見出し画像

B2B Playlist (with S2)

東京のコレクティヴ、ONENESSに所属するDJ兼ビートメイカーのS2さんと一緒にプレイリストを作りました。「2020年代のR&B」縛りで交互に一曲ずつ選曲した全20曲です。

プレイリスト制作中のやりとりを掲載します。(ア)がアボかど選曲、(S)がS2選曲です。


1. Alex Vaughn「Do You Ever」(ア)

アボかど:まずは一曲入れました!ご存知かと思いますが、Alex Vaughn6LACKSummer Walkerも所属するレーベルのLVRNにいる人です。この曲は去年リリースしたEPに入っている曲で、流していて「これやばい!」と思ってクレジット確認したらRodney Jerkinsが関わっていてブチ上がりました(笑)。

S2:Alex Vaughnは知っていましたが、彼らと同じレーベルまで知りませんでした! Rodney Jerkins関わっていたんですね! EP良いですよね!!!


2. Yo Trane「Stay Down」(S)

S:僕も追加させてもらいました! Yo Trane「Stay Down」という曲です。僕の場合R&Bを聴く時はトラックももちろんなんですが、声から良し悪し入るんですよね。Yo Trane は現行のブラック・コンテンポラリーに通ずるようなモノをこのアルバムからは特に感じました。2021年リリースですね。

ア:これはやばい! 全然知らないシンガーだったので即Spotifyフォローしました! R&Bはなんだかんだ言って歌の音楽なので、声はめちゃくちゃ大事ですよね。この曲の最後の方のドラム抜けてファルセット聴かせる展開とか、かなり普遍的な良さありますね!

S:うわ! 嬉しいです! もともとラップをしていたらしいんですが、お母さんが「歌の方が良い」と言ったというエピソードも素敵だなと思いました。

ア:あー、なるほど! たしかに三連の馴染み方とかにラップやっていた名残りある気がしますね…!


3. Vedo & OG Parker「Face Down」(ア)

ア:一曲入れました。VedoUsherElla MaiDon't Waste My Timeに関わっていた人で、OG ParkerMigosとかがいるレーベルのQuality Controlにいるプロデューサーです。二人とも器用に色々できるタイプなんですけど、この曲はストレートなR&Bって感じでめちゃくちゃ気に入っています!

S:Vedo & OG Parkerきましたね!!! 僕も「Face Down」かなり好きです。このEPはめっちゃ聴き込みました。

EP通して感じたことですが、特に 「Made For 2 」でのVedoのフロウが歌を楽しんでる感じと艶っぽさ全開で最高でした。OG Parkerはトラップの楽曲が多いイメージですが、Muni Long「Crack」とかも「OG Parker ナイスワーク!」ってなりました(笑)。

ア:Vedo & OG Parkerやばいですよね! Vedoはパフォーマーとしてもめちゃくちゃ強いのに裏方をいっぱいやっている人なので、表に出る時は楽しくなっちゃうのかも?と勝手ながら思いました(笑)。


4. RSVP (Ray J, Sammie, Bobby V, Pleasure P)「Money Everywhere」(S)

S:一曲入れました。RSVP (Ray J, Sammie, Bobby V, Pleasure P) の曲です。メンバーを見て問答無用な感じですね。当時の2000年代をそのままアップデートしたような曲で、しかもクリスマス前にリリースするところもまたグッときました。

ア:RSVPは濃すぎて笑っちゃいますよね…R&Bでクリスマス前みたいなシーズンに出すのはたまらないですよね! 次はバレンタインですかね(笑)。

S:次バレンタインっぽいですね! メンバーがメンバーなので、全員集まる機会も少なさそうですし、またシングルでリリースしそうですね(笑)。

ア:確かにRSVPは全員集まる機会少なそう…(笑)。TGTみたいに分裂しないことを祈ります!


5. Cupid & Mr. Talkbox「Slow Dance」(ア)

ア:2000年代繋がりで、自分も2000年代の人の曲を入れてみました! Cupid「Cupid Shuffle」がヒットしたあの人です! その後メインストリームから遠ざかっているものの、地道に活動していてザディコみたいなローカルな音楽に客演したりと地元人気は高いみたいです。

Mr. Talkboxは以前Byron Chambersという名前で活動していたトークボクサーで、サポートミュージシャン的な感じで人気が高くて何気に引っ張りだこな人です。Bruno Mars「24K Magicのトークボックスもこの人ですね。

S:Cupidのこの楽曲アガりました! 「Cupid Shuffle」はクラブで絶対踊る曲ですよね。自分はDJやっていてかけたことないですが、フロアでステップ踏んでいました(笑)。Bryson Chambersって名前カッコいいな…知らなかった。「24k Magic」もやってるんですね! 早速お気に入りに入れました!!

