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バスクから「愛(love)」と子供たちの教育を考える「祖国」

<文学(55歩目)>
9つの物語を丁寧に織り込んだ大作から、「愛(love)」と子供たちの教育を考える。

祖国 (上)
フェルナンド・アラムブル (著), 木村裕美 (翻訳)
河出書房新社

祖国 (下)
フェルナンド・アラムブル (著), 木村裕美 (翻訳)
河出書房新社

「55歩目」はスペインで続いたバスク独立紛争を背景にして、「愛(love)」(家族・パートナー・祖国)と自分たちの子どもたちの教育での気づきを得られる作品です。

フェルナンド・アランブルさんの著作はこの作品しか読んだことがありません。凡百な言葉で言うと知らなかった「バスク独立紛争(※)」が見えてきます。

(※)バスク独立紛争
ヨーロッパ最後のテロ組織といわれるETA(バスク祖国と自由)の活動によるもの。2018年にETAが解体して終了。
創設から解体までの59年間に、テロ回数は3500件以上。854人の犠牲者と12万5千人がバスクの地を離れ離散。武力闘争的な組織は解体したが、まだその処理問題が継続中。

正直なところ、知識で知っていたことが「表面」だとしたら、ここで描かれていることは「裏面」含めての全体。

854人の犠牲者は数字になってしまっているが、その数字の一人一人に人生があり、素晴らしい作品になっている。この技巧が素晴らしい。2016年に刊行されてから、欧州で120万部を売って5年後の2021年に翻訳されたとあるが、納得しました。同時に、この本が120万部売れるEU圏の読者層の底力を感じた。

そして、成長途上の子どもを持つ親として、「テロ集団」「カルト」「反社会的集団」からのアプローチを遮断することを考えているものとして、この「祖国 フェルナンド・アランブル」と「帰りたい カミーラ・シャムジー」は秀逸な作品です。

これらの問題ある組織のリクルート活動において、若者をターゲットにすることは常道であり、何故に若者が勧誘されやすいのか?の解も描かれています。

「祖国」ではETA、「帰りたい」ではISの勧誘方法が描かれています。
また、これらが大きな勢力になる理由は「死を相手に与えることによる恐怖」と「同調圧力」です。

すれっからしのオトナの知見が、ピュアで一本気な若者を誤らせないためにかすかに出来ることだとも感じました。

色々な意味で、長文の作品ですが、家族で読む作品になりました。とても勉強になります。

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