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CULUMU主催イベント:デザインは超高齢社会をどこまで“解決”するのか?①

【イベントテーマ】:デザインは超高齢社会をどこまで“解決”するのか?
【開催日】:12月7日(水)18:30~
【登壇者】:金子 剛氏(KAERU株式会社)、吉井 誠氏(シンプレクス株式会社)、萩原 涼平氏(NPO法人ソンリッサ )、川合 俊輔(CULUMU)

「オープニングトーク」/川合(CULUMU)

~はじめに~
今回は「超高齢社会」をテーマにデザインを考えるきっかけをみなさんと一緒につくりたいという想いで企画しました。ここでいう「超高齢社会とデザイン」のデザインというキーワードはかなり幅広いものになるかなと考えています。事業のデザインからインターフェイスやユーザーエクスペリエンスデザイン、サービスのデザイン、行政や仕組みのデザインなども含めたデザイン全体のことを指しているので、テーマとして難しく感じる方も多いかもしれませんがデザインという表現の中にはいろんな意味が込められているということもご理解いただいた上で登壇者の方のお話を聞いていただけると幸いです。

超高齢社会への突入

川合:本イベントでは、まず日本が超高齢社会に向かっていることを認識することが大切だと考えています。65歳以上の人口の割合が約21%を超えると超高齢社会と言われていますが、日本はすでに優に超えており、2035年には3人に1人が高齢者という社会をむかえようとしています。

令和4年版、高齢社会白書による試算では、2035年までに高齢者(65歳以上)の人口 が3割を超えるといわれている。これは端的にいって3割のユーザーが高齢者になるこ とを意味している。世代別金融資産においても無視できないセグメントである高齢者に 対する施策として、高齢者間のデジタル格差、PC・スマートフォンの利用比率などを 考慮したインクルーシブな取り組みが求められる。
超高齢社会の突入
高齢化は 全世界の トップに
世界の高齢化率の推移

川合:世界に目を向けても日本は圧倒的に超高齢社会が進んでいることがわかります。アジア諸国や中国も高齢化が進んでいますが、なかでも日本は高齢化率が高く超高齢社会をリードしているのが日本であるというのが現状です。

これまでのユーザーのスタンダードが大きく変わる。日本社会の変化に対応するサービス・仕組みのデザインが必要に。行政だけでなく民間からの社会保障づくりがより重要となっている
超高齢社会におけるデザインのスコープと社会課題

川合:このような状況から日本の超高齢社会においては「デザイナーやデザインの活用の場が広義になっていくのではないか!?」と考えています。社会保障や行政、デジタル庁、NPO、企業などの活動にデザインを掛け合わせ、事業に携わっている方々との連携した取り組みが、今後デザイナーが活躍する場であり、日本独自の発展の仕方として目指せるのではないかと考えます。

多様な課題を抱える人々

川合:高齢者以外にも日本では964万人、割合にすると約7.6%の人が何かしら障がいを抱えて生活をしています。さらにその中の95%もの人が入院をせず生活をしています。

日本では964万人以上の人が何かしらの課題を抱えて生活を行っています。さらにこの 内の95%にあたる900万人以上の人が施設や病院への入所、入院をせずに生活を行っ ています。
多様な課題を抱える方たち①

川合:2035年になるにつれ高齢化の割合が増加し、白内障や関節痛をはじめとして様々な病気を持つ人が今まで以上に多くなります。高齢社会と障がい者の数というのは相関しているという状況になります。

高齢化社会だけではなく、障がいのある方、外国人の方々、LGBTQなど今までマイノリティとされている方々に対してサービスを提供する事業がこれからますます重要になっていくと考えられます。特にインフラ系が提供しているサービスに関しては、今までマイノリティとして扱われ、ビジネスのターゲットにされなかった方がマジョリティになっていくと考えられるため、今後しっかりと考えたサービスづくり、事業づくりが必要になります。

2035年には 45% (重複除く) 高齢者や障がい者の方が増加すること で、なにかしらの多様な状況や 生活する上での課題を抱える 可能性が高まっている
多様な課題を抱える方たち②

