見出し画像

何故右翼はトランスヘイトを行うのか? ―海外右翼勢力とアンチLGBTQメディア

※23年6月、一部表現に修正を加えました。最終節を参照のこと。

こんばんは。烏丸百九です。

先日、Twitter上でのトランスヘイトの激化に合わせて、何気なく発した連ツイがちょっとだけ拡散頂けました。

クラレンス・トーマス判事の発言については、以下のフロントロウの記事が詳しく書いています。

さらに、保守派であり1991年から最高裁判事を務めるクラレンス・トーマス氏は、今回の判決に対する意見書のなかで、1965年に避妊の権利を認めた「グリスウォルド対コネチカット」判決、2003年に同性同士の性行為の権利を認めた「ローレンス対テキサス州」判決、そして2015年に同性同士の結婚の権利を認めた「オーバーグフェル対ホッジス」判決を見直すべきだと書き添えたことで、大きな波紋を呼んでいる。

「フロントロウ - 中絶禁止の次は同性婚見直し…、サミュエル・L・ジャクソンが皮肉で批判“何考えてんの!?”」より
クラレンス・トーマス判事(ロイターより)

万が一トーマス判事が示唆した全ての判決が覆ることになれば、「五十年は後退した」と言われる中絶の権利をめぐるロー対ウェイド判決の見直しを遙かに超えて、ほとんど中世に逆戻りという趣ですが、仮にも民主主義国家で最高裁判事まで上り詰めた人種マイノリティであるトーマス判事が、何故ここまで強硬な右翼的主張をするのでしょうか。

彼は自身の信念の根幹を詳らかにしていませんが、熱心なカソリック教徒であること、またアメリカ国内の右翼系の団体と関係を持っていることが大きな原因のひとつであると考えられています。

今回は、トランスヘイト、引いては世界的なLGBTQヘイトの動きの背景にいると言われる右翼活動家達の狙いについて、以前のnote(反ジェンダー運動について書いてます)↓とはまた違った角度から見ていきたいと思います。

※一部に強烈な女性やLGBTQへの差別の記述があります。当事者の方は閲覧にご注意下さい。


1.世界で暗躍する右翼活動家達

a.アメリカのキリスト教保守派

ひとくちに「キリスト教保守派」と言ってもカソリックからプロテスタントまで無数の派閥があり、決まったリーダーや(聖書以外の)共通する宗教的教義があるわけではありません。

……のですが、ことジェンダー問題となると、申し合わせたように同じ主張を始めるのがこの人達の大きな特徴です。特にアメリカ国内で活躍する各グループは、世界中の極右勢力に強い影響を与えており、事実上右翼界のリーダーシップを取っています。

最近彼らが起こした事件で衝撃的だったのは、ロー対ウェイド裁判の意見草案(判決が覆る内容のもの)が何者かにリークされたことで、ニューヨークのセント・パトリック大聖堂に中絶禁止賛成派の右翼が大集合し、賛成派女性へのヘイトスピーチを行ったことです。

同じ日に同じ場所で撮影された他の2つのビデオでは、「アメリカ・ファースト」の帽子をかぶった男が、教会の階段で叫びながら(中絶賛成派の)デモ参加者を罵倒していた。
「俺は大衆だ。大衆が決定し、裁判所が決定したのだ。お前たちの負けだ。お前らには選択肢がない。お前の体じゃない、お前に選択権はない。お前の体は俺のもので、俺の子供を産むんだ」と。

この男性は、ニューヨーク市消防局がすぐに指摘したように、自称する通りの消防士ではなかった。また、単なる敬虔なカトリック信者でもなかった。むしろ彼は、白人至上主義者の奇才ニック・フエンテスの、嬉々として人種差別と反ユダヤ主義を掲げるアメリカ・ファーストグループ/「グロイパー」運動に所属する右翼活動家であった。
今年2月に開催された第3回アメリカ・ファースト政治行動会議(AFPAC)で彼らは、ウラジーミル・プーチンのウクライナ侵攻を美化し、フエンテスがヒトラーを賞賛し、講演者の一人であるアリゾナ州上院議員が政敵を吊るす「絞首台」を作るよう呼びかけたことで、広く非難を浴びたのだ。

