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神様がいたと思った

高校三年生の頃、私は毎日夜になると泣いていた。
泣いて泣いて泣き疲れて
そうして眠りについていた。

 
親友がほしい。

 
私は強く強く願った。
友達はたくさんいたけれど、私は唯一無二の親友がほしかった。

 
 
高校時代の親友と微妙な状態であればあるほど
もう仲直りが難しい状況であればあるほど
私は新しい縁を願わずにいられなかった。


 
春からは大学に進学することが確定していた。

大学でこそ、親友がほしい。
神様お願いします。

私が一番好きでその人も私を一番好き。
そんな親友が
大学でこそ、できますように。

 
私は半年間くらい、毎夜毎夜、そう願っていた。
泣きながら、そう願っていた。

 
 
 
 
 
3月に高校時代の親友とサヨナラし、高校時代に別れを告げ
4月になり、私は大学生になった。
18歳の時である。
知り合いは誰一人いない、新天地。
そこで私の新しい生活は始まる。

 
入試後、初めて大学に来たのはオリエンテーションの日だった。
家から大学まで約2時間かかる為、余裕を持って家を出た。
指定された教室には、ほとんどまだ人がいなかった。
どうやらかなり早く着いたらしい。

 
私はドキドキした。
友達はできるだろうか。
大学生活はどんなものになるだろうか。

  
適当な席に座り、そわそわしながらキョロキョロしてオリエンテーション開始を待った。
私は部屋の中央よりやや前側の下手側、四人席の一番右端に座っていた。
私はすぐに通路に行きやすい端席が好きだったのだ。
私の座席からは扉から入ってきた学生の姿がよく見え
チラホラと集まり続ける新入生を見ていた。
そんな時だった。

ガチャッ

私の座席から一番近い扉が開いた。
その時入ってきた人と目が合った。

 
………男?

いや、男…じゃないよな。女……だよな。身長的に。
中性的………とも違う…?
ボーイッシュ?いや、ボーイッシュでもない?
男…に近い何かがある………女?

 
私はその人を見た時、第一印象はそんな感じだった。???がたくさん浮かんだ。
そしてその不思議な印象の人は

私が座っている四人席の左端に座った。

 
えぇー( ̄□ ̄;)!!

 
 
なんで!?
座席、まだまだ、めっちゃ余裕あるじゃん!?
なんでまた、私の列に座ったんだ!?!?
話しかけるべき?
いやでも、四人席の端と端って微妙じゃね?
というか、何話せばいいんだ?

 
私は困惑した。
お互いに目が合い、お互いが相手を気にしつつも、お互いに動かなかった。
そのうちさらに人はどんどん集まり
教室には約200人の新入生が集まった。
私とその人の間には陽キャ二人組が座り、私の前席も陽キャ二人組が座っていた。
どうやらすでに友達のようだ。
高等部からのエスカレーター組だろう。

雰囲気も違うし、既に友達のようだし、話しかけるのはやめておこう。

 
私はそう思い、オリエンテーションを受けた。
確かオリエンテーションは一日がかりだったのだと思う。
午前の部が終わり、みんなが席を立った時
左端の人は私に声をかけてきた。

 
「あの、よければ、一緒にご飯食べませんか?」

 
私は誘われるままに、一緒に学食に行った。
どうやらその人はもともと私狙いでそこに座ったようだ。
その人をAちゃんとする。

 
ご飯こそAちゃんに誘われたが、本来Aちゃんはあまり人付き合いが得意ではないタイプだった。
後から思うと、よく自分からご飯に誘ってきたなと感心するくらいだった。
二人で初めて行った学食は、オリエンテーションの影響もあり、めちゃくちゃ混んでいた。
食券機はいくつかあったが、長蛇の列で、午後のオリエンテーションもあるしと
比較的並びやすい食券機に並び、かろうじて空いてる席に座り、ちゃっちゃとご飯を食べた。
忙しなかったし、初対面の人とご飯を食べたので、食べた気がしなかった。
多分何か定食を食べたのかな?それさえよく覚えていないくらいだ。
会話も特に弾まなかった。
当時、テレビ番組ならあいのりや『ぷっ』すまが私は大好きだったが
Aちゃんが好んだのはNHKだった。
私はJ-POPが好きだったが
Aちゃんはどこぞの外国のデスメタルを好んだ。

