見出し画像

考察#7[ステラーブレイド]ストーリー解説と問題点 リリーのアトリエ~軌道エレベーター【ネタバレ注意】

この記事はサブ記事です。

メイン記事「ストーリーのネタバレ考察 総評と問題点まとめ」を読んでもいいし、読まなくてもいいかも知れない。

[メイン記事概要]
ステラーブレイドを200時間以上遊び倒して執筆。圧倒的高評価のゲーム性やシステムには敢えて触れず、唯一、遺憾なストーリーに焦点。未プレイ者も楽しめる読み物を目指すが、ネタバレ注意。ストーリー総評は「世界観◎プロット◯人物描写✕筋書き✕」大きな問題点を2つ指摘。考察のためメインストリームのプロットを書き起こし。

この記事には、ステラーブレイドのストーリー部分を中心に編集した動画と、その中で描かれているストーリーの考察、アナザーストーリー的な二次創作アイデアがあります。

[動画]ステラーブレイド
私的まとめ第7話「秘密の園」

全12話完結。ストーリーを追いやすいようガッツリ編集の動画です。

次のアルファネイティブは宇宙にいることが判明します。
リリーは、そこへ行く前に、かつての作業場があるエイドス9に立ち寄らせて欲しいと言います。

次の動画 ▶ 第8話「セントラルコア」

ここから先は、この動画に含まれていない全てのネタバレ要素を踏まえた文章となりますのでご注意ください。


ストーリー解説

エイドス9

エイドス9は、ゲーム的にはボーナスステージの扱いで、特定の条件を満たした場合にだけ、リリーが「寄って欲しい」と申し出てきます。

Eidos 9

これは筆者の勝手な想像ですが、ステージのアセットにエイドス7の使い回しが見られることから、おそらく開発終盤に追加された要素と思います。しかしながら、手抜きかと言われるとそうではなく、遊びのコンテンツはちゃんと作り込まれている印象です。優先度がしっかり判断された取捨選択の結果と思います。

コンテンツの一例を挙げると、動画にはありませんが、ジェットコースターのレールを滑って行く脇道に用意されているボス戦です。タイマンではなくモブが1体おまけでついてくる2vs1バトルで、ボス単体は雑魚レベルなのですが、2vs1になった途端、凶悪な強さで油断したプレイヤーを蹂躙してきます。

Boss Fight

もともと、本作のバトルシステムはボスとの1vs1を主に想定し調整されているため、システムの穴を突いた強さなのですが(複数相手だとパリィしにくかったり意図した通りに攻撃が当たらなかったりする)、開発チーム自らシステムの穴を突いてくるあたり、ちょっとした変化球として筆者は楽しめました。

イベリス

目的地であるアトリエでは、リリーの背景が明かされます。
リリーの所属する第5空挺部隊は2年前に地球に降下しました。同じ部隊の仲間イベリスは1年前に傷を負って眠りについたとのことなので、リリーとイベリスは1年間、エイドス9で共に過ごしたということになります。

Iberis

イベリスは、リリーと同じくらい小柄に見えます。髪型が縦ロールなのと目尻の感じから、勝ち気なお嬢様タイプかも知れません。でも、わりと地味系のリリーと仲良しだったことを考えると、面倒見が良い側面もあったのではないでしょうか。「リリー、またほっぺに油ついてるよ、ちゃんとしなよ」とか言いながらキレイなハンカチで拭いてくれたり。
…ん、なんだこれ?

しかし、イベリスが「コロニーいちのハッカー」という紹介は、空挺部隊という属性から浮いていて嫌な予感がします。形見であるメモリースティックには、「特注のハッキングシステム」が入っているそうです。詳しくは問題点で語ります。

ベリアル

なんやかんやでアダムと別行動になったあと、イヴは軌道エレベーター「スパイア4」を目指します。
ボス戦の口火を切るのは二刀流の使い手ベリアル。

Belial

みんな大好きハイパーチューブからのベリアル前哨戦は、作中でも屈指の会敵シーンではないでしょうか。ぜひ動画を見て欲しい。14:28あたり、動画の概要欄にタイムコードを貼っておきます。

ストーリーの問題点

リリーの放棄されたストーリー再び

Lily

リリーは第5空挺部隊の生き残りであり、何らかの意図や目的を持って行動して欲しいですが、悪い意味でそれを感じさせてくれません。

プレイヤーの立場としては、ゲーム進行上のこのタイミングでエイドス9に戻りたがること自体に違和感はないのですが、問題なのは、なぜこのタイミングなのか、なぜイベリスのメモリースティックを持ち出すのか、というリリーの動機の部分です。