ア:「Cupid Shuffle」とかあの頃のダンスヒット系、なんだかんだでフロアでかかると上がりますよね(笑)。Byron Chambersは2010年のアルバムに入っている「Make You Smile」って曲が超やばいので未チェックでしたら是非! Gラップをディグっていて辿り着いた記憶があります(笑)。

S:「Make You Smile」やばい! 爽快感あって良いです! アボかどさんがこれに辿り着くまでの経緯がめっちゃ気になります(笑)。

ア:確かGラップ専門店の新入荷を毎日見ていた時に出てきたって感じだったような気がします! どのお店だったか忘れちゃったんですけど、あの手のお店はたまにモダンファンク系も入荷されるので…(笑)。

S:そうだったんですね!! 確かに(笑)。 モダンファンク系入荷されますもんね! そこで知ったアーティストとか僕も結構います。


6. Jay Diggs「Back to the Streets」(S)

S:トークボクサーではないファンクが得意なアーティストですが、トークボックスの話題が出たので入れてみました。2021年リリースのJay Diggsのアルバム「JAMS」 からR&B要素の強い一曲です。僕はこのアルバムで知りましたが、通して聴くと他の楽曲もおすすめですね。ファンク好きには特に聴いて欲しいです。

ア:Jay Diggsのこれはやばいですね…! アルバムも聴いてみたんですが最高でした! モダンファンク系というか、こういうところにも甘いR&Bがしれっと入っているから気が抜けませんね(笑)。


7. Will Downing「Say Yes」(ア)

ア:この流れで渋い人を入れてみました! Will Downingは1980年代からやってる大ベテランです。ハウスとかNJS、スムースジャズみたいな曲もやっているんですけど基本的には甘いR&Bが得意な人ですね。これは2021年のアルバムに入っている曲なんですけど、アルバムも全体的に良いのでおすすめです!

S:Will Dowing知りませんでした…。アルバム通して聴いてみたんですがジャケも良い! 花を使ったジャケって打率高めだった気がします。どの楽曲も良かったんですが「Chocolate」「Give You」が僕個人的には好みでした!

ア:花ジャケの打率高いのは確かに(笑)。「Give You」もこの流れではよかったかもですね…!


8. dvsn「What's Up (feat. Jagged Edge)」(S)

S:dvsnの昨年リリースのアルバムから一曲入れました! この楽曲クレジット見た時にJagged Edgeがどういう感じでやるかと思っていたら、僕的には予想外で。「うわ、そうきたかー!!!」ってなりました(笑)。アルバムどの楽曲も良くておすすめです!

ア:dvsnは最高でしたね! 自分もいつ入れようかと思っていたんですけど、先に入れられてしまいました…(笑)。これはJEの存在感もきちんとあるけど、dvsnの人の出番多めなのが絶妙でしたね!

S:あ、すみません(笑)。流石アボかどさん! ほんと仰ったままで絶妙すぎました(泣)。


9. Tank「My Lovers」(ア)

ア:一曲入れました! 2020年にTankが出したピアノ弾き語りEPに入ってる曲です。Tankはヒップホップ要素入れたがるタイプですけど、個人的にはこういう飾らないやつが好きなんですよね〜。

S:このTankも良かったですねー! こういうのがお好きなんですね! 僕はまだアボかどさんの域に達していなくて、ドラムが欲しくなっちゃいます…。

ア:これT-PainTiny Desk Concertみたいなシンプルさがあって好きなんですよね。でもその意見もわかる気がします(笑)。

S:なるほど! あのシンプルさというか仰ってること分かる気がします!!


10. JAHKOY「Reasons (with Amaal)」(S)

S:一曲入れましたー! JAHKOYKehlaniTinasheとかとツアーをやったり、 PharrellDrakeElton Johnとかに気に入られているアーティストです。Rolling Stone誌やXXL誌で「注目すべき」「知るべき」カナダ出身の新人アーティスト10人の一人として紹介されたりもしています。

個人的にも推しのアーティストです。カナダ出身でも当たり外れはあるんですがJAHKOYは群を抜いてる気がしますね。これは2021年にリリースされたアルバムからAmaal(トロント出身シンガー)との楽曲なんですが、Amaalの声もタイプでしばらく聴いていました(笑)。

ア:この人たち、二人とも全然知らなかったんですけど超かっこいいですね…! カナダといえばdvsnもいますし、今後いいR&Bの聖地みたいになったら面白いですね!