合わない………

 
私はそう思っていた。
人見知りしないし、割と会話力はある自信があったが、女性と話していてこんな状況になるのは
あまりないことだった。

 
内心、う~ん…………

 
と思っていた。
さて、どうしたものか。

 
 
午後、オリエンテーションを一緒に受けた後、Aちゃんから提案され、連絡先を交換した。
成り行きで一緒に帰ることになり、私は非常に驚いた。

Aちゃんの最寄り駅は、私の最寄り駅の近くだった。

 
なんということだ…
私は片道二時間かけて通学しているし、うちの大学は様々な県の人が通っているけれど
まさかオリエンテーションでたまたま出会った人が、うちの近くに住んでいるなんて。

 
 
私は迷った。
やりにくいなぁと思った。
何か面倒なことがあった時に避けにくいなと思った。

 
 
うーん…………と私は迷った。
正直、私はしっくりこない。ビビビと来ない。
だが、連絡先は交換してしまった。

私は親友がほしいのだ。
Aちゃんとこうしてなぁなぁで付き合ってしまっては
私の親友ゲット計画が上手くいかない。
だが、最寄り駅は近い。
同じ学部だ。同じ電車になるだろう。

極めて、避けにくい。

 
うーん………と、唸った。
家族に、「オリエンテーション、どうだった?」と聞かれても、「友達できたよ!」とは言いにくい状況だった。
「うんまぁ…一人連絡先交換はして、一緒に帰ったよ。」としか言えなかった。

  
オリエンテーションの次に大学に行く日は、健康診断だった。

 
 
私は迷いつつ、決めた。
自分から連絡はしないようにしよう。
一人で健康診断は受けよう。
そうして近くの人に声をかけてみよう。
そう、決めていた私が大学の最寄り駅に到着した時、Aちゃんから一通のメールが届いた。

「今どこにいますか?一緒に健康診断受けましょう。」

 
私はため息をついた。
仕方ない。諦めるか。まだチャンスはある。
断る理由もないし、一緒にまずは健康診断受けるか。
 
 
その時はそう、思っていた。

 
 
 
 
さて、結果論だが、Aちゃんとはその後一週間もしない内に親友になったことを記しておこう。
むしろ、夢中になったのは私の方だった。

 
Aちゃんとはクラスが同じ、英語のクラスも同じ、第二外国語も同じ、希望する部活も同じ、選択授業も同じ……と
なんでまたこんなに重なるのだろうというくらい、色々なことが被った。
最初こそ乗り気ではなかったが、Aちゃんが段々自己開示をしていき、Aちゃんを知るごとに私は惹かれ、波長が合ったのだ。 

 
朝から夕方まで毎日一緒に過ごし、メールも毎日何十通何百通行った。長電話もした。
バイトがない日や休日に遊んだりもした。

友達は順調にたくさんでき、Aちゃん以外にも友達はできた。
最初は二人で行動していたが、やがて四人で行動するようにもなった。
それでも、Aちゃんは私の一番だったし、Aちゃんにとっても私が特別なのは分かりきっていた。

 
神様はいるんだ。

 
私は入学してわずか二週間で、そう思った。
毎日夜に私が願っていたことを、神様が叶えてくれた。
本気でそう思った。
新入生が約200人いて、自由席で、たまたま目が合ったあの時から
こんな友情が始まるなんて
まるでドラマだと思った。

友達はすぐにできても、なかなか簡単に親友はできない。
 
それは今まで生きてきて、よく知っていた。
だからまさか大学でこんなにアッサリ親友ができるとは
思いもしなかった。

 
 
だけど
人生はそう、甘くなかった。

 
神様は私に、願い通り親友を与えたように
同時に大きな試練も与えた。

 

 
 
Aちゃんは私だけに、色々なことを打ち明けるようになるまで、出会ってから一ヶ月も経たなかった。
ヘビーだった。
今まで、色々な友達からそれなりに色々悩み相談を受けていたが
それがまるで赤子のように感じるほど
当時の私にとって、その話は特殊であった。

いや、ぶっちゃけて言えば
私が30数年生きてきて知り合った人の中で
断トツで誰よりも複雑だった。 

 
Aちゃん曰く、「今まで家族にも友達にも誰にも話したことはない。」という類の悩みを
出会ってから僅か一ヶ月で私は打ち明けられた。
何故か私はそう言った前置きで悩み相談が、非常に多かった。

