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#貴方

ルック

私を見て
そして微笑んで
独りは
哀し過ぎるから
私を眺めて
そして信じて
生まれ落ちたのは
辛過ぎるから
私を許して
そして気に入って
貴方の事など
どうだっていいから

愚かな唇

貴方のその
愚かな唇に
騙されて
私は随分と
酷い事をした
いつか私だけを
見てくれるのではと
淡い期待を
勝手に抱いて
貴方はその
愚かな唇で
大金をせしめる
魔法のように
そして次の
相手を見つけて
同じ事を
繰り返すのね
良心の欠片すら
持ちえない貴方を
傷付ける者など
何処にも居なかった
心が擦り切れ
何かが切れた私は
貴方のその
無機質な心臓に
ナイフを差し込み
地面へ倒れ込む
貴方を眺

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エンドロールは流れない

初めてのデートで
貴方と映画館に行った
楽しそうな映画を
二人で選んで
最後まで鑑賞しても
エンドロールは流れない
隣に居る筈の
貴方も居なくなった
映画館から出ても
誰も街を歩いて居ない
ディストピアの中で
延々と孤独に
生きていると言う事を
時に私は忘れてしまう
機械仕掛けのこの體では

リンサークリーナー

古くなって
くすんでしまった
誰かの心が
壊れ逝く前に
リンサークリーナーで
奇麗にしましょうか
優しい貴方の
傷だらけの體は
そのままが良いわ
言葉に出来ないほど
美しいのだから

傷のない夜

静かに
壊れ逝く
貴方へ
さよならを
傷のない夜を
生きて来た
私には
貴方の
心すら
見えずに
何も
知らないで
離れてしまう
そんな私を
どうか
忘れずに
憎んでいて

卑しい唇

貴方のその
卑しい唇が
月の見えない夜に
怪しく濡れる
私はただ
横目で眺めるだけ
何も出来ず
何にも為れず
時々貴方を
横目で眺めるだけ
化物へと変わり逝く
貴方だった誰かを

辻堂ブルーズ

斜めに描いた
自画像が
崩れ落ち逝く
午後の街
たいして
辛くもないのに
少しだけ
涙が溢れ出す
そんな僕を
気に掛ける
貴方の
横顔から
何故か悲しくて
目を逸らす
何処かで
鳴り響く
辻堂ブルーズ

スワンドーナツ

ロックンロールな夜に
貴方が来るのを待っている
絡んできたヤンキーを
地面へ殴り倒したならば
真夜中のカフェで
スワンドーナツを買おう
それはとても美味しくて
幸せな気持ちになるのさ
冷たい紅茶と一緒に
店の外で食べよう
二人が寂しくないように

無形慟哭

哀しみを他人と
分かち合おうと
してはいけない
それはすぐに形を変え
貴方に圧し掛かり
その心を壊そうとする
優しさを誰かに
分け与えてはいけない
それは時に姿を変え
貴方をあざ笑い
その魂を奪おうとする
延々と貴方が
無形慟哭をしても

その瞳は涙を見せやしない

幾つもの時と
思いが過ぎても
貴方のその
純粋過ぎる瞳は
涙を見せやしない
空しい時や
切ない時だって
抱え切れない程
あったでしょうにね
貴方のあの
未来を眺める瞳は
涙を溢したりしない
憎しみや
微笑みすら
吸い込んでしまった

優しく為りたい

見えない他人の
嘴に突かれても
気を病んだりせず
優しくありたい
知らない者に罵倒され
地面へ殴り倒されても
何事もなく起き上がり
優しく為りたい
貴方が突然
別れ話を切り出しても
静かに受け止めて
優しくありたい

貴方の右手を

静まり返った夕暮れに

突き刺さる初夏の風が

私の體に絡み付き

決して解けないまま

貴方が居る筈の

病室へと足を向けた

機械と点滴に繋がれ

漂白されたシーツの上で

貴方は唯々呻くばかり

混濁した意識の貴方の

弱々しい右手を

握る事しか出来ない私は

睡眠導入剤の投与を医師に告げ

見えない錘の付いた病室から

逃げるように出て行った

程無く貴方は永遠を掴んで

二度とそれを離

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冬の終わり

冬の終わりに
父は死んだ
春に芽吹く
フキノトウを
眺める事無く
冬の終わりに
貴方は消えた
ロカビリーナイトを
共に見る事も無く
冬の終わりは
ただ厳しくて
私は途方に暮れる
紅煉のように

貴方は甘くない

私の嘘を
見逃してくれる程
貴方は甘くなく
私は途方に暮れる
私の言い訳を
黙って聞いてくれる程
貴方は優しくなく
私は打ち震える
貴方など何処にも居ない
全て私の独り芝居だと
誰かに指摘されても
空想の貴方は今日も
私を責め続ける
安い壁掛け時計と共に