Dai Tamesue(為末大)

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Dai Tamesue(為末大)

元陸上選手です。スポーツで社会を良くするぞ! 為末の考え方を知っていただくにはこの本が一番良いです。 https://amzn.asia/d/0ahPXTu4

最近の記事

弱さが増えすぎたとき、社会はどう変わるのか

長文ファンの皆様おはようございます。 希少なものは丁寧に扱われて、多ければさほど気にされないのが世の常だと思います。「弱い」ことは守られる対象であることが多いですが、最近「弱い」が増え、守られなくなってきたと思っています。 弱さは相対的なものです。人間は個体を動物と比較すればあまりにも弱い皮膚を持ち、武器がなく、貧弱です。 人間というグループで考えます。弱さとは偏差値的なものだと考えることができます。 中央値から上にあるものを弱いと見做せば、それはそのグループ全体が他の

    • 人間が家畜になっていくことについての考察

      長文ファンのみなさまおはようございます。 私は人間の家畜化という考え方に興味を持っています。それを説明する前に人間の特性を三つの点にまとめてみました。 ・人間は個体の生涯で環境に適応し、学習することができる ・人間は言語や文化で次世代に学習を引き継ぐことができる(meme文化的遺伝子) ・人間は自ら生み出した技術を環境に埋め込み、相互適用する まず私たちは、他の動物と違い道具を生み出しました。際たるものは言語です。それを環境に埋め込むことで、環境自体が変化をします。

      • ルールを作る側、守らせる側の違いは何か

        長文ファンの皆様おはようございます。 ルールメイキングという言葉が最近教育界では多く聞かれます。元々は厳しい校則が嫌だと生徒たちが、自ら校則を変える取り組みから始まったと聞いています。 伺った話で大変興味深いものがありました。ツーブロック(髪型の一種)が禁止されている学校でそれはなぜかと教員に聞いたところ「就職に不利だから」という回答が返ってきました。 生徒たちは本当にそうだろうかと疑問に思い地元の企業を回って聞いたところ、どこも気にしていないと回答を得ました。

        • 土地は私的に所有できるのか

          長文ファンの皆様おはようございます。 今、万物の黎明を読んでいて土地所有の概念でとても面白いものがありました。 現在の欧州米国(日本も)の土地の私的所有の概念の背景にはローマ法があると言われています。ローマ法における所有は以下の三点が特徴とされているそうです。 1、使用する権利 2、産物を享受する権利 3、損害を与えたり破壊する権利 です。 1と2だけでは私的所有とはみなせません。確かに使用して、産物を享受してもいいが、自由に壊してはならないと言われると、借

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        マガジン

        • 足を速くするマガジン
          1本
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          1本
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          15本

        記事

          大人は十代の子供が起こした問題とどう向き合うべきか

          体操選手が飲酒喫煙が発覚し、五輪を辞退することになっています。自らの辞任なのか、要請され辞任の形を取ったのかどちらかわかりませんが、選手の心境を考えるととても辛いと思います。どうか、協会としても出場できる道を探って欲しいです。 私は三つの観点から、これを機に、十代の子供たちが問題を起こした時に、叱りながら、愛を持って支える社会を作っていくべきだと思っています。 ルールの運用は機械的でない方がいい 車に乗ったことがある日本人であれば知っている通り、高速道路でのスピード違

          大人は十代の子供が起こした問題とどう向き合うべきか

          可愛げとは何か

          長文ファンの皆様おはようございます。 私はリーダーが持ち合わせると有利な資質に可愛げがあると思っています。特に範囲が大きい、例えば国の代表になるとほぼみな可愛げを持ち合わせていると思います。 では可愛げとは何か。もちろん「その人に好意を持てば可愛げが見出せる」はあります。しかし、それ抜きでもその人特有の可愛げもあると思っています。 まず、自らの意図が漏れ出している、があると思います。しかも本人が隠せていると思っている。子供がかくれんぼをしていて、お尻を隠し忘れて見えてい

          可愛げとは何か

          言葉が通じなくなり、同じ船に乗った仲間が引き裂かれていくこの世界において

          長文ファンの皆さまおはようございます。 エリートが使う言語というものがあります。それは英語など外国語が話せるなどではなく、単語の選び方、言い回し、前提とする知識などが共有されているということです。 もともと文字を読む能力は人間には備わっておらず、ここ数千年で獲得しました。眼球運動をコントロールし、文字を音に変えることでなんとか読んでいます。失読症が一定数いるのはむしろ自然なことだと言えます。 活字に触れ議論できること自体がエリートの世界にいることだと考えられます。世界中

          言葉が通じなくなり、同じ船に乗った仲間が引き裂かれていくこの世界において

          正義に染まった集団はなぜ自分たちの姿が見えないのか

          長文ファンの皆様おはようございます。 なぜ正義の集団は自分たちの姿が見えにくのでしょうか。 「自分を知る」のが大事と言いますが、実際には二つの方向があります。 「私が何をしたいか知っている」 「私がどう見られているか知っている」 です。 両者は相関するどころか、関係なく動きます。むしろ逆相関すらありえる。自分が何をしたいか知っていて、どう見られているか知らない人は、うまくいけば無邪気ですが、独善になる傾向にもあります。もちろん正しいことをなすことは大事ですし、バ