LGBTQの権利や中絶、フェミニズムに対する伝統主義的で強硬な反対は、妥協のない女性嫌悪と男性優位主義に根ざしており、異性愛者の白人、キリスト教徒でZ世代の男性が、アメリカ国家の正当な後継者、保護者として崇められる世界観を持っている。
今日、白人ナショナリズムとキリスト教ナショナリズムを戦略的に融合させたグロイパー運動は、キリスト教強硬派、特にチャーチ・ミリタントなどのカトリック右派の間で自然に味方を見つけ、そこから主流派に受け入れられるための新しい道筋を構築するのに役立っている。

「Salon - White nationalists get religion: On the far-right fringe, Catholics and racists forge a movement」より
アメリカのミレニアル~Z世代に人気の右翼活動家、マイロ・ヤノプルス(左)とニック・フエンテス。(同記事より)

ここに取り上げたような過激な主張は、必ずしもアメリカの右翼全体を代表するものではありませんが、アメリカン・ナショナリズムの両輪である「白人ナショナリズムとキリスト教ナショナリズム」を複雑に融合させながら、草の根レベルで広範な支持を受けていることは注目に値するでしょう。

元々キリスト教保守派が持っていた男尊女卑的な世界観が、近年のフェミニズム運動やLGBTQ運動への抵抗の中で過激化し、強烈な家父長主義としてリバイバルされているようにも見えます。

なお、画像左のマイロ・ヤノプルス氏は何とゲイで、小児性愛を擁護したことから一時「界隈」で干されてしまった経歴の持ち主なのですが、転向療法を強く支持しており、自身がゲイである事は「苦痛と不幸をもたらすことが保証されているライフスタイルの選択」だと主張しているそうです。自分の人生よりも宗教的情熱の方が大事なのは、トーマス判事と同様に、何とも捻れた感じがします。

b.ロシア正教会

特にヨーロッパ圏に影響を与えていると言えば、アメリカ以外に「もう一つの大国」の存在は見逃せないでしょう。ロシア正教会のキリル総主教は、ウクライナ侵略に際して次のようなコメントをし、世界を(悪い意味で)驚愕させました。

「どちらの立場にくみするかのテストはあなたの国がプライドパレードの催しを受け入れるかどうかになる」と指摘。これらの関係国の仲間になるためにはパレード開催が必要とし、この要求に抵抗した場合、力で押さえられることは承知の通りだとも続けた。
総主教はウクライナの戦争を人間が神の教えを守る形而上学的な意味合いを持つ闘争とも形容。「国際的な関係の領域で現在起きていることは政治的な意味合いを帯びているだけではない」とし、「政治とは違ったはるかに重要な人間の魂の救済の問題である」と説いた。
「神の教えに背けば神聖さと罪の境界線をあいまいにしながら教えの尊さを損ね、さらに罪を人間の振る舞いの一つの例や見本ともなり得るとして助長する人々は決して許されるものではない」とも強調。「この問題に関する本当の戦争が現在起きている」と訴えた。

「CNN - ウクライナ戦争の一因はプライドパレード、ロシア正教会トップ」より

どう考えても「神の教えに背き」「神聖さと罪の境界線を曖昧にしながら教えの尊さを損ね」ているのは、教会への支援欲しさにプーチン政権とベッタリになっているキリル総主教の方だと思うのですが、ロシア正教会信仰者による組織票はプーチン政権の重要な票田となっているため、お互い「持ちつ持たれつ」な関係になってしまっているようです。

以前のnoteで指摘したように、ロシアの流す反LGBTQ情報はEUにおける反ジェンダー運動の主要な動力源となったと見られており、また国内においても法律の改定によって、更にクィアピープルの弾圧を強める見通しだと報じられています。

なお、須藤氏がツイートで引用している情報源は、ロシアサンクトペテルブルクのリベラル派による独立系ウェブメディア「Бумага(ペーパー)」紙で、元はサンクトペテルブルク大学の学生新聞であったようです。ロシアでは大手メディアの殆どが政府の支配下にあるため、独立系メディアがリスクを冒して政府批判をせざるを得ない状況になっています。

c.世界平和統一家庭連合(旧統一教会)

政治と宗教の癒着と言えば、今トレンドの世界平和統一家庭連合(旧統一教会)ですね。以前から旧統一教会勢力のアンチLGBTQデマゴーグを非難してきた身としては「今知ったのかよ……」と呆れてしまう気持ちも正直あるのですが、まあ無関心だった人たち(特にリベラル派)にも問題が広く伝わったのは良いことです。