「だってともかは、否定しないじゃない。どんな人も、どんな悩みも。驚きはしても、引かないじゃない。」

友達の一人がいつかそんな風に言っていたけど、Aちゃんも一ヶ月私と付き合って、そう思ったのかもしれない。
いや、正確に言えば…
あの目が合った瞬間に、何かを察したのかもしれない。
私達は同族だと。私なら受け止められると。

友達付き合いを一ヶ月したからこそ私も分かった。
Aちゃんの人付き合いは基本受け身で
自分から連絡したり声をかけることは
極めて稀だった。

 
 
 
Aちゃんは私と一緒に帰った日、メールで悩みを打ち明けた。英文だった。
前もって文章は打ってあったのだろう。

「ん?メール?誰だ??」 

私がそれを見て、和訳して意味が分かって、私は呆然としながらAちゃんを見つめた。

 
「そういうことだからさ。これからもよろしくね。なんてね。ハハハハハ。」

 
呆然とする私の横で、Aちゃんは笑い続けた。
寂しい笑い方だった。
あの日のちっぽけな私達を、夕日はただ照らしていた。
Aちゃんは困った時や辛い時こそ笑い、私はその横で言葉を失ったり、寄り添って泣くしかできなかった。

 
 
 
私達が謂わば共依存の関係になるまで、時間はかからなかった。

私達は親友以上であり、恋人以上でもあった。
実際、やがてお互いに恋人ができたが
お互いの恋人が、私達の仲に嫉妬した。
分からないでもないと思った。

 
Aちゃんだけでなく、私さえも
今まで誰にも打ち明けられなかった領域を話したし
また話さなくても察してくれたし
私達の関係はもはや完全に親友を越えていた。
出会って一年も経っていないのに
私達はまるで深海魚のようだった。

暗く深い、自分達しか息ができない場所で
ひっそりと寄り添うような関係だと
私は思っていた。

 
 
 
でも、だからこそ、Aちゃんの要求は日に日に強くなっていった。
いや、隠していた…抑えていた本性を、私の前でだけは剥き出しにするようにもなっていった。

「全てを理解してほしい」
「言葉にしなくても完璧に理解してほしい」
「お前なら分かるだろ」
「なんで分かってくれないんだよ!」

 
ハッキリそうAちゃんは言わなかったが、そう言わんとしていることは伝わったし
そう求められていることは分かりきっていた。
私は100点の回答をしなければ、ボロクソに言われ、説教された。

 
「死ね!」

 
何度言われたか分からない。 

 
 
「私にはお前しかいないんだよ。最後の砦なんだよ。」

 
そうも何度も言われた。

 
 
 
Aちゃんの傾向が読めなかった。

何に対して怒り、悲しみ、寂しさや嬉しさを感じるか。
ほとんどの人ならある程度分かるのに
Aちゃんは日によって変わったし
常識や傾向や付き合い経験があまり役に立たないくらい
非常に難しかった。
Aちゃんは誰よりも繊細であり、また誰よりも厳しかった。
 
刺激を与えてはいけないと、やんわりとした表現を使えば「逃げてるんじゃねぇよ!ちゃんと本音を晒せよ。」と怒られ
本音を伝えれば、「お前までそんなありふれたこと言ってるんじゃねぇよ!」と泣かれた。 

 
Aちゃんが好きで
誰よりも理解したかった。
私は力不足でダメな人間だと強く思った。
私はAちゃんの話をよく聞いたし
心理学の勉強にも力が入った。

だけどこんな状態で
私達が幸せになれるわけはなかった。

  
 
 
大学に入学して二年が経ち
私とAちゃんはそれぞれカウンセリングに通うようになった。
私の大学はカウンセリングを無料で受けられたのだ。

 
私はプロのカウンセラーとその時初めて会ったわけだが
これがプロなのかと落胆した。
話せば話すほど、私は孤独感が強くなっていった。

理解されなかったし
自分を受け入れてもらえなかった。

 
私はカウンセラー三人と関わったし、大学指定の精神科医にも会ったが、精神科医からは侮辱され
カウンセラー誰に会っても落胆したし、精神科医に対しても不信感を強めた。 

 
 
私とAちゃん以外にもカウンセリングに通っていた人はいたが
それは全員が感じたことだった。

プロのカウンセラーと精神科医のレベルの低さは
当時、臨床心理学を学んでプロの心理屋になろうとしている私達に
激しい絶望感を与えた。

 
カウンセラーや精神科医よりも、教授の方が断トツに優れて気持ちを察してくれたし
友情関係を保とうと、お互いにカウンセリングに手を出すほど
むしろ私とAちゃんは絆を深めた。

