seizanry

自称週末歴史家(1974年生)です。現在は外資系コンサル会社でコンサルをしています。今の仕事の事を深く知りたいと思い、会計やコンサルの成立ちや歴史を調べていくと、意外と一般向けにまとまった書籍やサイトが少ないことに気づきました。それなら自分で書いてみようと思い執筆を始めました。

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自称週末歴史家(1974年生)です。現在は外資系コンサル会社でコンサルをしています。今の仕事の事を深く知りたいと思い、会計やコンサルの成立ちや歴史を調べていくと、意外と一般向けにまとまった書籍やサイトが少ないことに気づきました。それなら自分で書いてみようと思い執筆を始めました。

    最近の記事

    【コンサル物語】会計士、海を渡る②(アメリカ進出)

     南北戦争(1861〜1865年)後、アメリカは急速に成長する産業大国として台頭してきました。1870年代や特に1880年代を通じて、イギリスの資本家達は堅調なアメリカ経済に多額の投資を行いました。彼らの経済的利益を守るため、資本家達はイギリス(イングランド、スコットランド)の会計事務所に対して、アメリカへ定期的に訪問することを要求してきました。そこにはどのような背景があったのでしょうか?  19世紀におけるイギリス資本主義の構造変化により、イギリス国内では地方の大土地所有

      • 【コンサル物語】会計士、海を渡る①

         19世紀後半、世界の工場の座からイギリスは陥落しました。代わってその座に着いたのはアメリカでした。アメリカの成長は著しく、ヨーロッパを中心に新大陸へ人と資本が流入していました。アメリカの産業の発展を受け、イギリスで成功した会計事務所の中にはアメリカでの事業を拡大していくところが少なからずありました。その歴史に触れる前に当時の時代背景を見ておきたいと思います。  当時のイギリス産業や経済状況について『近代イギリスの歴史』(木畑洋一/秋田茂)では次のように書かれています。

        • 【コンサル物語】19世紀Big4の仕事は、破産処理、帳簿管理、監査、少しの経営コンサル

           19世紀半ばに設立された会計事務所には21世紀にBig4として存続しているところもあります。1880年代に840ヶ所も存在していたロンドンの会計事務所の中からBig4として生き残った会計事務所にはどのような特徴があったのでしょう。1849年に事務所を設立したプライス・ウォーターハウスの仕事内容に迫っていきたいと思います。  1850年代~60年代に一気に増えた会計士ですが、彼らの仕事の多くは会計知識を活かした破産処理と帳簿管理でした。時代は株式会社ブームだったので、イギリ

          • 【コンサル物語】Big4の誕生(プライス・ウォーターハウス)と19世紀会計士の年収事情

             1840年代、50年代には今日のBig4ファームに通じる会計事務所がロンドンにいくつか誕生しています。その中からプライス・ウォーターハウス(後のPWC)誕生の歴史を見ていきたいと思います。  1849年12月24日(月)サミュエル・ローウェル・プライスは友人のウィリアム・エドワーズとのパートナーシップ※を解消しロンドンで会計事務所を始めることになりました。これがプライス・ウォーターハウス(PW)会計事務所の誕生と位置づけられています。プライス28歳のときでした。  当時

            【コンサル物語】会計士誕生の歴史④〜文学作品に見る会計士 『人間の絆』編〜

             シャーロック・ホームズシリーズに登場する会計士をご紹介しましたが、描写があまりに少なすぎて会計士の様子を知るには想像の域を超えません。そこでもう一作品、20世紀前半のイギリスを代表する作家サマセット・モームの自伝的小説『人間の絆』を紹介します。この作品では19世紀末のロンドンの会計事務所の様子が描かれており、当時の会計士の様子を知ることができる貴重な文学作品です。小説からの引用を行いながらご紹介したいと思います。  引用部分は全て行方昭夫氏の翻訳版(岩波文庫)からとさせて

            【コンサル物語】会計士誕生の歴史③〜文学作品に登場する会計士 シャーロック・ホームズ編〜

             19世紀のイギリスで生まれた会計士という職業。産業の発展を支える将来性のある職業ではありましたがまだまだ地位は低く、国のお墨付き(勅許)を得て地位向上を目指そうと当時の会計士達は奮闘していました。前回は歴史書などから会計士の評判をご紹介しましたが、今回は目線をもっと身近にして、当時の文学作品に登場する会計士から世間一般の認識に迫ってみたいと思います。  最初にご紹介するのは、多くの方がご存じの探偵小説の名作『名探偵シャーロック・ホームズ』シリーズです。ホームズシリーズで描

            【コンサル物語】会計士誕生の歴史②〜19世紀会計士の評判〜

             19世紀イギリス産業が置かれた状況から必要に迫られて誕生した会計士という職業。今の日本人からすると会計士は立派な職業の一つであることに異を唱える人は少ないでしょう。しかも最難関の一つと言われる国家試験を突破しないと名乗ることができない職業であり、選ばれた人が就けるものです。ところが19世紀の会計士の扱いは必ずしもそうではなかったようです。  19世紀のイギリスでは会計士に向けられる視線は冷ややかなものでした。当時の会計士を評した言葉をいくつかご紹介すると、「会計士という言