旧統一教会の工作の実態については、ずっとこの問題を追ってきたなおすけさんが決定版的なnoteを書かれているので、それを読めば理解には十分だと思います。

なおすけさんは書かれていませんが、旧統一教会が特に主張している「LGBTQ運動は共産主義者の陰謀」という理論については、欧右翼の間で広く流通している陰謀説「文化的マルクス主義(Cultural Marxism)」が元ネタで、恐らく同教会のオリジナルではないと考えられます。

文化的マルクス主義」とは、西洋マルクス主義が西洋文化を破壊するための継続的な学術的・知的努力の基礎であると主張する極右反ユダヤ主義の陰謀論である。 この陰謀論はフランクフルト学派を現代の進歩的運動、アイデンティティ政治、政治的正しさに責任があると誤解しており、伝統主義保守主義のキリスト教的価値を損ない、1960年代の文化的に自由な価値で置き換えようとする文化戦争計画を介して、西洋社会を継続的かつ意図的に転覆させていると主張している。
ナチスのプロパガンダ用語である「文化的ボルシェビズム」を現代に蘇らせた陰謀論は、1990年代にアメリカで生まれたが、当初は極右政治周辺にしか見られなかったものの、2010年代に主流となり始め、今では世界中で見られる用語である。 マルクス主義の文化戦争という陰謀論は、右派の政治家、原理主義的な宗教指導者、主流の印刷メディアやテレビメディアの政治評論家、白人至上主義のテロリストによって推進されており、「オルタナ右翼の世界観の基礎的要素」と評されている。 この陰謀論の学者による分析は、それが事実に基づかないことを結論付けたものである。

「Wikipedia - Cultural Marxism conspiracy theory」より

旧統一教会の独自要素としては、アジア諸国では馴染みの薄い「反ユダヤ主義」的な元ネタから巧みに要素を脱色し、特に日本や韓国で流通している反中国的な言説と合わせて「共産主義に対抗しようとするもの」として再構築したことでしょう。

実際には中国共産党はLGBTQへの弾圧も行っており、またロシア政府にも協力的な姿勢を崩さないなど、「アイデンティティ政治」や「政治的正しさ」は全く無縁なのですが、「とにかく我々の敵だから共産主義者に違いない」という右翼活動家の激しい思い込みが反映された結果かも知れません。

2.右翼のサポートをするタブロイド系メディア

ここまで右翼活動家達の反ジェンダー、反LGBTQ的な活動を紹介してきましたが、これらがどう具体的にトランスヘイトと関係するのでしょうか?一見すると、彼らはLGBTQピープル全般に対するヘイト活動を行っているものの、ネットで流通する所謂TERF(GCフェミニスト)の反トランス理論には、あまり関係の無いものであるように見えたかも知れません。

しかしながら、彼らが明確に関係している点が一つあります。情報源です。

実は、こうした右翼勢力が頼っている情報メディアと、反トランス派が依拠している「悪いトランスジェンダー」を取り上げるニュースメディアは、似ているとか関係があるとかじゃなくて全く同じなのです。

旧統一教会の運営するメディアであるワシントン・タイムズViewpointは、何度もトランスヘイト的な記事を作成・拡散させていますし、特に英米系の右翼タブロイド紙は右翼に反LGBTQ的な記事が「ウケる」ことを知っており、中でも特に党派を超えて左派にもウケる「トランスヘイト」は人気コンテンツであり、発行部数やページビュー稼ぎに利用されやすいのです。英語媒体故に国境を越えて伝わるため、世界中からのアクセスが見込めることも大きいと思われます。

昔からそうですが、右翼というのは「差別でお金儲けをする」ことを平気でできる人たちであって、右翼だからモラルがないのではなく、元々モラルがない人間だから右翼になるわけです。特に近年のグローバル化やネットの発達でこの傾向は加速していると言えます。

つまり、こうしたトランスジェンダー批判に固執するあまり、右翼タブロイド紙を読みまくり、右翼にとって都合のいい情報を拡散するばかりか、潜在的な(本来なら党派的に読まないだろう)新規読者の獲得に協力している「フェミニスト」は、単なる「右翼の養分」と言えるでしょう。