お互いを分かるのはお互いしかいないと
皮肉なことにカウンセラーや精神科医が
私達にそれを教えたのだ。

 
余談だが
精神科医はその後、複数の学生だけでなく、病院の患者複数からさえ訴えられて飛ばされたので
本当に色々問題ありの先生だったのだろう。

 
 
 
 
周りの友人から、Aちゃんとの付き合いをやめるように言われた。
私は明らかにボロボロだった。

私「Aちゃん、基本的には優しいんだよ。面白いし、気が合うし。爆発するのはたまにだしさ。応えられない私がダメなだけで、私が悪いんだよ。
Aちゃん、他の子には当たらないしさ…。」

 
友「いや、友達に“死ね!”とか普通言わないし。ともかは優しいし、よくやってるなって思うよ。話聞いてると、なんでそんなことでAちゃんがそこまで八つ当たりするか意味分からない。」

 
私「ねぇ。すごいよね。私は人の心に大雑把だったんだなぁって思った。私の気持ちは全部見透かされるんだよ。すごいよね。色々気づき過ぎちゃうんだろうね。だから同じように察せない、私に苛立つんだろうね。」

  
友「話聞いてるとさ、DVだよ、それ。“優しい時もある”なんて、DV被害者の妻みたいじゃん。」

 
 
DV被害者……私はそう言われた時に、確かにそれに近いなと思った。
恋愛ではないが、惚れた方が負けだ。
私はAちゃんにどうしようもなく、惹かれてしまった。
自分からは手を離せない。

 
私達は出会ってしまった。
もう、引き返せない。

 
 
 
 
そんな時に、講義で境界性人格障害の話を聞いた。
先生は真顔で言った。

 
「境界性人格障害は治りません。その人の人生の責任をとる気がないなら、速やかに離れなさい。」

 
私は胸がグサッとした。

 

  
境界性人格障害。
通称ボーダーである。

講義で学ぶ前から知っていた。
私もAちゃんも知っていた。
特徴はあまりにも当てはまり過ぎた。

Aちゃんは、ボーダーでもあった。

 
でもあった、というのは
Aちゃんは実に色々なものを抱えていて、その内の一つがボーダーだった、という話だ。
いっそ、ボーダーのみだったら
ここまで対応や傾向は難しくなかった…
かもしれない。

 
 
ボーダーの人は魅力的な人が多い。
特徴だけピックアップすれば、関わりたくない人なのだろうが
私のようにその人の魅力にハマッてしまったら最後
このように二人でズルズル堕ちていくしかなかった。

 
理屈はとうに分かっていた。  
分かっていても、どうにもならなかった。 
他にもボーダーの人は周りに何人かいたが
教授が言ったように
責任をとる気がないなら生半可な覚悟で関わってはいけないほど
ボーダーの人は他者を巻き込み、振り回し、精神を病ませた。

そういった障害なのだ。

 
 
他のボーダーの人が無能な私を見限り、離れたように
Aちゃんもやがて大学を休学し、私から離れた。
不安定になり、感情的になると着信拒否やメール連投もしょっちゅうだったが
休学を機に、私とAちゃんは連絡を半年間とらなかったし、会わなかった。

Aちゃんがついに、無能な私に絶望したのだ。
泣きながら「死ね!」「お前なんか最低だ!」「いなくなれ!」と喚いたAちゃん。 
私は「ごめん…分かってあげられなくて、本当ごめん……。」と泣きながら謝っていたけど
多分あの時は二人とも深く傷つき、傷つけるしかできなかった。

 
これだけ罵られても、私はAちゃんを全く嫌いになれなかった。
それはやはり、私の陰の部分を誰より理解し、寄り添ってくれたのがAちゃんであり
不安定にさえならなければ、一緒にいる時は楽しかったからだろう。

 
 
 
留年したAちゃんは、それでも私の卒業式に来てくれた。
離れてから半年後、私の方から連絡をとり、あっさりと和解したのだ。

 
A「大事なお前の卒業式だ。晴れ姿は写真撮らないとな。」

  
留年したAちゃんは同級生に会いにくいだろうに、気合を入れてスーツを着てやってきた。 
そんなことを言いながら写真を撮る姿を見て

おいおい、彼氏かよ(笑)

