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人は海に帰るのか

踏んだり蹴ったりな日だった。

夜は眠れなくて、気づけば朝4時。
12時からレッスンがあるから寝ないとヤバい。
別に何かしてた訳でなく、ただ布団に横になり天井を見つめていたら朝だった。

…そして次に目が覚めた時は、家を出る時間。
…寝坊ってどうしてこうも自己肯定感が下がるんだろう。

休むか悩んだ。だって、続けないなら行く必要は無い。
でも、もし、もしも明後日は役者を続けたいと思っていたら?
大きな決断は冷静な判断ができる時にした方がいい。知ってる。

遅刻ギリギリでレッスンを受け、寝起きの頭じゃヘマばっかりで、先生も苦笑い…

最悪。

来なきゃよかった。

レッスンを終え、夕方からのバイトに向かう。
まだ朝食もとってない16時頃。
遅めの朝食(私は1日の1回目の食事を朝食と呼ぶ派。あなたは?)。

ここで気づいたんですね、財布がない、ことに。

最悪。

ICカードで食べれる店を探そう…出来れば先払いで。

ラーメン

美味しかった。
余談だが福岡出身なので20年近く細麺・豚骨スープ以外を食べたことはほぼなかった。
上京して1番驚いたかも『…ラーメンって種類があるの?!』
もっと開拓したい。

ご馳走様

食べるのが下手。
店主のおじさん、紙エプロンをくれてありがとう。

そういえば店内で流れていた曲が良くて泣けた。多分、オールドルーキーの主題歌。

バイトを終え、22時。
残額ギリギリのICカードで家の3駅手前に着いた時。

友人からの連絡『飲み会、来い』
…完全に失念していた。飲み会だった。
正直、気持ちも乗らないし財布もない、残高もギリギリ、断るべきだ。

…向かっていた。

なんと馬鹿だ。自分で自分の首を絞めるな私。

終電解散だったので飲み会滞在時間は、ほぼ10分程。笑顔で手を振り、解散。
改札。

81円

終わった…。

最悪。

最後の頼みPayPayでタクシーに乗ろうと思った時。

1%

完全に終わった。

最悪だ最悪。

歩いて帰るのがすごく嫌だった。
だるいだけじゃない。
自己防衛だ。

(やっと本題…長いな)

帰り道に大きな川がある。

上京してから、この川を渡る度に、死ぬ時はここから飛び降りるんだ…と思っていた川。
今日のメンタルじゃ絶対に歩きたくなかった。

長い長い川の黒い水は、私を吸い込むかのように揺れる。
川と空に境界はなく、何処までも黒く、何処までも闇。
この流れに乗っていつか海に帰る。

橋の下を見ないように、車道寄りを真っ直ぐに進む。

遠くに、川に向かって小さく助走を付けた人影が見えた。

欄干に手を付き止まる。

…降りるの?降りるなら、私も一緒にいいですか?

自分が辿り着くまで彼女が居たら声をかけよう。

小さく思った。

距離が縮まっていく。
声をかけると思ったものの、やっぱり怖い。
結局、死ぬか生きるかも冷静に判断できる時に決めた方がいいって分かるから。
てか、そんな判断の必要がある時は絶対冷静じゃない。
でも、昨日の今日で今日も最悪で、とにかく辛いんだ私は。
前向きなnoteを書いたけど、虚しいんだ。

彼女が走った!!

私の方向に向かって。

スマホを耳にあてていた。
スマホが照らす微かな光で、彼女の頬がキラキラ光った。
笑いながら私を通り過ぎた彼女。

…あー、私は君と死ねない。

海にはまだ帰れない。







その後、橋を渡りきる手前で、釣りをしているおじさんを眺めて家に着いたのはam2:00

私もいつか、死にたい夜に話を聞いてくれる人と出会えるだろうか。
声を聞けば、あの長い橋を、一瞬で走り切れるようなそんな人と出会いたい。



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