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言葉のマリアージュ

 物語を読んだ衝撃で、しばらく思考停止になってしまうことが時々ある。

 これまで読んだ中でいうと、パッと思いつくところでは西加奈子さんの『サラバ!』、百田尚樹さんの『錨を上げよ』など。本当に読み終わった後に、どうしようもなく感情が揺さぶられる。物語が放つ吸引力に、一歩も動けなくなる。

 良質な作品というのは、人によってさまざまな定義があると思う。少なくとも、私の中ではその一つの基準としては「カタマリ」が挙げられる。

 登場人物が放つ、エネルギーの「カタマリ」。その気に当てられてしまうと、まるで金縛りにあったかのように、彼らの物語をしばらく引きずることになる。

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 図書館でずっと予約待ちとなっていた本が、ようやく手元に届いた。

 川上未映子さんの『夏物語』という本。2020年には毎日出版文化賞の芸術部門受賞、ならびに本屋大賞にもノミネートされていた本作品。

 この土日は緊急事態宣言の最中ということもあり、とにかく映画を観て本を読むという贅沢な休日を過ごそうと思い立ち、机の上に本を積んでおいた。読むペースは人並みだというどうでもいい自負を持っていたのだが、結局『夏物語』を読み終わるまでに丸一日かかってしまった。

 本当は読んですぐに、本を読んだ個人的な思いや所感を書き残そうとペンもといPCを手に取った。ところが、自分の中で色々想いが溢れすぎてすぐにはまとまらなさそうという結論に至る。おそらく、自分の中できちんとした言葉として形を残すには数日かかりそうな気配。

 本作品は、第一章と第二章に分かれている。前者ではどちらかというと家族との寄り合いというものが中心に描かれているが、後半は生きる意味や子どもを出産する意味などより重いテーマに内容が移っていく。 

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 しばらくまとめるには時間がかかりそうなので、次回に置くとして。

 今回物語に関係なくさらっと思ったことだけ述べるが、料理と相性の良いお酒を組み合わせる「マリアージュ」という言葉があるように、小説と音楽を組み合わせる「マリアージュ」も存在するのではないか、と最近思う。

 もちろんときに音楽には歌詞がある場合が多いので、音楽を一緒に聴いてしまうと言葉の吸収を妨げてしまう恐れもある。その一方でバックミュージックによりさりげなく歌詞付きの音楽が流れることにより、より具体的に物語にどっぷりハマってしまう場合もあると近頃感じるようになった。

 今回『夏物語』を読むにあたって、読む間ずっとエンドレスで流していたのは、チャットモンチーの『生命力』。『夏物語』という作品では、一つに命について扱っているので、個人的には恐ろしくピッタリ合った。

 『夏物語』では黄色を基調とした表紙になっているが、最後まで読み終えた時にどちらかというとイメージカラーは青に近い気がする。 

 ちなみに他に冒頭紹介した西加奈子さんの『サラバ!』はエキゾチックなムード漂うMajor Lazer & DJ Snakeの『Lean On』、百田尚樹さんの『錨をあげよ』はJeff Buckleyの『Hallelujah』なんかが個人的にイメージぴったりだと思っている。(それぞれの曲を聴くたびに、不思議と物語のエピソードが浮かんできてしまう。。)

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 とりあえず、後ほど『夏物語』を読んだ感想と考察についてまとめていければと思います。おすすめの文学と音楽の組み合わせがあれば、ぜひ教えてください。それにしても読後感のある本を読み終わった時の清々しさといったら。もちろん人によって好みが分かれると思いますが、個人的にはぜひおすすめしたい本の一冊です。

 文学と音楽の「マリアージュ」については、クラシックやJazzとの相性についても将来的には合わせられないか試行錯誤していけないかと思う今日この頃。

 

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