声を出しながら手話をしてはいけないの?
===================
《コーダ子育て中の親向け》コーダ子育てサロン(対面・オンライン)にご参加いただいた方達の、子育てに関するお悩みやご相談いただいた内容をまとめました。※コーダ=聞こえない親を持つ聞こえる子どものこと
===================
Q.声を出しながら手話をしてはいけないの?
A.たくさんのコーダの子どもたちをみてきましたが、聞こえない親とのコミュニケーション方法としてはデメリットがあることが分かりましたので、あまりお勧めしません。
・デメリットとは?
裸耳では、理解できない口話はもちろんデメリットがたくさんありますが、一番のデメリットは、音声日本語(以下、声とする )と手話で聞こえない親とコミュニケーションを取ってきたコーダは、手話をあまり使わない、または、手話が使えないことが多いということです。
しかし、コーダは「耳の子」でもあり 、聞こえるので、声と手話の併用だとどうしても「声」の方に頼ってしまいます。
そのため、親が頑張って手話を見せようとしても結局、声の方が勝ってしまい、手話がなかなか身につきません。
聞こえない人の中には
相手が聞こえない人であれば、声を出さず手話をする。
相手が聞こえる人になると、声だけで話すか、声を出しながら手話をする。
というコードスイッチが起こる人がいます。
コーダは親の顔を見なくても声だけで言葉を理解できますし、仮に親の方を向いていたとしても 、動いてる手が見えていなかったりします。
これでは、親がコーダと向き合っているつもりでも、肝心な手話が身につきません。
こうなってしまうと、これから先も「声」を出さないといけない状態が続き、いつまでたっても手話が身につかないという状態に陥ってしまいます。
・手話が身についていないとどうなる?
このことだけでなく、パートナーが聴者の場合でも同じような事象が起こります。
最近、聴者と結婚するろう者・難聴者が増えており、生まれてくるコーダとのコミュニケーションのとり方に苦労しているという話をよく聞くようになりました。(コミュニケーション格差)
コーダもいずれは 反抗期に入り、親子の関係性 も複雑になってきます。手話ができない、使わないコーダと 『深い会話』ができるでしょうか。
反抗期に突入すると、聞こえる聞こえないに関係なく、親と顔を合わせず、そっぽを向いたり、親の声かけに相槌を打つだけで会話が続かない子もいます。それがコーダだとしたら・・・
この違いを見て、どう思いましたか。
反抗期だけでなく、思春期でも同じようなことが起こります。
親にわかるように簡単な言葉を選んで伝えたとしても、うまく伝えられなかったという思いが強くなり、その気持ちのやり場がなく悩み続けるコーダもいます。
・“家庭内”でのコミュニケーション格差
聞こえない親も、職場や聴者との交流の場などで意気投合したり、深い会話ができなかったという経験をされている方が多いと思います。
この他にも、みなさん経験があると思いますが、食卓での家族団欒の時はどうでしたか?
目の前に飛び交う会話の内容が分からない、ようやく分かったとしてもどんどん変わっていく話題についていけず、黙々と食事をしたという人が多かったと思います。
このような状態を ディナーテーブル症候群 (詳細はリンク先へ)と呼びます。
みんなが笑っているときに、「何の話?」と聞いても「たいしたことない」、「あとでね。」と言われてしまうこともあります。
聞こえない親自身の体験をコーダに置き換えてみてください。
コーダも同じ思いをしているということになります。
パートナーが聴者の場合に起こりうること
コーダは、楽しくなったり疲れたりすると、通じやすいコミュニケーション方法を選びがちです。
特に手話があまり身についていないコーダの場合、聞こえる親と話したくなるのはごく自然なことです。
このように、“家庭内”でのコミュニケーション格差があるということをどのように解決していくかを、聞こえるパートナーと早めに話し合うことをお勧めしています。
聞こえない親は、ディナーテーブル症候群 の経験がありますが、聞こえない自分が結婚して家庭を持ったことで、また似たような状況を再現してしまうとは思わなかったという人も多いです。
テーマからすこし逸れてしまいましたが、
先述した通り、親子でのコミュニケーションはすべてが繋がっているので、様々なコミュニケーション手段があるとはいっても、その手段によっては“家庭内”でのコミュニケーション格差が起きてしまうことを理解しておく必要があります。
・もともと日本手話には声がつきません。
手話サークルなどで手話を学び始めたコーダの何人かにお会いする機会がありました。 なぜ、大人になってから手話を学ぼうと思ったのかをお伺いしたところ、
「聞こえない親ともっと話したかったから。」
という切ない理由が多かったです。
ディナーテーブル症候群 を経験した聞こえない親も聴覚活用で厳しく育てた 聴家族のいる実家には帰りたがりませんが、それと同じですね。
最後になりますが、「声つき手話」から「声なし手話」への切り替え方法の記事を紹介していますのでご参考にしてください。
▶ コーダに音声日本語と手話の併用で育てたのですが、手話があまりできない…
【手話】の関連記事
・ 手話環境で育つコーダは、日本語の獲得や言葉が遅れてしまう!?
・ コーダに指文字を”先に”教えたほうがよいですか?
▶ 声を出しながら手話をしてはいけないの?
・ コーダに音声日本語と手話の併用で育てたのですが、手話があまりできない…
・コーダが自分の親に通訳したがるけど、どこまでお願いして大丈夫かしら?
・手話子育てがいい理由とは?