DaiTamesue為末大

「身体から考える人間らしさ」を追求していきます。 元オリンピアンで、今は執筆中心の生活を送っています。 事業内容はこちらにまとまっています。 https://www.deportarepartners.tokyo/

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    • 東京五輪観戦記

      東京五輪を観戦して感想などを書きます。

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      諦める力 (小学館文庫プレジデントセレクト)

      大, 為末
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    • 蹴らない走り方

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    ゾーンと現実感

    長文ファンの皆様おはようございます。 アスリートはゾーンと言われる深い集中状態を体験することがありますが、その世界を体験した後、現実感が疑わしく感じられるようになりました。日常の現実感は「現実であると意識している」感じですが、ゾーンの最中の現実感は「現実に直接触っている」と感じます。正確にはゾーンを体験してから日常の現実感が変わってしまいました。 私たちは日常何かを認識する際にモデルを用いていることが知られています。自分の中にそのモデルがなければ認識することができません。

      • 悪ノリ

        スシローでの出来事が問題になっています。この行為は全く擁護するものではないですが、ふと自分の人生で思い出すことがありました。私は昔から「ノリ」というものに敏感でした。 小学生の頃隣のクラスでいじめがありましたが、一番いじめに加担し、ちょっかいを出しているように見える人間が、実はいじめを行うグループの中で最も立場が弱いように見えました。つまり、いじめに積極的に加担することで、自らの集団への従属感を周辺の人間に知らしめているように見えました。 集団の中で立場が弱い人間にとって

        • 言葉が含むもの

          長文ファンの皆様おはようございます。 言葉によって私たちは相手の考えていることを理解します。ですから私たちは表出された言葉に注目しますが、本当に重要なことはそれに付随する情報です。言い換えるとその文脈の中で、言葉になっていない外部情報が重要です。 陸上競技では外部からの助力行為が認められないために、競技場では外からアドバイスすることができません。でも、実際にはスタンドから声をかけることがあります。それほど多くは話せませんが。 あるハードル選手の友人が、ずっとハードルに対

          • 子供の声は騒音か

            子供の声は騒音ではないと法律で定める議論が始まっています。私の知る限りドイツではこの法律を適用しているようです。「そこまでしなくても」という声もあるかもしれませんが、私はこれは法律で定めた方がいいと思っています。 現在でも小学校や保育園幼稚園で子供たちの活動に対し「子供の声がうるさい」という苦情を受けて子供達に活動を制限する事例があります。そういう苦情が入ってきていなくても、遠慮して子供達に制限を強いているところもあるでしょう。「子供の声をうるさい」と感じることは人それぞれ

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          • 東京五輪観戦記
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            ネオテニー戦略② Neoteny strategy

            ネオテニーストラテジーはへの反論はこんなものが考えられます。 「とはいえ人間は柔らかい存在で、再適応可能ではないか。きちんと新しい環境さえやってくれば人は変われるはずだ。」 「努力して唯一無二の存在になれば、替えの効かない存在になり自然と生き残れるはずだ。」 これを考える時にはまず前提として社会的に実力がある人の能力とは「他者が認識できる強化された特性のこと」だということです。言い換えれば他者が認識できなければ優れていることすらわからず、それは能力とすら呼ばれません。

            ネオテニー戦略 Neoteny Strategy

            「性的に成熟した状態でありながら未成熟な機能が残ること」をネオテニーと言います。そのままの意味ではありませんが、この概念を利用して「機能しながらも、未成熟な状態を残すこと」を勝手に私はネオテニーストラテジーと呼んでいます。 私たち人類は生まれた環境に適応するよう成長します。生まれた国の母国語が自然と喋れるようになるのもそのためです。最適化することでその環境下では機能するものの、違う環境ではうまく機能しないということが起きます。 柔道の小学生の全国大会が廃止されましたが、理

            マスク着用・非着用について

            この三年間、マスクの着用、非着用には何が影響しているのかにとても興味を持っていました。人間を理解する上で絶好の材料だと思ったからです。そこで全くの私の主観ではありますがマスクの非着用傾向にあるタイプを分類してみました。なお疾患をお持ちや、職業上の理由で着用しなければならないなどは除きます。またこれはマスクの着用、非着用が個人の自由であることを否定するものではありません。 ①肌が敏感な人 私は高校生になるまでジーンズを履けなかったのですが、それは敏感肌が影響してか接してい

            息子の教育をどうするか

            ChatGPTを触り続けていて、人間の知的労働のほとんどは代用されてしまうと確信するようになりました。息子が大きくなった頃にはどんな仕事のやり方になっているのだろうとこれまでは考えていましたが、息子どころか私の働き方や仕事が劇的に変わるわけです。息子に対して「これをやっておけば将来役にたつ」と言えることがほとんどなくなってきたと感じています。 とはいえ父親の威厳を保つためにも教訓めいたものを自分なりに考えました。おそらく以下に挙げる三つは今後もなくならないのではないかと予想

