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遺影/ちいさな村の ちいさな愛しい物語③


仲良しのおばあちゃん(102歳)から
お電話がありました

何かご用があるようですが
いつもの声と少しちがいます

伺ったわたしに
おばあちゃんは言いました

「遺影を選んでほしいの」


おばあちゃんは
自分らしい最期の時のために
ひとつひとつ
支度を始められたのです


遺影は、もちろん
ご家族の皆さんで
決められることですが

せっかくのお気持ちだから
用意していてくれた写真を
一緒に拝見


きれいな晴れ着に
澄まし顔のおばあちゃん

地元出身の政治家さんの隣で
直立不動のおばあちゃん

畑仕事の合間に
休憩しているおばあちゃん

大家族との集合写真で
嬉しそうなおばあちゃん

初めてのひ孫を抱いて
泣いているおばあちゃん

本当に
たくさんの時間を
重ねてこられたのですね


その一枚は
すぐに見つかりました

少しの気取りもない
満面の笑顔

これこそ
わたしの大好きなおばあちゃん


そしたらおばあちゃんも

「実はわたしも
 これが一番好きなの

 これに決めた」


おばあちゃんは
その写真を
風呂敷に大切に包み

胸に抱いて
目を閉じました


その光景の美しさを
わたしは
忘れないでしょう




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