と、私は本気で思った。
 
 
 
なんやかんやあったが、共に過ごす時間が減り、またAちゃんも服薬したり、生活環境を整えることで
以前のように爆発することは激減していった。

私は私で大学から専門学校へと進学したり、就職することで
環境が大きく変わり
Aちゃんとの連絡頻度や会う回数は減っていった。

  
私はそれでいいと思った。

私達は近くにいると、どうしても強く惹かれ、必要以上に求めすぎてしまう。
心身を激しく消耗してしまう関係に
明るい未来はない。

 
   
 
大学を卒業してから6年後くらいだろうか。

私は休日にAちゃんの発案で一緒にシフォンケーキを作り、共に過ごした。
私は普通に楽しく過ごせたのだが
その時の何かがAちゃんの気に障ったらしかった。

 
それを機に、Aちゃんは私を着信拒否にした。 

 
 
  
その頃の私は、もうすっかりAちゃんに慣れていた。 

あ~またかぁ(笑)

と余裕があった。



Aちゃんからの着信拒否はもう何十回目だし、くっついて離れてをもう何回も繰り返していた。
だから私はAちゃんが着信拒否をしてもすぐに解除をする癖を知っていた。
私もしくはAちゃんが、少し時間が経った頃にどちらからともなく連絡をして
またなぁなぁになっていた。

出会ってから10年。
私はそろそろ潮時だと思った。

 
Aちゃんは就職したし、人間関係も上手くやれているようだ。
もう私がいなくても大丈夫だろう。
いや、むしろ私がいたらダメだろう。
こうしてお互いに私達は距離感を間違えて、互いを傷つけるまで求めすぎてしまう。
好きだからと、傷つけ合ってしまう。

お互いのために、良くない。

 
私は携帯番号もメアドも変えない。
拒否設定もしない。
Aちゃんが再び連絡をとりたいと願うならば、私は
何かしら返す。

でも、私からはもう、しない。
Aちゃんが好きだからこそもう
私はこれ以上関わってはいけない。

 
 
 
 
それから更に数年後、私は間違ってAちゃんに電話をかけてしまい、慌てて切った。
2コールくらいだろうか。

Aちゃんからは速攻でメールが来た。
「何か用?」

 
私は誤って電話をしてしまった旨を伝えたら
まぁ~怒られた怒られた(笑)
それならそうとそっちから詫びろだとかなんやかんや
長文メールがやってきた。

 
相変わらず、お元気そうで(笑)
そして、真面目だなぁ(笑)

   
私は怒られながら笑ってしまった。
自然消滅した関係の人の2コールなんか、私なら無視だ。
ほおっておく。
それができないのがAちゃんの性格なのだ。

 
 

 
  
高校時代の親友。
大学時代の親友。
そして、大学卒業後に出会った親友。

その人達はみんな、目や雰囲気がよく似ていた。
そして全員、イニシャルが同じだった。
 
私は一体何の縁があるというのだろうか。
私はそういった人に何故か強く強く惹かれてしまう。

 
 
全ての人に共通するのが、第一印象は悪いが
やがて急激に仲良くなり
共依存のような関係になることだ。

 
恋人関係には決してならないが
お互いの恋人が妬くほどの濃密な関係になり
やがて、相手から私を拒絶する。
それまで散々色々言ってきたくせに
最後は何も言わずに
問答無用で着信拒否にしてくる。

  
そして、拒絶されてからは
お互いに一切連絡をとらず、その後会うことは全くない。
 
 
 
なんて悲しい人間関係だろうと思った。

長い人生の中の数年間、あまりにも濃い付き合いをして
その後はサヨナラさえ言わずにサヨナラになる。
なんてなんて悲しい人間関係なのだろう。 

 
 
穏やかに楽しく過ごしたい。
好きな人とずっとずっと仲良く過ごせたらいいのに
人間関係はひどく、難しい。

 
人生は出会いと別れの繰り返しだ。

何回も大切な人と別れた。
でも、出会ってから今でも繋がっている人達が
私にはいる。
ありのままの私を大切にしてくれる人達がいる。
新しい出会いも、必ず毎年ある。

私の中から悲しみは消えないけれど
希望もなくなりはしない。

 
大丈夫。
今日も明日も、きっと大丈夫だよ。


 


 







 

 
 

 

 

 

 






 

 
 


 

 



 

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