S:ありがとうございます!かっこいいですよね! カナダのR&Bシーンがアツくて、時間さえあれば探しています。聖地になったら面白いですね!

ア:自分もカナダR&Bもっとチェックしてみたいんですけど、なんかいいディグり方とかってありますかね…?

S:R&Bのアンテナが高い「RNB RADAR」ってサイトが出している、カナディアンにフォーカスを当てているプレイリストがおすすめです!

ア:そのプレイリストは知らなかったのでありがたいです…! サッと聴いてみましたが、良い曲ありすぎてビビりました(笑)。

S:このプレイリストに辿り着いた時、アボかどさんと一緒の反応しました(笑)。


11. Justin Skye & Timbaland「Hey Sucka」(ア)

ア:一曲入れました! NYのシンガーのJustin Skyeが2021年に出したアルバムに入っている曲です。アルバムはアフロビーツみたいな曲とかもあって今時な感じなんですけど、この曲はTimbalandのメロウサイドがよく出ていてお気に入りです!

S:アツいです! Justin Skyeのこのアルバム良かったですね!この曲僕も好きです! Timbaland絡むと外れないですよね!

ア:やっぱTimbalandってすごいんだな…っていうのを改めて思いました(笑)。


12. Kiana Ledé「Forfeit (feat. Lucky Daye)」(S)

S:一曲入れました! 2020年にリリースされたKiana Ledéのアルバム「KIKI」から、Lucky Dayeとやった曲です。アルバム全体的にトラックもフィーチャリングアーティストも良いんですが、この楽曲は特に良かったのでDJでもかけています!

ア:Kiana Ledéのアルバム、なんていうか「全員」いる感じがありますね…(笑)。ここ何年かのLucky Daye絡みは全部良いですね。この曲もほんと最高です!


13. Afgan「say i'm sorry」(ア)

ア:ちょっと目先を変えてアジアのアーティストを入れてみました! Griselda関連作やD Smokeとかの作品のディストリビューションをやっているEMPIREっていう会社があるんですけど、そこのアジア支部から出しているインドネシアの人です。英語だし普通にアメリカのR&Bと同じ感覚で聴けるんですけど、たまに「歌い方K-POPみたいだな〜」と思う時があるんですよね。そこがアジアらしさなのかも…。

S:Afgan初めて知りました!! この楽曲カッコいいですね!! 確かに同じ感覚で聴いていたんですが、仰ってるアジアらしさちょっと感じました(笑)。良いですね!

ア:Afgan良いですよね! Rich Brianもインドネシアですし、実はすごいところなのかも…(笑)。


14. RINI「Something to Feel」(S)

S:アボかどさんに触発されたので僕からも。メルボルンからロサンゼルスに移住して活動しているアーティスト、RINIが2022年にリリースしたEPから一曲入れました! RINIは2018年リリースの「After The Sun」から知って追っかけているんですが、元々の音楽愛も伝わるし毎回良いんですよね。たまにジャケもGらしさがあったりするので(2021年にリリースしたアルバムは特に)おすすめです!

ア:この曲ビートの浮遊感も最高だし歌も良いし、かなりきていますね…!  Hiatus Kaiyoteもメルボルンですし、あの地のR&B/ソウルシーンは激アツな気がします! そして2021年のアルバムのジャケやばいですね(笑)。

S:確かにHiatus Kaiyoteもメルボルンでしたね!メルボルンもディグしても面白そうです!! 今度探ってみます! ジャケ感伝わって良かったです(笑)。内容も良いので、お時間あるときよかったら聴いてください!


15. Tamara Jewel「Before」(ア)

ア:Gの話が出たのでGな曲を入れました! Tamara Jewelは多分デトロイト拠点でやっている人で、Payroll Giovianni & Cardoの曲で客演していて知りました。

この曲は2022年のEPに入っている曲で、やっぱりGなフレイバーがあって気に入ってます!

S:良いですね! この楽曲、ドラム重たくてG感あるしカッコいい…あのアルバムに入っていたんですね! 近年デトロイトも流行っていますしきそうですね!

ア:R&BですけどG感ありますよね(笑)。デトロイトのヒップホップは今めちゃくちゃ熱いので、このまま客演増えていけばくるような気はします…!