            スポーツの未来

            スポーツはこれから ①観戦型 ②プレイ型 の二つに分かれていくと思います。今行われているWBCでの野球やワールドカップで盛り上がったサッカーは観戦型です。他にはアメフト、テニス、などでしょうか。このスポーツのビジネスモデルは観戦(放映権料やスタジアム収入)が主なので、大きな競技場を必要とします。世界中どこでも試合が見られる為に、自然と頂点に選手が集約され始め、本当に一握りのエリートが人気も富も総取りするモデルになっていきます。 ①は伝統的なものが多く、ルールの変更がほとんどな

            境界知能と自由な意思決定

            昨今の「炎上動画」「闇バイト」などの背景には、境界知能の問題があると私は考えています。 私たちの世界は「個人の自由な意思決定」を尊重するようにできています。本人が決定したのであればそれは周りからとやかくいうことではないということになっています。「人間は自分の好みを持ち、自分で考え、自分にとって良い判断を下す能力がある」ことを前提としています。 「ケーキのきれない非行少年たち」「教科書が読めない子供たち」にあるように、実は文章を読み、論理的に考え、判断を下すという能力は誰も

            社会を変える体験をすること

            こちらの取材を受けました。ルールを変える体験を子供の時からしていくことで、日本は変わると思います。 「日本の子どもと、アメリカなど海外の子どもにスポーツを教えたときに、ルールのことを話すんです。日本の子どもたちの一番象徴的な点は、コーチに最初に『何をやっていいんですか』と聞くんですね。ほとんどの国では『何はやっちゃいけないんですか』と聞くんですね。これは全然違うことで、つまり許可された範囲を生きていくのか、自由が基本で許可されてない部分がある中で生きていくのかで、もう広がり

            ハイパーインフレの悪夢

            子供の頃、当たり前のようにあるものがなくなったらどうなるんだろうとよく頭の中で思い浮かべていた。ちょうどブルーハーツの「情熱の薔薇」で「今まで覚えた全部出鱈目だったら面白い」と歌われた頃だ。 もし通貨が出鱈目になったらどうなるのだろうか。それが想像ではなく、第一次大戦後の欧州で現実に起きた様子をつぶさに描いたのが本書である。ハイパーインフレに見舞われたドイツ国民が大混乱する中で、自らの資産は守られているイギリスの駐ドイツ大使が冷静に状況を観察し本国に報告している。その報告書

            社会のバランス(提案、実行、批判、傍観)

            集団を眺めていると個々人の振る舞いは以下のようになっているのではないかという仮説を立てています。集団がうまく行くかどうかは比率の影響を大きく受けていると思っています。 ①提案者(思想家、コンセプター、アーティスト) ②実行者(経営者、実務家) ③批判者(危機管理、メディア、アーティスト) ④傍観者(哲学者、など) ①はこんなことを目指そう、こんな風にしたらいいという理想を語ります。①が最も価値を出すのは問いです。これが本質的であればあるほど答えに価値が出ます。①が多

            二つの人工知能

            素人の全く勝手な空想なのでお許しください。AIが起こす社会変化の未来は自我の捉え方によって違うように思います。 ①私が認識するから世界は存在する ②世界は認識に関わらず存在し私は全体の一部である かです。西洋のインディビジュアルな個人は前者を想定し、東洋の全体の中における個人は後者を想定します。 脳に電極を差し込み、認知の仕方に影響を与えたり、または脳から指令を出し世界をコントロールするというのは①の考え方です。すべての人間が強い主観を持ち、その主観こそがリアリティの

            三つの争い

            私たちが通常何かを競い合う時、三つのレイヤーによって成り立っていると思います。 ①ルール内の競走 ②ルール作りの競争 ③価値観醸成の競争 ①はすでにルールが定められたあるカテゴリー内の競争です。オリンピックや、アプリのランキングなどがこれに当たると思います。特に意識しなければ人は①の競争から人生が始まります。私の最初のキャリアも①の世界でした。 競争は何らかの勝利基準とルールがないといけませんから、それを定めるレイヤーにも競争が存在します。それが②です。オリンピック

            心理的安全性とは何か

            心理的安全性を提唱しているGoogleが大規模なレイオフを行っています。心理的安全性を唱えながらレイオフを行うことについて、どう捉えればいいかを少し考えてみたいと思います。 心理的安全性は提唱者のエドモンドソンによると「組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態」と定義されています。対人関係で少し踏み込んだり、自分の率直な意見を言ってもそれが受け入れられるような状態のようです。端的に言えば、誰でも話がしやすい状態でしょうか。 重要な点は二つあります