            【コンサル物語】会計士誕生の歴史①〜19世紀イギリス〜

             今でこそBig4コンサルとしてコンサルティング業界で確固たる地位を築いているBig4各社(Deloitte・PWC・EY・KPMG)ですが、会社としての始まりをたどっていくと19世紀のイギリスにさかのぼることになります。この時代に会計士という職業が誕生し、ロンドン市街に構えたいくつかの個人事務所は、後々数十万人を抱える巨大組織(Big4)へと成長していきます。そこで数回に渡り、19世紀のイギリスで会計士が誕生した背景や当時の会計士の実態を紐解くことでBig4が誕生した歴史に

            【コンサル物語】アイビーリーグエリートと嫌われ者の自信家

             多くは19世紀(1800年代)半ばに起源をもつBig4の各会計事務所(Deloitte・PWC・EY・KPMG)ですが、コンサル物語は2つの会計事務所のアメリカでの歴史を中心に進めていきます。プライス・ウォーターハウス・クーパース(PWC)とアーサー・アンダーセン(Arthur Andersen)です。なぜこの2社なのか、この2社の歴史を書くことにどのような意味があるのか少し補足しておきます。  1つは、この2社がBig4会計事務所とそのコンサルティング事業におけるキープ

            【コンサル物語】Big4会計事務所

             コンサル業界で仕事をしていたり、コンサル業界への就職や転職を考えている方は、Big4会計事務所やBig4コンサルがどういうものか大体想像がつくと思います。でもそういった人は非常に限られた範囲の方々で、多くの人にとっては、Big4?グローバル会計事務所?というのが普通ではないでしょうか。また、なぜ会計事務所が経営コンサルで幅を利かせているのかもよく分からないのではないでしょうか。Big4の歴史を紐解く前にBig4会計事務所について簡単に触れておきたいと思います。  Big4

            【コンサル物語】コンサルティングの歴史を紐解く視点

             コンサルティング会社や業界の歴史・成り立ちを追って行きたいと思いますが、グローバルで見たときに現在どういう会社が売上ランキング上位にいるのかご存じでしょうか?少し調べましたのでその結果をご紹介したいと思います。(少し調べ始めたところこれが非常に難しいと分かり後悔しましたが、何とか形になりました)  経営やIT分野でコンサルティングサービスを専門にしている純粋なコンサルティング会社は数字が拾いやすいのでしょうが、大手会計事務所のように一つの会社の中で会計、税務、コンサルとい

            【コンサル物語】私が歴史物語を書く理由

              ちょうど1年ぐらい前にとても面白い本を読みました。『帳簿の世界史』です。南カリフォルニア大学の歴史学部教授ジェイコブ・ソール氏(HIST Faculty Profile > Department of History > USC Dana and David Dornsife College of Letters, Arts and Sciences)が会計・帳簿の歴史を一般向けに描いたもので、専門書とは全く違う物語の世界がそこに描かれていました。歴史と会計の面白さがいっ

            戦略コンサルに与えた脅威 Big4会計事務所のコンサル拡大

             さて、1960年代のアメリカ会計士業界ではプライス・ウォーターハウス(後のPWC)にとってアーサー・アンダーセン(2002年消滅、コンサル部門はアクセンチュアとして存続)の躍進はかつての同僚の成功という誇りから次第に脅威へと変わっていきましたが、Big4(当時はBig8)会計事務所の各社がコンサル部門を成長させ始めていたこの時代、後に戦略コンサルティングファームと呼ばれるようになる経営コンサル専門会社にとっても会計事務所のコンサル拡大は脅威に映っていたようです。  最初に

            エリート会計事務所(プライス・ウォーターハウス)が認めた圧倒的ライバル(アーサーアンダーセン)1960年代のアメリカコンサル業界

             前回、前々回に書いたように、1960年代のBig4会計事務所のコンサル部門について、プライス・ウォーターハウス(後のPWC)とアーサー・アンダーセン(2002年消滅、コンサル部門はアクセンチュアとして存続)の状況はかなり対称的でした。プライス・ウォーターハウスは会計事務所であることにこだわる一方、アンダーセンは会計事務所とコンサルティング・ファームの両立を実践していました。  両者の考え方の違いは会社の組織体制にも如実に現れていました。  1960年代のプライス・ウォー

            Big4会計事務所のコンサル拡大 1960年代 アーサー・アンダーセン

             1960年にはBig4(当時はBig8)のなかで売上2位にまで大躍進したアーサー・アンダーセンですが、その勢いは1960年代も止まることはなかったようです。 ビッグ8ランキング(1960年) ※会計事務所(監査+税務+コンサル)での売上順 参考資料:『闘う公認会計士』  アーサー・アンダーセン会計事務所はエンロン事件を経て2002年に消滅していますのでご存じない方が多いかもしれませんが、アクセンチュアと言えば分かりますね。アクセンチュアは元はアーサー・アンダーセンのコ

            Big4会計事務所のコンサル拡大 1960年代 プライス・ウォーターハウス

             前回はコンサル物語のここまでのあらすじを振り返りましたが、今回から物語をどんどん進めていきたいと思います。  1960年代、Big4コンサルは1950年代から続くシステムコンサルティングをますます拡大していきましたが、事務所の売上拡大につながっている一方で、会計事務所がコンサルティングを推進するにつれ様々なことが起こり始めました。  1960年代にはアメリカの大企業上位500社の半分以上が大規模なコンピューターシステムを導入しており、コンピューターコンサルティングの専門