seizanry

自称週末歴史家(1974年生)です。現在は外資系コンサルティング会社でコンサルタントをしています。今の仕事の事を深く知りたいと思いコンサルタントの歴史を調べていくと、一般向けにまとまった書籍やサイトが少ないことに気づきました。それなら自分で書いてみようと思い執筆を始めました。

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自称週末歴史家(1974年生)です。現在は外資系コンサルティング会社でコンサルタントをしています。今の仕事の事を深く知りたいと思いコンサルタントの歴史を調べていくと、一般向けにまとまった書籍やサイトが少ないことに気づきました。それなら自分で書いてみようと思い執筆を始めました。

マガジン

  • アメリカのコンサルティング事情 -1910〜1920年代-

    21世紀には巨大コンサルティンググループになるBig4各社(Delloite・PWC・KPMG・EY)。20世紀初頭アメリカでのコンサルティング事情に関する記事をまとめています

  • コンサルティング撤退から再開まで -1930〜1940年代-

    1930年代、会計事務所は一度は禁じられたコンサルティングサービスの提供を後年再び開始します。アメリカ国内で会計事務所によるコンサルティングの禁止と再開の歴史に関する記事をまとめています

  • コンサルティングとシカゴの深い関係 -20世紀初頭-

    19世紀後半に大発展を遂げた中西部の大都市シカゴ。都市の発展はコンサルティングが生まれる背景にもなりました。当時のシカゴについて、歴史や文学についても触れた記事をまとめています

  • アーサー・アンダーセン会計事務所 -20世紀初頭-

    アメリカのコンサルティング史を語る上で外せない会社の一つが、アーサー・アンダーセン会計事務所です。シカゴの発展に合わせたように誕生した頃のアーサー・アンダーセンの記事をまとめています

  • 会計士、海を渡る -19世紀末イギリス、アメリカ-

    19世紀後半、アメリカ産業の発展を受け、イギリスで成功した会計事務所の中にはアメリカに進出して事業を展開するところが出てきました。アメリカで会計事務所やコンサルティングが発展する源流とも言える、当時の歴史に関する記事をまとめています。

最近の記事

Big4コンサルティングの歴史 第14話(日本編)

本編(第14話)のあらすじ日本でのコンサルティングの歴史(PWC)第1ステージ(戦後~1990年頃) 日本でのPWCコンサルティングの歴史は、大きく3つのステージに分けることができそうです。第1ステージは戦後から1990年頃までの、会計事務所の中で発展したコンサルティングの歴史、第2ステージはアメリカPWCの資本の下、1990年代~IBMへの売却までの歴史、第3ステージは21世紀に入りコンサルティング会社を再建する歴史となります。 最初に日本におけるプライス・ウォーター

    • Big4コンサルティングの歴史 第13話(エンロン事件とその後 21世紀アメリカ)

      本編(第13話)のあらすじエンロン事件2002年7月にアメリカで成立したサーベンス・オクスリー法はコンサルティング業界にも大きな影響を及ぼしました。監査の独立性を守るため利益相反に強い規制を求めるこの法律により、会計事務所が経営コンサルティングを行うことが実質的に禁止されたからです。 20世紀末頃から大手会計事務所Big5(ビッグ・ファイブ)※は自社で抱えていたコンサルティング部門を売却し切り離すようになっていました。2002年のサーベンス・オクスリー法の成立がその流れに

      • Big4コンサルティングの歴史 第12話(コンサルティング部門の切り離し 1990年代アメリカ)

        本編(第12話)のあらすじコンサルティング頼みの各社1995年度のアンダーセン社の収入と内訳 1990年代のアンダーセン社(Andersen Worldwide)は会計(監査・税務)のアーサー・アンダーセンとコンサルティングのアンダーセン・コンサルティング(後のアクセンチュア)で構成されていました。1989年に会計事務所から独立しアンダーセン・コンサルティングは成長を加速させ、1995年にはコンサルティングの収入が会計の収入を超えました。 アンダーセン社に限らず1990

        • Big4コンサルティングの歴史 第11話(大合併編 1980年代アメリカ)

          本編(第11話)のあらすじ会計事務所を取り巻くビジネス環境1970年代のアメリカでは、本業の会計監査が頭打ちとなっていく中、大手会計事務所ではコンサルティング等の非監査業務が伸び始め救世主となりつつありました。 1980年代に入るとその傾向に拍車がかかり、会計事務所は監査をする企業から総合プロフェッショナル・ファームへと変化を遂げつつありました。1980年代アメリカにおける大手会計事務所(通称ビッグ・エイト(Big8)※)の大合併の歴史を、コンサルティングサービスの観点で

        • Big4コンサルティングの歴史 第14話(日本編)

        • Big4コンサルティングの歴史 第13話(エンロン事件とその後 21世紀アメリカ)

