで、この作品のあとがき的なものを終わりにしたい。

missing①~⑤まで、1度でも目を通してくださった皆さま、また素晴らしい写真、絵を提供いただいた方に感謝します。

まだ読んでない方は是非こちらまで↓↓

https://note.mu/dakutomedhi/m/me9223a1ceccc

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