まず前者、タイミングとしては、リリーはイヴたちと出会ってアダムの飛行船という足を得たのだから、いつでも今回のような「お願い」をして戻れたはずなのに、なぜ今なのか。そして後者、もともとエイドス9から出る際に置いてきたものを、なぜ今、取りに戻るのか。「大切な形見だから置いてきた」ならば、そのまま置いておくはずだし、「大切な形見だから持っていく」ならば、エイドス9から出る際に持ち出すはず。これは大きな矛盾です。プレイヤーの想像を助ける描写は皆無ですし、矛盾は想像では解決できません。

実はこの疑問の答えは簡単です。イベリスのメモリースティックには「特注のハッキングシステム」が同梱されており、ゲームの最終盤(考察#12-1)において、制御を失ったエグゾスーツという外骨格メカからリリーが脱出するために使われます。

ゲームの最終盤で使うから。リリーは人ではなく、動機など持たないただの小道具だから。これが理由です。リリーの存在は、筆者が「物語が放棄されている」と考える本当に残念な要因の一つです。

あまりに説得力の無い別行動

軌道エレベーターに向かう道中、アダムの飛行船に"報せ"が届きます。

Eve and Adam

アダム「どうもまずいことになってるようだ
 悪いが ザイオンへ戻らせてくれ
イヴ「待って ここまで来たっていうのに?
 だったら 1人で行く
 今ザイオンに戻っても事態がよくなるとは限らない」
筆者「………」

ザイオンに行きたい(というか姿を消したい)アダム、どうしても軌道エレベーターに向かいたいイヴ、二人が結託してプレイヤーを置き去りにします。

ちょっと待ってくれ。
「すまん パンツ履いてくるの忘れた」くらいのノリで行くとか戻るとかの話をしないで欲しい。

まず、行くか戻るか、それを判断するには、ザイオンに何が起きているのか、詳細を知る必要があるんじゃないか、イヴ。
100歩譲って、アダムにも"まずいこと"以上はわからないとしても、エイドス9に立ち寄れるくらい軌道エレベーターに緊急性は無いのだから、ザイオンの無事を確かめてから出直せばいい。イヴはなぜ急にザイオンを無視するのか

実はこの疑問の答えは簡単で、そういう台本しか用意されていないから。これしか思い当たらない。もう滅茶苦茶だ。真面目に物語を捉えようとするプレイヤーが愚かなのかも知れない。

この雑が過ぎる場面は、他のゲーム要素における開発チームの丁寧な仕事とあまりに乖離しているため、よほど時間がなかったのであろうことが窺えますが、ストーリー警察として見過ごすことはできません。この場面は、筆者が「物語が放棄されている」と考える本当に残念な要因の一つです。

アナザーストーリー[二次創作版]

オリジナル版の良質なプロットはそのままに、このあとの展開も考慮したアイデア版です。

素晴らしいゲームをリスペクトしつつ、素人たる筆者がおこがましい限りではあるけれど、ストーリーに問題が多くもったいない過ぎるので空想するに至った次第。どうか許してほしい。
改ざんや創作したカットやシーンと、その前後だけ抜き出して書いています。略してあるシーンはオリジナル版ままを想定しています。

動画を見ながら脳内で展開すると、より楽しめます。

[凡例]
xx:yy 動画内タイムコードと劇中の場所
オリジナル版まま
オリジナル版の記憶よ永久にあれ
アナザーストーリー版(追加または置き換わり)
※タイムコードは動画の概要欄に同じものを記載しています

00:45 ザイオン/セーフハウス

Lily

(前略)
*リリー「うーんと 実はできたらエイドス9に寄りたくて… ダメかな?」
*アダム「別に 構わないが 何をしに行くんだ?」
-リリー「昔使ってた作業場が あそこにあるんだけど」
+リリー「あたしの作業場が そこにあるんだけど」
-リリー「そこに置いてあるものを取りに行きたくて…
+リリー「やりかけの仕事を仕上げたくて…」
-イヴ「なら行きましょう 必要なものなんでしょう?」
+イヴ「なら行きましょう 必要なことなんでしょう?」
*リリー「ありがと!」