        • Big4コンサルティングの歴史 第12話(コンサルティング部門の切り離し 1990年代アメリカ)

        • Big4コンサルティングの歴史 第11話(大合併編 1980年代アメリカ)

        マガジン

        • アメリカのコンサルティング事情 -1910〜1920年代-
          6本
        • コンサルティング撤退から再開まで -1930〜1940年代-
          5本
        • コンサルティングとシカゴの深い関係 -20世紀初頭-
          5本
        • アーサー・アンダーセン会計事務所 -20世紀初頭-
          4本
        • 会計士、海を渡る -19世紀末イギリス、アメリカ-
          4本
        • 会計士誕生の歴史 -19世紀イギリス-
          6本

        記事

          Big4コンサルティングの歴史 第10話(会計部門停滞・コンサル部門発展編 1970年代アメリカ)

          本編(第10話)のあらすじ苦難に直面する会計事務所1970年代のアメリカ社会は、オイルショックによりもたらされた景気停滞と物価高(インフレ)が同時に起こるスタグフレーションに見舞われていました。 景気停滞による株式市場での損失と、企業による利益操作(不正会計)もあり、決算で高収益を報告したにもかかわらず倒産する企業が出てきました。怒れる投資家や世論は、「会計士はどこにいたのか!」と詰め寄り、事業の失敗を見抜けなかったということで会計士達を訴訟に巻き込んでいきました。冒頭の

          Big4コンサルティングの歴史 第10話(会計部門停滞・コンサル部門発展編 1970年代アメリカ)

          Big4コンサルティングの歴史 第9話(コンサルティング拡大編 1960年代アメリカ)

          本編(第9話)のあらすじコンサルティング業界の概観1960年代、大手会計事務所のコンサルティング部門は、1950年代から続くシステムコンサルティングをますます拡大していきました。それは当時のアメリカ経済の好調さに支えられていたようですが、会計事務所やコンサルティング会社から見た1960年代のアメリカ経済はどの様なものだったのでしょう。 1960年代の目まぐるしい変化を支え、加速する原動力にもなった一つが、ビジネス界に広く導入されたコンピューターでした。1960年半ばまでに

          Big4コンサルティングの歴史 第9話(コンサルティング拡大編 1960年代アメリカ)

          Big4コンサルティングの歴史 第8話(番外編 20世紀前半のランキング)

          本編(第8話)のあらすじ20世紀初期のランキング21世紀現在、グローバルなコンサルティング会社となっているBig4各社ですが、ルーツとなる会計事務所は20世紀初めのアメリカで既に設立されていました。8つの事務所が既にトップ10の上位を占有している状態でした。 8社を設立の古い順にご紹介します。末尾の西暦がアメリカでの事務所設立年です(8社の多くは19世紀中頃にイングランドやスコットランドで誕生しアメリカに進出してきた事務所です) この8社の1920年のランキングは次のよ

          Big4コンサルティングの歴史 第8話(番外編 20世紀前半のランキング)

          Big4コンサルティングの歴史 第7話(システムコンサルティング誕生編 1950年代アメリカ)

          本編(第7話)のあらすじコンピュータ時代の幕開けENIAC(エニアック) 1940年代から会計事務所がコンサルティングの主力サービスとしたのは、会計システム等を使ったシステムコンサルティングでした。会計事務所がシステム分野からコンサルティングに再参入した歴史の背景には、当時まさに誕生を迎えようとしていた電子式コンピューターの存在がありました。 IBMのパンチカードシステムの普及が、コンピューターの商業利用拡大の一因になっていたとは考えられますが、パンチカードシステムとい

          Big4コンサルティングの歴史 第7話(システムコンサルティング誕生編 1950年代アメリカ)

          Bigコンサルティングの歴史 第6話(コンサルティング再参入編 1940年代アメリカ)

          本編(第6話)のあらすじコンサルティングへの再参入1940年にはアメリカのコンサルティング会社は400社にもなっていました。マッキンゼーやブーズ・アレン・ハミルトンなどのコンサルティング専門会社が市場を拡大していた時代です。一方、会計事務所各社は本業の会計監査制度を確立しながら、会社規模を拡大していました。 1930年代の連邦法によってコンサルティングサービスを禁じられた会計事務所ですが、1940年代から少しづつ新たな形でコンサルティングを再開していきました。企業への監査

          Bigコンサルティングの歴史 第6話(コンサルティング再参入編 1940年代アメリカ)

          Big4コンサルティングの歴史 第5話(コンサルティング撤退編 1930年代アメリカ)

