ちょっと先の自動運転を考えてみる「サーキット・スイッチャー」
<SF(11歩目)>
「近未来」の自動運転自動車(自動運転技術)から、ちょっと先の社会を考えてみる。
サーキット・スイッチャー
安野貴博 (著), Rey.Hori (イラスト)
早川書房
「11歩目」は日本の東京大学松尾研究室のロボット開発の現場からの作品です。
著者の安野貴博さんは、開成中学・高校から東京大学工学部。松尾研究室を経て、現在はベンチャー企業設立。まさに絵に描いたような高学歴作家で、ベンチャー企業的な人です。この作品の執筆の背景は、個人的には「コチコチ頭の金融機関に理解してもらうためにやむにやまれず、執筆した」のではないか?と感じました。(笑)
※「事業計画書」よりも「サーキット・スイッチャー」を一読した方が理解しやすい。。。これを読めば、金融機関にも「自動運転技術」についての一定の支持がもらえそう。
そして、自らの夢を伝えるため(ビジネスの仲間を集めるため)に書かれたものだと感じました。
作風は、藤井太洋さんに近似(展開に無駄がない。近未来の実現手前の技術志向。読者の共感を呼ぶための「愛(love)」とエンターテインメントを重視)です。
おそらく安野さんは、何でもできる人の典型の若者だと思います。たぶん、究極的に「目的」のためならば、「手段」に殉じられる若者だと思う。小説家の一面は、彼の能力のほんの一部を活用しているだけだと思いました。
なんとなく、広い面積の自治体の首長に立候補したらオモロイと感じた。ちょっと遠回りかもしれないが、お爺さんたちを束ねて走る「ドロドロした人間関係の技術」を習得すれば大化けしそな感じです。(笑)
このままSFエンターテインメントの作家としても勿論イケる。間違いなく刊行物は読まれる作家の一人。
ただし、なんとなく彼の活動はベンチャー企業主体となると感じます。またベンチャー企業をこれからもやっていてもらいたい。
その意味で、SF好きな人以上に近未来の自動運転技術が現実化した社会(既に、米国で一部現実化している)に関心を持つ人、及び、技術が転換点を迎えると社会に大量にあふれる既存社会に従事されていた人たちの大量失職の社会(ちょっとディストピア)に関心を持つ人におススメです。
※新しい世界を目指すと、旧来の世界の従事者の大量失職を生み出す。この激烈な抵抗勢力と対峙しないといけない。ここがテーマです。
というわけで、若者には参考になると感じました。
日本型社会が崩れる際に、科学技術の変革と言う「津波」は等しく多くの世代をぶちのめしていく。
アメリカの産業社会の変化を他山の石としないで、自らのものとしていくには私たちが育んできた旧来の「センパイコウハイ社会」とは別の新たな世界観の構築必要です。
この激烈な対立を逃げずに処理していくこと。この実務面も含めて、きちんと描かれている新技術関係の読み物になっています。
またこの作品は、ガチガチのテクノロジー型ではなく、お約束の「愛(love)」が沢山注入されています。
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