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Stellar Blade ストーリーのネタバレ考察【総評と問題点まとめ】

はじめに

ステラーブレイド、最高に楽しいゲームでした。楽し過ぎて、ゲームの中で唯一不満のあった遺憾あふれるストーリーを自分でなんとか昇華しようと、このメッチャイイ長文を書くに至りました。

ストーリーのネタバレ考察になりますが、ステラーブレイドをプレイしていない方にも内容が理解できるように書いたつもりです。
ゲームを遊ぶとき、ストーリーもわりと気にする方だ、という人なら読み物として楽しめるかも知れません。

プロットの書き起こしやプレイ動画もありますので、未プレイの人もクリア済みの人も、改めてステラーブレイドの一面を楽しめるのではないかと思います。
ただしほぼ全文において盛大にネタバレを含んでいるためその点はご容赦ください。

長いので目次から読みたそうな見出しに直感でジャンプするのもアリです。


なお、本稿では、下記のようなゲーム作品を構成している要素のうち、「ストーリー性」だけを主に取り上げています。

  • ゲーム性(遊びの本質的な種類や性格)

  • ストーリー性(舞台となる世界、物語、キャラクターの設定や展開)

  • システム(ルールや遊びやすさを整える仕組み)

  • ビジュアル(画面に映るものやことの見た目)

  • BGM/効果音

  • 操作性(主に自キャラ)

  • UI/UX(主にシステムの操作性)

ステラーブレイドのストーリー性以外の要素については、目立った問題点はなく、むしろ優れた点が多々あり、セーブデータ周りが少し不便だったものの、筆者自身、200時間以上遊んだお気に入りのゲームであることを付記しておきます。

フォトモードが実装されたら6周目をプレイします!

PS5 ScreenShot

ステラーブレイド[Stellar Blade]とは

2024年4月26日にPlayStation5用として発売されたアクションアドベンチャーゲーム。開発は、著名イラストレーターのキム・ヒョンテ氏が創業しCEOをつとめる、韓国のSHIFT UP
本作は2019年4月に「Project EVE」の名称で発表されて以来、約5年の歳月を経て完成した。

そのビジュアルから発売前は圧倒的紳士向けゲームとして話題になったが、丁寧に作り込まれたフィールドやBGM、アクションゲーム本来のゲーム性やシステムが高い評価を得た。商業的にも成功をおさめ、2024年6月現在、アップデートの継続と追加DLCの計画が発表されている。

本作が指向しているストーリー性は、ポストアポカリプス(SF作品において文明が崩壊、退廃した後の終末世界を描くもの)である。

Ruins

ストーリー総評

「ストーリー? 良かったけどな、大きな問題なんてあったかな」と感じている人もいるかも知れません。
おそらくそれは、世界観やプロット、もしくはエンヤ関連などサブミッションの印象だと思いますが、本稿では、ゲームの全体的な、いわゆるストーリー(本稿では「ストーリー性」と表記しています)を、以下の要素に分解して考えています

  • 世界観(物語の舞台設定)

  • プロット(主人公やプレイヤーが遭遇するできごとの組み立て)

  • 人物描写(登場人物の背景や言動、目的、動機、意図、思考、性格など)

  • ストーリー(プロットを淀みなく、かつプレイヤーに期待感や納得感を与えつつ展開するための筋書き)

このあと本稿が言及する「ストーリー」はゲームのストーリー性を構成している要素すべてではなく、狭義のストーリー(筋書き)を指しています。

総評

ポストアポカリプスものとして世界観の構築には高いレベルで成功しており、プロットは手堅く標準的な組み立てで、かなり好感。しかしながら、主要な登場人物の人物像に厚みがなく、さながら画面に貼り付けられたペラペラな紙のよう。行動や発言の多くに人格や意志が感じられず、「台本に書かれているのでこうしました、こう言いました」かのような場面が随所に見られ失望。ストーリーは物語ることが放棄されており、良し悪しを語る以前に物語がほぼ存在しない。ゲーム作品全体の完成度は高くとても楽しいゲームなのに、人物描写とストーリーに説得力や納得感が徹底的に乏しく非常に残念。

備考

ストーリーと人物描写について落胆が大きかったのですが、開発チームに能力が無かったわけではなく、開発期間が長いゲームのため、追加や変更が繰り返され、しかしながらカットシーンや収録音声など、限られた時間では作り直しが難しい部分があり、最終的に全体を通した整合性ある人物像やストーリーを構築することが不可能になってしまったのではないか、というやむにやまれぬ事情を想像はしています。

