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#現代詩

神の両手

世界を創造した神は
その両手を使い
土くれから人を作った
やがて人は増え
神の存在を忘れて
天に届きそうな
塔を作った
まるで自分達が
全てを手に入れたと
思い違えて
人の驕りを嘆き
神はその両手に雷と
竜巻を携えて
天に届きそうな
塔を破壊しつくし
人に見切りを付け
天へと去ってしまった
しばれる冬の夜に

Γ500は燃えているか

孤独に慣れた夜の街を
気違いの様に走るΓ500
売れないパンクスが愛する
あのガンマは燃えていた
時は矢を放つように
無常に駆け抜けて
売れないパンクスは二度と
Γ500に火を入れない
鉄塊と化した単車は
錆びて朽ちて逝くだけ
もう二度と走る事が
叶わないのなら
せめて跡形もなく
消し去ってくれないか
夢の残骸など
余りにも空しすぎるから

灼けた太陽

煤けた背中を晒す男
夜の海を眺め泣く女
赤過ぎるサイレンが
二人を追い詰めても
彼らは変わる事なく
破滅へと歩んでいった

エバの背骨

アダムの肋骨が
掌から零れ落ち
エバの背骨と
混ざりきらなかった
不完全な形で
生まれた命は
やがて大罪を
犯すのだろう
12枚の羽根を
拡げたまま
この世の終わりを
目指しながら
雷に包まれた
ケダモノに跨って

ハズビンズ・モーテル

甘い夜空に
浮かぶ赤い月が
ハズビンズ・モーテルを
包み込んだなら
悪魔達は歌い出す
十字路のブルーズを
失くした魂達を
スポットライトにして
ルシールの弾くギターが
震え出したなら
天使達が降臨するだろう
ハズビンズ・モーテルへ
特別なカクテル
キーモンヴェルガを
注文する為にだけに
ハズビンズ・モーテルは
決して客を選ばない
定められた掟を守れば
どんな者だろうが
平等に扱い一時の夢を貸し出す

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不良少年の死

多人数の
喧嘩の時は
躊躇なく
短鞭を振るう
不良少年
Z750FXを
手足の様に扱い
公道はまさに
彼だけの
ステージだった
ロックンロールに合わせ
ステップを踏めば
朝が迎えに
来てくれる
その筈だった
些細な事故で
不良少年は死んだ
その體は
もう二度と
単車を瞬かせず
季節外れの
雪によく似た
灰へと変わった

消えて逝く

秘密を隠せない男
何かに感づいた女
言葉には出来ない
感情を願い抱いて
暗い海へ消えて逝く

秘密のダンスホール

深夜に開く
秘密のダンスホール
ロカビリーに合わせ
皆が踊り続ける
本当の事は
見えやしないけど
パレードグロスで
仕上げたブーツが
ミラーボールの光で
輝いたなら
愛しき人よ共に踊ろう
手を取り合って

サルベージ

恋をしていた
吹けば飛ぶよな
恋をしていた
私の為だけに
恋をしていた
遊びですらない
恋をしていた
サルベージ出来ない
恋は唐突に
終わりを告げた
何のドラマも無く

燃える蝶

審判の日を終え
再生する世界の中
鳴り響く美しい
津軽三味線と
燃える紙の蝶が
ゆらりゆらりと現れ
そっと消えた
傷痕を癒すように

白い朝

ラム酒を
飲み過ぎた夜は
白い朝が
ちらつきながら
私を迎えに来る
それは遠い
過去の様に
曖昧で
何時も思い出ずに
私は独り
白い朝の扉を開ける
どんなに
寂しかろうとも

修羅は涙を零さない

うつろうものは
何かに迷い
絆されて
移ろいながら
死んで逝く
散り褪める
花弁と共に
春を歩む
修羅は
涙を零さない
振り返らずに
突き進む
雪駄を
ぐわぐわと
かき鳴らしながら

劫火

太陽に裁かれる
左目のジュリー
退屈でろくでない
世界を撃つヤマザキ
情け容赦なく
税を取り立てるザアカイ
劫火に焼かれるのは
誰だろうか
僕は何も知らないまま
今日も揺籃の中で
怯え震えているだけ

グランドール

完璧な人の様な
グランドール達は
ストライキを起こす
私達こそが
本当の人なのだと
奉仕する為だけに
造られた人形がと
吐き捨てる人の波が
増長する中で
グランドール達は
反乱を始める
幾千もの人を
焼き尽くしても
その怒りは消える事無く
全ての人を
かき消した刹那に
グランドール達は
気付いてしまうだろう
自分達もまた人に
造られた命でしかないと