川合:健康に個人差はありますが、超高齢社会において若くて健康という前提はどんどん失われます。しかし大切なのは若くいることよりも、それぞれが自分のライフスタイルや価値観を持っていることであり、その個別化が進むことに配慮しながらサービスやデザインを提供することが必要な社会になっていくと考えられます。
今後5年から10年にわたって高齢社会を前提としたものづくりが重要になってくることが目に見えています。既に先進的な企業においてはこの前提において事業を進めています。これらのポイントが今後の日本の中では差がついていく事業開発のモデルになると考えています。

これまでの日本の超高齢社会に求められるサービスの変化

DX化による弊害

川合:現在銀行をはじめとして、DXを推進する中で「窓口業務」がどんどん削減されています。その時デジタルを活用しきれていない高齢者や障がい者にとってはユーザー体験が著しく低下してしまうというリスクが生じています。本来、DXの目的というのは単に窓口業務の削減や業務効率化だけではなく、「顧客体験やユーザー体験の向上」や「高齢者の体験がよくなる」ということに紐づけるべきですが、残念ながら日本ではDX=生産性向上という考えが普及しています。上の画像にもあるように中国だと約60%、アメリカだと約50%がDX=顧客体験を良くするという価値観があるのに対し、日本だと約30%しか浸透していません。日本は高齢化社会に進むうえでこの価値観を変えていく必要があると考えます。

DXの取り組みにおける目的

川合:欧州ではDX化によって窓口が削減された銀行に対し、60万人近くの高齢者の署名が集められ、訴訟を起こしたという事例があります。そして日本でも近い将来、同じような状況になる可能性もあるのではないかと推測しています。

川合:重点的に取り組んでいるとされている介護業界なども、本来DXを進める方針である一方、まだまだ活用しきれていないと考えている現場担当者が多いというのが現状です。
デザインの力によってまだまだ変化が作れる。課題を解決できる。そんな状況なのかなと考えています。

高齢化の進む欧州にて銀行の急速なデジタル化・窓口業務簡素化に対し訴訟を起こす
深まる社会の分断①
深まる社会の分断②

超高齢社会における新たなイノベーション

川合:超高齢社会はネガティブなことだけではありません。今回「デザインは超高齢社会をどこまで解決するのか?」という挑発的なテーマではありますが、悲観的に捉えるのではなく、「経済成長や新しいサービスのイノベーションの機会」と捉えられるのではないかと考えています。
高齢社会が新しい経済政策や新しいアイデア、新しいサービスのきっかけになると考えられるので、我々も含め今後新たな取り組みが生まれ、進んでいくと良いなと考えております。

高齢社会の成長要因

川合:下の画像のように超高齢社会では、様々な分野で新たなイノベーションが予測されています。先ほども述べましたが、デザイナー、デザインの広がりや活用が増えるというのは日本独自の発展になるのではないかと思います。
しかし新たなイノベーションは様々な難しさがあります。企業、NPOスタッフ含め、いきなり高齢化社会におけるイノベーションなどを理解するのは難しい考えています。そこで本イベントで情報交換をすることにより、当事者の理解や社会に対する理解に繋がるのではないかと考えます。

超高齢社会におけるイノベーションのパターン

川合:また我々としては弊社のソーシャルセクターの繋がりも活用して当事者の方々を巻き込んだデザインアプローチをクライアント様と取り組んでいます。このような活動によって少しでも超高齢社会がデザインによって明るくなれば良いと考えています。

共創型アプローチがより重要に①
共創型アプローチがより重要に②

川合:我々はNPOとパートナーを組み、デザインを提供する取り組みを進めています。今回取り扱った内容の詳細は下記のnoteに記載しておりますので、興味があればぜひご覧ください。



CULUMU主催イベント「デザインは超高齢社会をどこまで“解決”するのか?」note第1弾は以上になります。ありがとうございました!
この後は、登壇者3名の方から様々な視点でのプレゼンテーションになります。
次回は超高齢社会に向けた金融系サービスに取り組まれているKAERU株式会社の金子さん。テーマは「超高齢社会に取り組むスタートアップの組織とは 」です。お楽しみに!


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