S:普段僕らが出ているイベントでデトロイトのヒップホップにすごく詳しいDJの先輩がいて、色々教えてもらったりしているんですがカッコいいの多いしアツいですよね! Tamara Jewel他の楽曲も聴いたんですがめっちゃ良かったです…!

ア:まだアルバムとかはないようなので、今後が楽しみです!

S:要チェックですね!僕も追っかけます!!


16. Jaszy Shavers & Tavaras Jordan「What You Want」(S)

S:一曲入れました! ノースカロライナを拠点にしているJaszy Shaversの、最近引っ張りだこのTaravas Jordanがトラックを手掛けたEPからです。この楽曲は特にネオソウルっぽい要素とG感がいい具合に混ざっていて、聴き心地良いなと思ったので気に入っています!

ア:Tavaras Jordanは絶対に外さなくてもう怖いですね(笑)。歌モノも流石の素晴らしさ…! 「Carolina Soul」っていうEPのタイトルもグッと来ました!

S:そう言っていただいてアガりました! Carolina Soulって直球的なタイトルからもう素敵ですよね…!

ア:Tavaras JordanってLe$みたいな地元以外の人とよくやっているイメージだったんですけど、このEPで「これがカロライナの音なんだ!」みたいな主張を感じました!


17. Durand Bernarr「Leveled」(ア)

ア:一曲入れました! Durand Bernarrは今年のSoul Cypherに出ていた人です。見る前はAlex Vaughn目当てだったんですけど、見たらこの人が一番やばいと思いました(笑)。

S:Durand Bernarr きましたね! この楽曲もアルバムも好きです!いやあ、このSoul Cypher知らなかったです…! コレ見たらDurand Bernarr断トツで良いですね(笑)。

ア:恥ずかしながらDurand Bernarrを知ったのこのSoul Cypherきっかけだったんですけど、全然予備知識がなかったので度肝を抜かれました(笑)。Alex Vaughnをはじめ、ほかの人も良かったんですけど(というかSoul Cypherは凄い人しか出ないから毎年楽しみにしています)、これはDurand Bernarrでしたね(笑)。

S:Soul Cypherすごく良いですね…今回おすすめして頂いたやつ3回見ました(笑)。これ予備知識ない状態で見たら確かに食らいます…(笑)。知っていても食らいました!


18. Muni Long「Midnight Snack (feat. Jacob Latimore)」(S)

S:Muni LongのNasty感がすごい好きで、Soul Cypherのビデオにも出ていたので堪らず入れさせてもらいました! この楽曲でMuni Longを知ったんですが、Jacob Latimoreと相性良くて気に入って聴いています!

ア:Muni Longのこの曲素晴らしいですね…! 地味にこれJuicy J「Slob On My Knob」のフロウ使っていません? あれがR&Bにもハマるの結構衝撃的です…。

S:うわ!!! 確かにそうですね! このトラックにハメ込むのスゴい…。その話を聞いた上で聴き直したら余計好きになりました(笑)。


19. Ciara「Better Things (with Summer Walker)」(ア)

ア:一曲入れました! CiaraSummer Walkerの曲です。CiaraってAri Lennoxとか最近のR&Bシンガーにものすごい影響与えていそうな気がしているんですけど、このSummer Walkerとの共演曲も相性めちゃくちゃ良くて最高でした! プレイリストは全20曲なのでこれで自分のは最後です!

S:Ciaraきましたか…世代すぎて嬉しくなりました(笑)。しかもSummer Walkerとのヤツ…これ良いですよね! 当時の2000年代に流行っていたダンストラックっぽさもあって、そこにSummer Walkerがうまく溶け込んでいて彼女もこの感じ好きなんだなあって伝わってきます!

ア:Ciara世代ですよね! 多分Summer Walkerとかも似たような感じでCiaraに接してきたんじゃないかと思っています(笑)。「Step Up」シリーズあたりの映画サントラに入ってそうな感じありますよね!


20. Ella Mai「Sink or Swim」(S)

S:僕も最後一曲入れました! Ella Maiのこのアルバム出た時は飛んで喜んだんですけど、本当にどれも好きなんですがフロウの話が出たのでこれを。この楽曲は少し変わった乗せ方をしている印象が強くて、それが聴き心地良くて最高です! 楽曲クレジット見てみると本人はもちろんなんですが、Mary J. Bligeが絡んでるのでそこもまたアツくなりました!

ア:おお、Ella Maiここにきましたか! 完璧な締めの一品ですね…! これ確かにちょっと変わった乗せ方していますね。Mary J. Blige絡みと思うとフックの歌い方とかでそれっぽさがあるような気がします!


