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【短歌】操車場にオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

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心のままに詠んでみました。ベクトルを定めないスタイルで綴ります。
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2022年2月の記事一覧

短歌 告白 十首

短歌 告白 十首

1
干からびた蝶を燃やす火 忘れたら許されたのと同じことだね

2
カポエラかカポエイラかで揉めたよねシャペウ・ジ・コウロが告白だった

3
雨の日につけあった傷鮮やかに全治一生であれと祈る

4
(内緒だよ)(何が?)(それだよ)(ああこれね)風が吹いたらキスの続きを

5
ジムノペディ口ずさむきみの手のなかですぐぷっつんする祭りの金魚

6
ひとりからふたりになって失ったものを数えて指が足りな

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短歌 共犯 十首

短歌 共犯 十首

1
観覧車ひりひり上がる 天国の一番近くで泣き出しそうだ

2
まだ誰も見たことがない症状を見せてあげますお部屋においで

3
セロテープを噛むと甘い 教科書に載ることだけじゃきみが見えない

4
テーブルにレモンがひとつ 爆発を待つ共犯になってください

5 
貸したまま返ってこない傘なんて忘れていいよ忘れたいから

6
午睡から醒めてもきみがいないせい 打消し線に満ちゆく視界

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短歌 速報 十首

短歌 速報 十首

1
薔薇の咲くような笑顔でといわれてまずはまぶたをひっくり返す

2
プチプチを潰しています 世界から緩衝地帯を奪っています

3
靴ひもを結びなおしているうちに間を詰めてくる公園の鳩

4
(ラブソング)誰のものでもないきみのまだ美しいまなうらの色

5
世界って素数でできているじゃないビートルズって5人なんだよ

6
星狩りの帰ってこない歩道橋は流しそうめんができそう、うふッ

7
じゃんけん

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短歌 か細い夏 十首

短歌 か細い夏 十首

1
ピアノ線よりもか細い夏でした 音階のない波を見ました

2
フロアからテナント去って白い壁 間違い探しの終わらない夏

3
犯人の名前かき消す蝉の声 悪くない人だけが泣いてる

4
PASMOには二十五円しかないから今日は各駅停車で帰る

5
座席にて脚を広げるおっさんがズワイガニならよかったのにな

6
カーナビがうさぎの声で「次を上です迷うよりましなほうです」

7
自転車で海辺の坂道下る

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短歌 少女 十首

短歌 少女 十首

1
ブランコを思い切り漕ぐ大人にはなりたくなかった つま先で蹴る

2
「ジュラ紀にもいじめが存在したらしい」「変わらない良さがありますねえ」

3
鉄くずが人工衛星だったころわたしもみんな大好きだった

4

雨の日の少女鏡に懐かしく今も小さなほくろを撫でる

5
沈黙が氷雨となって降った午後ゲームオーバー画面が明るい

6
ぽけっとに手を突っ込んで街をゆく誰を斃せばいいのだろうか

7
真夜中

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【掌編】ふたり/中指

【掌編】ふたり/中指

雪解けは終わりの合図、春
そしてきみは言うんだ
「はじめまして」って笑顔が似てきたね、と藍子に言われて以来、ときどき鏡に向かって笑ってみる自分がいる。よく夫婦は似るものだと言われるけれど、私たちも例外ではないようだ。

「では、あなたはご自身のアイデンティティの一部として病気を認識しておられると?」

灼熱の真夏、クーラーの効いているはずのコーヒーショップの一角が、やけに居心地悪く感じられた。私は

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短歌 早春 十首とご報告

短歌 早春 十首とご報告

1
白壁にピンクの花弁春はすぐそこまで来てる(頭が痛い)

2
苛立ちは生ぬるさゆえ風さえも優しくなってしまう季節だ

3
ぎちぎちにイルミネーションを巻かれた桜が笑うまで、あと●秒

4
その地図に春は来るかい来ないならピンクのペンを貸してあげるよ

5
愛未満我儘以上嫌悪感深呼吸且つ深い溜息

6
導火線にも春が来る火をつけて笑っていいか確認をする

7
口笛の練習をしていたはずが舌打ちばかり

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短歌 カレー 十首

短歌 カレー 十首

1
カレールーふたりのために溶ける夜にテレビは見ないふたりのために

2
中辛と言いたいのかなLINEには「チュウからにして」って書いてるけど

3
明日もし世界が終わるならカレー終わらないとしてもやっぱりカレー

4
こいつらはほとんど同じ材料で肉じゃがになる未来もあった

5
隠し味当ててみようかなんてまだ大切な人みたいな口調

6
何度でも聞かせてほしい「おいしい」は愛の言葉と気がついたから

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短歌 獣 十首

短歌 獣 十首

1
鞭打てばいうことを聞く獣ども論理だててもむごいはむごい

2
消えかけの炎を愛でた日々があり強風の日は笑い続けた

3
のど飴を舐めているからヒトだろうそう簡単に殺してはだめ

4
幸せな日々であったとの証明 卒業式に檸檬を贈る

5
毒親を自称する母の手首にまだ新しい傷跡がある

6
正答を提示したのに嚙みついたこいつは獣けなしてもよい

7
大切なことは濁しておきましたモザイクかけた卒業写

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短歌 糸 十首

短歌 糸 十首

1
はち切れる寸前の糸携えて一人ぼっちで微笑む真昼

2
屋根裏に取り残された人形が謙虚さを求められてぷっつん

3
サイレンが近づいてくるきみはまだ夢とうつつを彷徨っている

4
糸くずの存在価値はきみだけが傷の深さとともに知ってる

5
絹糸で吊るされている鏡の前で笑顔の練習をする

6
三つ編みをほどいたあとのウェーブは泡に還った人魚の名残

7
役割を失くした人形役割を失くした人と屋根裏に

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短歌 揺れる 十首

短歌 揺れる 十首

1
揺れている洗濯物を眺めつつ「明日も生きていたいね」ときみ

2
久々に結った髪の毛(少女には戻れないこと承知の上で)

3
春を待つ前髪を切る咳をする優しすぎると苦しくなるね

4
にびいろのぶらんこに乗るそびえたつビル群がみなあかね色に染む

5
被害者と加害者分かつ境界をチョークで引いて血色の夕暮れ

6
「いのちを大切にしましょう」人々が必ず気にする消費期限

7
サーカスの来ない街に住

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