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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする

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恋愛小説です。  過去の傷からクラスメイトに心を閉ざした嫌われ者が、新しい恋によって前を向こうとする痛々しい青春模様を書いている…つもりです。  春…起承転結でいう「起」のパート…
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#親友

【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第60話-夏が来る〜二人の協定

 親友と好きな人が同じだった。そんな時、どうするのが正解なのだろう。
 恋を取るのか、それとも友情を取るのか。そもそも自分でそれを選ぶのは傲慢なのかも知れない。

「協定を結ぼうぜ」

 裕は貴志をまっすぐ見つめて、そう言った。貴志は固唾を飲んで、協定の詳細が語られるのを待った。
 友情と初恋を天秤にかけているなら殴るぞ。裕の言葉が重い。
 でも確かに裕の言うとおりだ。大切な想いを天秤にかけること

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第9話-春、班決め〜裕

 ホームルームで班が決まったものの、修学旅行までに決めないといけないことはたくさんあった。主に自由行動の行き先やスケジュールについて班で話し合わなければならなかった。そのために準備されているホームルームの枠は後二枠。受験生がいつまでも不毛な話し合いをしている時間など、そうそう得られないものだった。
「そんなわけで、放課後貴志の家で続きやろうぜ!」
 あっけらかんと裕が提案する。貴志は不満を顔に出し

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第6話-春、始業式〜裕②

 始業式を終え、山村裕は保健室にいた。今日は始業式のみで解散し、明日は1日かけて実力テスト5教科をこなす。
 本来ならさっさと帰って勉強をするべき日だ。貴重な時間を費やして、それでも裕が保健室に現れたのは進路指導室に呼び出された親友を待つためだった。

「美夏ちゃん今日は何時まで仕事?」
 そのフランク過ぎる口調に養護教諭の黒澤美夏は苦笑していた。
「こらこら彼女じゃないんだから」
 苦笑しながら

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第3話-春、始業式〜裕①

 サッカー部のエース坂本と談笑しながら、山村裕(やまむら ゆう)は通学路を歩いていた。屈託のない笑顔で歯を見せて笑いながら、思春期特有のえぐい下ネタを話す裕に坂本は苦笑していた。
 如月中学校は如月学園所属で、隣接して高校も併設されている。中高一貫校として名高いが、成績順で決まるクラス分けの2組までだけがそのシステムにあやかれる。創設者の強い信念で、生徒同士の競争意識を高める目的らしい。成績のラン

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