          本編(第5話)のあらすじ世界恐慌とその後の10年会計事務所のコンサルティング規制 未曾有の好景気、狂騒の時代。アメリカの歴史上、1920年代はそのように形容されることが多いと思います。そして、その結末は1929年から始まる世界恐慌です。株価の大暴落、数千行に上る銀行の倒産、25%以上の失業率といったことが起きた時代でした。 1933年にアメリカ合衆国第32代大統領に就任した、フランクリン・ローズヴェルト大統領の元、矢継ぎ早に打たれたニューディール政策。政策の一環として施行

          Big4コンサルティングの歴史 第5話(コンサルティング撤退編 1930年代アメリカ)

          Big4コンサルティングの歴史 第4話(シカゴ編 1900~1920年代アメリカ)

          本編(第4話)のあらすじ20世紀前半のシカゴ発展する都市 19世紀末から20世紀初頭、アメリカの大手会計事務所は監査業務に加え、財務調査や、会計業務に関わるコンサルティング業務を始めました。当時のアメリカで、コンサルティングはボストンのMIT技術者から始まり、フィラデルフィアのフレデリック・テイラー等も歴史的に有名な話です。では、会計事務所を中心とした財務調査や会計コンサルティングはどこで行われていたのでしょうか。 アメリカ中西部の大都市シカゴを中心に行われていたという

          Big4コンサルティングの歴史 第4話(シカゴ編 1900~1920年代アメリカ)

          Big4コンサルティングの歴史 第3話(コンサルティング誕生編 1890~1900年代アメリカ)

          本編(第3話)のあらすじ会計士、海を渡るイギリスからアメリカへ 19世紀後半、世界の工場の座からイギリスは陥落しました。代わってその座に着いたのはアメリカでした。アメリカの成長は著しく、ヨーロッパを中心に新大陸へ人と資本が流入していました。アメリカの産業の発展を受け、イギリスで成功した会計事務所の中にはアメリカでの事業を拡大していくところがありました。そこにはどのような背景があったのでしょうか。 当時のイギリス産業や経済状況について『近代イギリスの歴史』(木畑洋一/秋田

          Big4コンサルティングの歴史 第3話(コンサルティング誕生編 1890~1900年代アメリカ)

          Big4コンサルティングの歴史 第2話(ファーム誕生編 19世紀イギリス)

          本編(第2話)のあらすじBig4の始まり今でこそBig4と呼ばれコンサルティング業界で確固たる地位を築いている各社(Deloitte・PWC・EY・KPMG)ですが、どこも19世紀のイギリスを中心に個人の会計事務所から始まっています。19世紀に会計士という職業が誕生し、ロンドン市街に設立された個人事務所の中から20世紀には数十万人を抱える巨大組織(Big4)が生まれました。 会計士を生み出した19世紀イギリスとはどのような時代だったのか。イギリス史、会計史に関する本をまと

          Big4コンサルティングの歴史 第2話(ファーム誕生編 19世紀イギリス)

          Big4コンサルティングの歴史 第1話(私が歴史を書く動機・本稿の対象)

          コンサルティングの歴史を書く動機コンサルティング・ファーム※の認知度が日本でも上がっています。大学生の就職ランキングで上位に入ってくるグローバル・コンサルティング・ファームもあり、中には1社で年間数百人の採用を行っている所もあります。 私が大学を出た1990年代末においてはまだコンサルティング・ファームはあまり知られておらず、就職する人も少なかったことを覚えています。その後21世紀になり、日本のコンサルティング市場は拡大を続けています。 ロジカルシンキングやスライド作成

          Big4コンサルティングの歴史 第1話(私が歴史を書く動機・本稿の対象)

          【コンサル物語(日本編)】Big4コンサルティングの歴史〜PWC〜③

          21世紀に入ってすぐに日本のコンサルティングマーケットからPWCコンサルタントという会社は姿を消しました。同時期にアメリカで発生したエンロンスキャンダルの余波を受け、日本でもPWCのコンサルティング部門はIBMに売却されることになったためです。 (厳密にはPWCの監査法人グループにコンサルティング会社は存在していたようですが、こちらはM&A等がメインでシステムコンサルティングはやっていなかったようです) 私自身の体験になりますが、当時勤務していた事業会社では最初PWC社のコ

          【コンサル物語(日本編)】Big4コンサルティングの歴史〜PWC〜③

          【コンサル物語(日本編)】Big4コンサルティングの歴史〜PWC〜②

          今回は引き続き『PWCジャパンの歴史』を参考に、日本でのコンサルティング会社の歴史の一面を追ってみたいと思います。 1980年代半ばから1990年代初めにかけて、後にBig4と呼ばれるようになるコンサルティング会社が日本でも少しづつ事業を拡大し始めていました。戦後すぐに日本で会計事務所を展開していたプライス・ウォーターハウス社も、1983年の監査法人設立に伴いコンサルティング会社を分離しコンサルティングを順調に成長させていました。 ところが1990年代前半、プライスウォー

          【コンサル物語(日本編)】Big4コンサルティングの歴史〜PWC〜②