見出し画像

ルーマニアの監視と密告体制「心獣」

<文学(101歩目)>
チャウシェスク政権での弾圧は、想像以上に凄まじい。

心獣
ヘルタ ミュラー (著), Herta M¨uller (原名), 小黒 康正 (翻訳)
三修社

「101歩目」は、ヘルタ・ミュラーさんは、チャウシェスク政権のルーマニアで常に強い発信をされていた作家です。

社会主義政権下での「息苦しさ」を発信していて、政権崩壊後の現在に読んでもとても心を突きます。

共産体制下の秘密警察・セクリタテアへの協力を拒否したため職を追われ、発表もままならなくなり、ドイツに亡命。

その過程を通しても、一貫して強い発信をされていたからこそのノーベル文学賞受賞だと思いました。

同じく三修社さんで刊行された「澱み」と、この「心獣」は秀逸です。

チャウシェスク政権は前の世紀に崩壊していますが、コスト意識にかける政府が政権を持つと信じられないことが平気で行われる。

「監視」「密告」等々による体制維持は「コストなんかすっ飛ばさないと出来ない」ので、チャウシェスク政権の様に徹底すればするほど社会は貧しくなり、疲弊していく。

それでも人間は生きていくのだが、ローラの自殺を契機に色々な登場人物が交錯していく。

ここまで徹底した体制にいた方々が、崩壊してからまだ30年程度しか経っていないので、様々なところに人間不信の凄まじい影響があると思う。
読むと「あり得ない世界」ですが、20世紀のルーマニアでは事実として行われていた。

同様の体制を作らないことが強く必要なことだと思いました。

#読書感想文 #わたしの本棚 #心獣 #ヘルタ・ミュラー #ミュラー #小黒康正 #三修社 #チャウシェスク #独裁政権 #ルーマニア #監視 #反体制 #当局 #圧力 #監視人 #独裁者 #弾丸 #墓地 #密告 #共犯者 #従うこと #墓作りを手伝う #尋問 #捜索 #ノーベル文学賞 #スパイ疑惑 #自殺 #殺人 #林檎 #ドイツ人 #文芸 #小説

この記事が参加している募集

#読書感想文

188,902件

#わたしの本棚

18,115件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?