04:27 エイドス9/リリーのアトリエ

(前略)
-リリー「あたしは 秘密の作業場にちょっとこもってますね」
+リリー「あたしは 地下の作業場にちょっとこもってますね」
+リリー「秘密兵器が レボワで見つけたモジュールで動くようになるはずなんです」
(中略)
*リリー「実は… 一緒にいた仲間がいるんです」
*リリー「同じ部隊の生き残りで…」
*リリー「イベリス…」
-リリー「コロニーいちのハッカーで かけがいのない仲間でした」
+リリー「何度もあたしをネイティブから守ってくれた かけがいのない仲間でした」
*リリー「イベリスは… 1年前に傷を負って 眠りについたんです」
*イヴ「リリー…」
*リリー「ずっと1人にしてごめんね… イベリス」
*リリー「また会いに来るね」
(手にメモリースティックを持って)
リリー「この中には特注のハッキングシステムと イベリスの記憶が詰まってる」
リリー「あの子が残してくれた… 大切な形見…
*リリー「2人ともありがと じゃあ行こっか」
*リリー「イベリス… またね…」

09:05 軌道エレベーター付近/アダムの飛行船

Eve and Adam

*イヴ「この先に次のアルファコアがあるの?」
*イヴ「アダム 話聞いてる?」
-アダム「ああ すまない ザイオンから報せが入った…
+アダム「ああ すまない オルカルから通信だ」
+(通信装置がオルカルの姿を投影する)
+オルカル「おお つながったか」
+オルカル「パーソナルリンクで軌道エレベーターに異変を感知した…」
+オルカル「すまぬが 急ぎ向かってはくれぬか よもや 破壊されることはないと思うが…」
-イヴ「何かあったの?
+イヴ「もう近くまで来てる 異変て何?」
+オルカル「今は話しておる時間がない…」
+オルカル「ザイオンの民にとって軌道エレベーターは 宇宙という安息の地につながる唯一の希望」
+オルカル「わしの最後の頼みと思うて聞き届けてくれ」
+イヴ「最後? オルカル 何を言って…」
+(通信が乱れる)
+オルカル「ザイオンは わしが… わしの命に換えても 守ってみせる…」
+マンの声「オルカル様 北東からネイティブの大群が迫っているとの報せ…!」
+(通信が途絶える)
+アダム「(つぶやき)大群だと…」
*アダム「どうもまずいことになってるようだ」
*アダム「悪いが ザイオンへ戻らせてくれ」
*イヴ「待って ここまで来たっていうのに?」
*イヴ「だったら 1人で行く」
-イヴ「今ザイオンに戻っても事態がよくなるとは限らない
+イヴ「オルカルなら きっと持ちこたえる」
*アダム「イヴ…」
*イヴ「戻る気なら 先に私を降ろして」
*イヴ「平気… 1人でもやれる」
*リリー「待った!」
*リリー「あたしいいアイデアひらめきました」
-リリー「あたしがドローンでナビするのはどうです?
+リリー「あたしがテトラポッドの面倒をみるのはどうです? ドローンのナビも任せてください」
*リリー「その間にアダムはバイクでザイオンに戻ればいい どう 完璧でしょ?」
-アダム「リリー ドローンの操縦はそんな簡単なものじゃない」
+アダム「リリー テトラポッドの操縦はそんな簡単なものじゃない」
(中略)
*アダム「だとしても実践で使った経験が乏しいなら危険すぎる」
*アダム「イヴ お前もリリーに賛成か?」
*イヴ「私たちなら大丈夫 行って」
*アダム「はあ そうか… わかった… 好きにしろ」
*アダム「だが俺が戻るまで無茶はするなよ わかってるな リリー?」

空想ポイント

筆者のアナザーストーリーでは、リリーはイヴたちに同行しつつ、リモートで「秘密兵器」を修理していた、かつ、特注のハッキングシステムは存在しない筋書きのため、それに合わせた脚本としました。
また、このアナザーストーリーのイベリスは、ハッキングシステムのしがらみがないため、ハッカーではなくイヴと同じ戦闘を担当する兵士という設定にしました。リリーがイヴをサポートする動機にもつながりますし、外伝的なイベリスとリリーのサバイバル物語の空想が捗ります。SHIFT UPさん、この設定、DLCで採用していいですよ!!

テトラポッドの中でアダムとの別行動が決断される場面については、オルカルに登場してもらいました。
筆者のアナザーストーリーでは、オルカルはザイオンと人類の未来を憂う指導者です。軌道エレベーターとザイオン、両方の危機を知らせ、かつ、イヴには軌道エレベーターに向かって欲しいと願う姿により、このあとの展開にそれなりの説得力が生まれると考えました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?