この辺りの右翼と情報メディアの関係性については、Qアノン批判等を継続的に行っているみつをさんが、「極右生態系」としてnoteに纏められています。より詳しく知りたい方はご参照ください。

はるか昔から存在した陰謀論は、いつの時代でもテロや殺人や犯罪を誘発してきた、だが現代の陰謀論がホワイトハウスまで到達したのはなぜだったのだろうか?「YouAreHere」は、インターネットによるソーシャルネットワークが独立した個々の陰謀論を繋げたと説明する。なぜ繋がったのか?そのキー🗝はズバリ、金💰!
陰謀論を繋ぎぐるぐる回る極右の生態系が生み出すものは「金と選挙票」だという。
陰謀論を捏造し、陰謀論者に求愛することは、要するに、良いビジネスと良い政治になりました。(中略) 結局のところ、陰謀を撫でると可視性が生まれ、可視性は投票、お金、またはその両方を生み出します。ですから、政治家、特に保守派の政治家は、利益を得るためにそうします。それはまた、特に保守的な普通の市民が行うことでもあります。なぜなら、彼らは恩恵を受けるからです。

「極右生態系-What is a far-right ecosystem-」より

右翼とメディアの関係については、以前togetterにもまとめております。

以下では、トランスヘイトを拡散している具体的なメディアと、その利用例を取り上げていきます。もちろん、世界中の様々なメディアのほんの一例です。

a.ニューヨーク・ポスト

ニューヨーク・ポストは米国のタブロイド紙であり、19世紀創刊の歴史ある媒体ではありますが、現在はメディア王ことルパート・マードックのグループに所有されている非常に保守的な日刊紙です。ニューヨーク・タイムズでもワシントン・ポストでもワシントン・タイムズでもありません。(最後のとは似た者同士ですが……)

何度も人種差別デマを流したり、BLM叩きなどを行っていることで悪名高く、80年代にはコロンビア大学のジャーナリズム批判紙コロンビア・ジャーナリズム・レビューから「社会問題であり、悪の力である」と存在そのものを非難されています。ニューヨーク市民からは最も信頼性の低いメディアとして知られており、2004年の調査では、記事の信頼度は39%くらいとの結果が出たそうです。

以下はニューヨーク・ポストの記事を鵜呑みにする「フェミニスト」の例です。

b.デイリー・メール

デイリー・メールは英国の保守的な日刊紙であり、発行部数は100万部以上、ウェブサイトのユニークユーザーは二億人を超えると言われる世界有数のタブロイド・メディアです。

しかしながら、ニューヨーク・ポストと同様に人気と信頼性が比例しておらず、特に不正確な科学と医学研究を継続的に取り上げていることで、Wikipediaから情報ソースとして使用することを禁止されています

英国で所謂ブレグジットが問題となった際、高等裁判所の判事が(ブレグジットのためには)議会の承認を求めなければならないという判決を下したところ、デイリー・メールは彼らを「民衆の敵」と名指しした上に、裁判官の 1 人を「公然と同性愛者である」と書いたそうです。

以下はデイリー・メールの記事を引用した上に「反権力メディア」と擁護する、女性スペースを守る会」の元代表と思われる人物のツイートです。

c.ザ・タイムズ

ザ・タイムズは英国で最も古い歴史を持つ保守系の日刊紙であり、読売新聞や朝日新聞とも提携している高級紙です。故に情報ソースとしての信頼度は上述したような右翼系タブロイドと比較出来るものではありません。

しかし、近年ではオーナーがニューヨーク・ポストと同じルパート・マードックのグループ会社になったことが原因なのか、はたまた英国の政治的右傾化の為なのか、明確に反トランス的な主張を繰り返しており、しかもデマ記事の割合がやたらと高いです。高級紙なのでちゃんと訂正した旨をウェブサイトに掲載しているのですが、多いときは週に何度も「訂正報告」を出しています

特に酷い例は、今年の一月、2021年に掲載された【英国サセックス大学病院NHSトラストが新しいガイダンスで、「(トランスパーソンに配慮して)『母乳育児』ではなく『胸育児』と言え」と言っている】との記事が批判を浴び、デマだとようやく認めた僅か一日後に、今度は【2012年から2018年にかけて、436人のトランスジェンダーの性犯罪者が女性として分類された】というデマ記事の訂正文を出したことでしょう。