なお、筆者は濃密な人間ドラマや、驚きと意外性に満ちた展開を期待しているわけではなく、登場人物の人物像やできごとの因果関係がそれなりに理解でき、物語としてそれなりに成立していれば勝手に楽しめるタイプです。だがステラーブレイド、お前を見過ごすわけにはいかない。観念しろ、ストーリー警察だ。

2つの大き過ぎる問題点

ストーリー不在

プロットがプレイヤーを置き去りにしている。マイルストーンやクライマックス的な位置付けとなるできごとは雰囲気だけで進行し、それっぽい風味が漂っているものの、何が起きても「あ、そうなんだ なんで?」に終始してしまう。その原因は明確で、できごと(事件や行き先の提示)は起こるが、総じて、なぜそれが起きたのか何がそうさせたのかは語られない。つまり、できごとからできごとへプレイヤーを導くストーリーが存在しない。

事件や人間関係だけを用意し、ストーリーをプレイヤーの想像に任せる、という手法がある。本作は世界観の構築に成功しているため、それが有効に働く可能性はあるものの、残念ながら、主人公イヴを含めた登場人物たちが時折みせる、矛盾した支離滅裂な行動、意味不明な発言の数々が、その可能性を粉砕している。

解決されないモヤモヤ

冒頭で主人公イヴの勢力を束ねるマザースフィアの意思として「敵であるネイティブのボス、エルダーネイティブを倒せ」という目的が示されるが、ゲーム進行上で目にするカットシーンや文書、メッセージでは、その目的と相反する「ネイティブと戦争になった原因は、旧人類を追い詰めたマザースフィア」「マザースフィアが地表を破壊した」「実はネイティブとは、マザースフィアに対抗するため、やむなく化け物となった哀れな旧人類である」という、世界観を補完する情報が、イヴやプレイヤーに示されていく。

反面、なぜマザースフィアやイヴは、ネイティブたちを滅ぼして荒れ果てた地球を手に入れなければならないのか、その理由は全く示されない。宇宙コロニーにいるマザースフィアやコロニーで生まれたイヴは、そのままコロニーにいた方が快適なのではないか。この当然の疑問は、エンディングを迎えても晴れることはない。

ともあれ、そのように情報が提示されていくならば、倒すべき敵はネイティブではなくマザースフィア、となるのが自然でありプレイヤーも期待するところだが、それに反して戦う相手は最後までネイティブである。厳密には、元空挺部隊兵のレイヴンや、マザースフィアの手先であるエグゾスーツという外骨格メカと戦う場面はあるが、マザースフィアを倒すという文脈ではない。後述する多くの問題点とも相まって、ゲームが進行するにつれて「ああ、ストーリーは完全に放棄されていてどうでもいい」という諦観が大きくなる。メタ的な視点では、旧人類とはプレイヤーであり、「なぜ美しき殺戮機械イヴで自分たち人類(の未来の姿)を駆逐しているんだろう」という気持ち悪さもある。

これら最初に発生して最後まで解決しない単純な疑問や、ゲーム進行の意欲を逆撫でする情報開示、プレイヤーに生じる気持ち悪さは、すべてストーリーで解決できるのに、そのストーリーが不在ゆえにゲーム体験を損なう要因になってしまっている。

多くのより具体的な問題点

ここでは、主要な登場人物たちのモチベーション(動機や目的、意図、思考)が不明、または、言動に必然性や納得感が薄い点を箇条書きします。
モチベーションを生み出すのはストーリーであり、これらのシンプルな疑問は、ストーリー不在の実例集といえます。

主人公イヴ

Eve
  • 降下部隊の唯一の生き残りとしての初動が、なぜ「アダムの要求通り記録保管庫に向かう」なのか。初っ端から物語が放棄されており、目的地だけが示される。

  • なぜザイオン(地球に残された人類最後の拠点)に危険が迫っていることを無視して比較的緊急性のない軌道エレベーターに向かうのか。

  • なぜタキに関してだけ復讐というイヴの強い感情があるのか。

  • タキの仇はレイヴンかも知れないが、本質的にはエルダーネイティブであるアダムではないのか。

重要人物レイヴン

Raven
  • なぜイヴに敵対し戦うのか。かつての自分と同じ境遇にいる同胞ではないのか。

  • なぜタキをアルファネイティブにしたのか。

  • なぜザイオンを襲撃したのか。どうしてそのタイミングなのか。

  • アダム(エルダーネイティブ)との関係性に合理性や整合性があるのか。

重要人物アダム(エルダーネイティブ)