総評

S2さんがBandcampで出しているビートテープやミックスが好きでよく聴いていたのですが、「もしかしてかなりR&Bの好みが近いのでは…?」と密かにずっと思っていました。なお、多くの作品を出していますが、一枚選ぶとしたら「CHASE AFTER TAPES.」がおすすめです。ビートテープですがボーナストラック的にミックスも収録されています。

R&Bの好みが近いのはS2さんも感じていたようで、ある日InstagramのDMで「R&B談義しましょう」という話になったのが今回の企画のきっかけです。やってみたら実際にR&Bの好みがほぼ同じで、二人で作ったプレイリストですが一定のムードがあるものになりました。私は甘いR&Bにはラップが入らない方が好きなのですが、S2さんの選曲もラップが入った曲が一曲もなかったのは振り返ると少し驚きです(ヒップホップのコレクティヴの一員なのに!)。

また、全体のムードとしてはスウィートな芯が通っていましたが、スタイル的には幅広い曲が入りました。2000年代メインストリーム風のR&Bやネオソウル、G風味…などなど、一口にR&Bと言っても様々だということがわかるようなプレイリストになったと思います。特にお互い2000年代R&Bに思い入れがあるようで、そのフレイバーのある曲が多く入ったことも印象的でした。やりとりの中で共感することも多かったです。

しかし、好みは似ていても恐らくディグり方や積み重ねてきた知識は違う部分もあるようで、知らない曲やアーティストも今回多く知ることができました。特に印象に残ったのがJAHKOYの「Reasons」で、この辺のカナダ産R&Bの面白さは個人的に一番の収穫です。今後も追っていきたいと思います。


ONENESS「RARECOIL」レビュー

そんなS2さんも所属しているコレクティヴ、ONENESSが昨年リリースしたアルバム「RARECOIL」は傑作と呼べる作品でした。ONENESSには現在MVTENstz7AWERA(今年に入って7AWから改名)の3人のラッパーに加え、ビートメイカー兼DJのS2とPhaze1992、イラスト等を担当するSlit Eyedなどが在籍しています(敬称略)。これまでにも何回かブログで関連作を紹介してきました。

ONENESS結成前からMVTENや7AWERA作品のレビューを何回か書いていますが、ONENESS以降はメロウなフレイバーが強くなったように思います。それは今回のプレイリストでの選曲にも通じる部分であり、もしかしたらメロウな曲に強い人がコレクティヴ内にいることの影響なのかもしれません。今作にはS2制作の「Bandit Keith」が収録されていましたが、この曲でのストリングスやエレピが心地良いビートはまさに今回のプレイリストと直結するものです。

今作は基本的にはブーンバップ系譜のスタイルを採用した作品です。「Bandit Keith」以外でもメロウな曲が充実しており、現行のアメリカのヒップホップで言うとLNDN DRGSあたりに隣接するようなサウンドが楽しめます。ラッパー陣のスタイルはラップらしいラップを聴かせるものですが、作品としての印象はかなりメロディアス。ラストを飾るOcean Sprayなど、歌のサンプリングを活かした曲もいくつか聴くことができます。また、ラップ面での歌心という点ではtime is bubble Route91などでのMVTENのアプローチも見事です。

また、今作はこういったサウンド面やソングライティング面だけではなく、ラップを楽しめるアルバムとしても素晴らしい作品です。ルーズなフロウが持ち味のMVTEN、鋭さと重さを併せ持つstz、低音でどっしりとしたラップを聴かせる7AWERAとスタイルの異なる3人のマイクリレーは非常に強力。切れ味鋭いstzと7AWERAの後にMVTENが歌心のあるゆったりとしたラップを聴かせるsizukana yoru niなどは圧巻です。

今作にはそのほか、哀愁漂うギターループに乗ってリリックが刺さってくるアイシャドウ、骨太なドラムと美しいピアノが効いた砂時計など良曲が多く収録されています。ONENESSは2022年、今作の後にもFREEMANZ PRODUCTIONとのタッグ作「UNITY」The Anticipation Illicit Tsuboiがミックスを担当したシングル「DROP DOWN STREET」と精力的にリリースを重ねてきました。その音楽愛と高い実力で、2023年もきっと素晴らしい音楽を多く届けてくれるでしょう。


ここから先は

0字

¥ 100

購入、サポート、シェア、フォロー、G好きなのでI Want It Allです