          正義に染まった集団はなぜ自分たちの姿が見えないのか

          言葉が生活から離れてしまわないように

          長文ファンの皆様おはようございます。 私は生き抜く力という中学生ぐらいの方向けの本を出しています。中学生に向けて書いた本は実際には大人が読むと面白い本です。中学生はすでに世界を分かり始めているけれど語彙量は多くないので、「本当に思っていることを言わないといけないけれど、言葉はわかりやすくなければならない」という制約があるからでしょうか。 本を出して一年ぐらい経った時にある建設業をしている方から 「うちにお子さんが障害を持っている従業員がいる。彼に生き抜く力という本を渡し

          言葉が生活から離れてしまわないように

          私たち同士の対立を和らげ、穏やかで大きな私たちを作るにはどうしたらいいのか

          長文ファンの皆様おはようございます。 個人が自由になる時代は「私たち」が分散する時代だと思います。小さな私たちができれば、気の合うコミュニティができます。しかし、同時に利害調整が複雑化し大変になります。 以前クロアチアのドブロブニクという街で、内戦に巻き込まれた散髪屋さんのお父さんにインタビューをしたことがあります。お父さんは「我々」と三回言いましたが、それぞれ違う枠組みでした。一回目は、クロアチア人、二回目は爆撃時に街にいた人(ボスニア人含む)、三つ目は宗教(確かカソリ

          私たち同士の対立を和らげ、穏やかで大きな私たちを作るにはどうしたらいいのか

          自由を生きていると思いながら、世界の一部である私たち

          長文ファンの皆様おはようございます。 私は常々自分の取扱説明書を作ることをお勧めしています。それは自分の扱い方を学ぶ意味もあるのですが、もう少し本当のことを言うと、自分という存在がどのような環世界を生きているかを理解するサポートになるからです。 生物学者であったユクスキュルは「環世界」という概念を提唱しました。 環世界は、生物が自分の感覚と行動を通じて知覚する独自の世界のことです。それぞれの生物は異なる環世界を持ち、これにより同じ環境でも異なる認識と行動をします。例えば

          自由を生きていると思いながら、世界の一部である私たち

          人間はなぜシンボルが好きなのか

          長文ファンの皆様おはようございます。 人間はなぜシンボルが好きなのでしょうか。そしてシンボルを生み出してきたのでしょうか。国旗、十字架、ロゴ。そして言語もまたある情報を記号的にまとめたものでもあります。 世界はなぜシンボルでできているのか。これをひっくり返してみると、そもそも人間だけなぜシンボルを重視するようになったのかになります。なぜ人間の言語だけこれほど複雑なのかにもつながる話です。 数日前意識研究のカンファレンスに出た時に、ある研究者の方が人間がシンボルに惹かれる

          人間はなぜシンボルが好きなのか

          人数におけるコミュニケーションスタイルの違い

          長文ファンの皆様おはようございます。 私は人によって得意なコミュニケーションの範囲があるという仮説を持っています。 それぞれの範囲で求められるものを整理してみようと思います。 スピーチ(30人以上) スピーチ、司会者(29-10人) ファシリテート(9-3人) インタビュー(2人) です。 【スピーチ】 スピーチは多くの人にわかりやすく語りかける方法です。語彙量は多くない方がよく、スピードもゆっくりです。目線が重要で、多くの人に目があったと思ってもらう必要が

          人数におけるコミュニケーションスタイルの違い

          私のせいなのか、社会のせいなのか

          長文ファンの皆様おはようございます。 今日は「あなたのせいなのか、あいつのせいなのか」です。 人間は生きていく上で社会との間に葛藤を抱えます。社会は自分の思うようにはならないし、社会は自分に侵食してきます。他者と自分であったり、社会と自分であったり。その葛藤により傷ついたり、成長したりします。 この葛藤は「もやもや」から始まり徐々に「苛立ち」や「怒り」につながっていきます。そうすると心の中でどこかで折り合いをつけないとやっていけなくなります。 折り合いをつけるとは、「

          私のせいなのか、社会のせいなのか

          セカンドキャリアについて考えたこと

          長文ファンの皆様おはようございます。 昨日、宇野常寛さんとお話しさせてもらった時に「私って社会から見てどんな人間に見えますか」とご質問しました。この人は鋭いと思う方には大体この質問をするようにしています。 そうすると「為末さんは実はセカンドキャリアの人じゃないですかね」とおっしゃいました。これは今まであまり返ってきたことのない返答で、これについて1日考えていました。 確かに私は25年どっぷり陸上競技で、その後違う世界に行きました。うまくいっているかどうかは怪しいですが、

          セカンドキャリアについて考えたこと

          言語化は圧縮のセンスであり、傾聴は展開のセンスである

          長文ファンの皆様おはようございます。 言葉が伝わる時、伝える側の言語化の能力と同時に、聴く側の傾聴力も関係します。私たちはついどうすれば伝わるのかを重視してしまいますが、どうすれば「聞けるのか」も大変重要です。 言語は大変に情報量が少なく、ほとんど正確に言い表すことができません。「夕日が綺麗だった」という言葉は、そこにあった周辺の人々、雑踏の音、匂い、ビル群などの無数の情報の中から「夕日」と「綺麗だと感じた気持ち」だけを抜き出しています。 そうしていわばその時の状況の圧

          言語化は圧縮のセンスであり、傾聴は展開のセンスである