Adam
  • なぜイヴを助けたのか。

  • ネイティブたちを次々に討伐していくイヴを傍観、むしろ手助けしているのはなぜか。

  • エルダーネイティブなら記録保管庫に到達する(ハイパーセルを集める)のは簡単ではないか。ハイパーセルを集めたいのか集めたくないのか、どちらなのか。

  • レイヴンとの関係性に合理性や整合性があるのか。

  • なぜザイオンに身を置いているのか。ザイオンを救いたいのか救いたくないのか、どちらなのか。

  • 元アルファネイティブでザイオンのリーダーである裏切り者オルカルとの関係性に合理性や整合性があるのか。

  • なぜレイヴンでもタキでも他の誰でもなくイヴに融合を提案するのか。

  • その他、言動全般に何十年も地上にいたエルダーネイティブとしての合理性や整合性があるのか。

重要人物マザースフィア

Mother Sphere
  • なぜ大気圏外で大半が撃墜されるような降下作戦を実行したのか。

  • なぜ軌道エレベーターにいる巨大アルファネイティブを無視して降下作戦を実行するのか。イヴが降下したあとに巨大アルファネイティブが出現したのなら、それはなぜか。どうしてそのタイミングなのか。

  • それまで多くの兵士を見殺しにしてきたのに、なぜ正体不明のドローンの救難信号に応えてエグゾスーツを送り込むのか。

  • なぜ大気圏突入性能を持つエグゾスーツで降下作戦を計画しないのか。

脇役オルカル(アルファネイティブ)

Orcale
  • 人類は、敵対するネイティブのうち、なぜオルカルだけを助けたのか。

  • ザイオンの住民を眠らせたいのか起こしたいのか、どちらなのか。

  • 起こしたいとして、起こしたあとどうするつもりなのか。エネルギーが足りなくなったらまた眠らせるのか。だったらなぜ起こすのか。

  • オルカルのパーソナルリンクは、なぜ地上にいるレイヴンのアルファコアを探知せず、宇宙にあるコアを探知するのか。

脇役リリー

Lily
  • なぜエイドス9からエイドス7に移動してきたのか。なぜよりによって降下ポッドの中にいたのか。

  • なぜイベリスのメモリースティックを置いてきたのか。大切なものなら持ち出すのではないか。

  • なぜ急にエイドス9に戻りたがるのか。どうしてそのタイミングなのか。

  • なぜイベリスのメモリースティックを持ち出すのか。大切なものだから置いてきたのではないのか。

  • なぜ「そんなことしたらイヴが死んじゃいます」から「もうどうなっても知らないからね」に3秒くらいで心変わりするのか。

  • なぜアルファ信号受信機はオルカルに反応しないのか。

プロット書き起こし

ここでいったん、ストーリーの設計図ともいえる、ステラーブレイドのプロット(サブミッションを除くメインストリームのみ)をご紹介します。

このあと、問題点の詳細を実際のゲーム動画と併せて説明しますが、事前にプロットを把握しておきたいときにおすすめです。

未プレイの人は流れるべきストーリーを承知できますし、すでに本作をクリア済みの人は、「ああ そうだったね」と記憶を呼び起こせると思います。

総評にも書いた通り、プロットに問題はありません。むしろ面白そうなストーリーが描けそうに感じます。

全体が序破急を考慮した三幕構成となっています。緩慢になりがちな序パートも、大きな事件(主人公の窮地)から始まり、いわゆる中盤の山場があります(タキとの戦闘と、再会そして別れ)。全体パートのクライマックス(破)はザイオンが襲撃される場面でしょうか。そこからエンディングに向けて一気に流れを加速させたい(急)意図がうかがえます。

考察の詳細

ここからは、筆者なりのストーリー解説と問題点の詳細を、実際のゲーム動画を交えて説明していきます。加えて、筆者の遺憾を昇華すべく創作した、アナザーストーリー的なアイデアを書いています。

動画について

  • 筆者の3~5周目のプレイ録画を超編集して12話に分け、それっぽいタイトルを付けたものです。

  • 各話15分前後です。PS5の保存クリップの感覚で見ていただければと思います。

  • YouTubeですが筆者はユーチューバーではないのでたぶんCMは流れません。

  • 主人公イヴの衣装や髪型などは気分や諸事情で変わったりしますがご容赦ください。

見出しの階層化などの都合上、サブ記事としています。

第1話「星降る地」

第2話「エイドス7」

第3話「ザイオン」

第4話「レガシー」

第5話「マトリックス11」

第6話「レガシー再び」

第7話「秘密の園」

第8話「セントラルコア」

第9話「マスターコア」

第10話「レイヴン」

第11話「エルダー」

第12話「記憶の創造」

第12話「失われた記憶の代償」

第12話「コロニーへの帰還」


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