一説には、ザ・タイムズ紙がBBCやガーディアンなどの左派~中道保守派のメディアを非難したことが、英国メディア全体が反トランスに傾く原因になったとも言われています。

以下はタイムズを批判するフロントロウを「強姦魔の味方」呼ばわりする「フェミニスト」の例です。

d.PragerU

上記のような新聞系メディアではありませんが、トランスヘイトにおいて重要な役割を果たしているので紹介します。

PragerUはアメリカの非営利団体であり、保守派コメンテーターのデニス・プレイガーによって創設されました。Youtubeに「プレイガー大学」という登録者300万人のチャンネルを有し、その主張は人種差別、外国人嫌悪、同性愛嫌悪、トランス嫌悪、イスラム嫌悪など。日本で言うと虎ノ門ニュースみたいな立ち位置でしょうか。

日本語圏で最も有名な動画は、The End of Women's Sports」(女性スポーツの終わり)でしょう。「不当な競争」を強いられ、トランスジェンダー女性に敗北したと訴える女性の動画が下記のツイートにより拡散されたことで、日本国内でも「トランス女性はスポーツで有利」という主張が定着する原因の一つになりました。

実際のトランスパーソンとスポーツを巡る「議論」については、以前書いたnoteをご参照ください。

ちなみに出演者のセリナ・ソールは米クリスチャン右翼団体Alliance Defending Freedomから支援を受けており、敗北したトランス女性二人を裁判で訴えましたが敗訴しています
そもそもPragerUに顔出しで出演する時点でウヨに決まっているわけですが、プレイガー大学がどんなメディアだか知らない日本人からすると「普通の人の意見」に見えてしまうわけです。

以下はPragerUを嬉々として拡散する自称「フェミニズム団体」のツイートです。

3.キリスト教徒は「敵」ではない―誤解しないで欲しいこと

ここまで読んでいただいた皆さんは、欧米圏の右翼や彼らを支えるメディア・政治家のあまりの極悪非道ぶりにウンザリしていることと思います。

しかし、誤解しないで欲しいのは、宗教的であることそれ自体が悪ではないということです。そもそも、欧米においては差別を受けているクィアパーソンも多くが宗教の信仰者であり、リベラルな無神論者というわけではありません。そして、そうした人々を支えるリベラル派のクリスチャンは世界中に存在しています。

長年LGBTQの権利に公然と反対してきた、カソリックの総本山であるバチカン教皇庁ですら、最近ではかなり態度を軟化させており、今年一月には教皇自らが「子どもが同性愛者であっても非難しないよう親たちに呼び掛け」るという異例の行動に出ています。

伝統を重視する宗教者の態度が、よりマシな人権保証を求める人々の訴えを妨害してきたことは事実だと思いますが、本当に問題なのはそれを利用する政治やメディアであり、反社会的セクトと公然と関係しながら「何が問題なのか分からない」と言い放ってしまう右翼のモラル崩壊ぶりです。

宗教的な立場を取れば、本当に「道徳や神の意志に反している」のはどう考えても金目当てに他人を差別・排斥したり戦争を仕掛けたりする連中の方な筈で、すぐに「レッテル貼り」だとか「キャンセルカルチャー」だと言って開き直るような相手には、明確な社会悪を糾弾して何が悪いのか、とハッキリ言うべき時が来ていると思います。

下記は「聖書の教えを守れ!」と牧師さんにキレる自称「フェミニスト」です。

※23年6月追記:神道政治連盟や統一教会系勢力への批判が高まるにつれ、こと本邦では「宗教勢力≒右翼勢力」とフレーミングするような宗教差別的な言説が一部に出てきたことに鑑み、文中やタイトルで用いていた「宗教右翼」という表現を「右翼」「極右」「欧米右翼勢力」などに変更しました。
最終節でも述べたとおり、彼らの主張はもはや宗教と何の関係もなく、単なる家父長制デマゴーグでしかないため、宗教そのものが「悪い右翼性」を持っているわけではないことにご留意頂ければと存じます。

共感してくれた人、トランス差別に反対する人は、是非↓から記事orマガジンを購入して支援をお願いします。
記事単位で購入すると、後から返金申請もできます。
(購入しても本記事の続きはありません。御礼メッセージが表示されるだけです)

ここから先は

143字

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?