夢の中で、あの日の続きを
長い間、よく夢に出てくる人がいる。
この3年の間にも、何回出てきただろう。
その人は、中学のとき一目惚れした、好きだった人だ。
彼にはずっと片思いだった。
一年生のときに隣のクラスで、廊下とかで見かけて好きになったのだと思う。
隣のクラスだったから、体育祭のフォークダンスで踊れたときは、とんでもなく緊張していた。
そして二年生になり、同じクラスになった。
その時は、天にも舞い上がる気持ちだったんじゃないかな。
でも、殆ど話すことが出来なかった。
彼の前だと頭が真っ白になって、言葉が出てこなかったのだ。
ただただ自意識過剰が過ぎて、そんな風になっていたんだと思っていたけれど、もしかしたら、ちょっと違うんじゃないかなって、今この記事を書きながらふと思った。
もしかしたら、あまりに大きく激しく渦巻く想いを抱えたまま、言葉を発することは、その時のわたしには難し過ぎたんじゃないんだろうか。
それでも、友達の協力を得て、彼から当時流行っていた音楽が録音されたカセットテープを何度かもらったりした。
最初のカセットテープに入っていたのは、米米CULBの「浪漫飛行」だった。それからこの歌は、わたしにとってとても特別な響きを持つ歌になった。
今でも聴くと、涙腺がゆるんでしまう。
彼に彼女ができた時も、彼女を含めたグループで遊びに行ったり(これも友達の計らい)、彼女がいるからって諦めたりするようなタイプではなかったので、話せないわりに、友達に助けてもらいながら積極的にいろいろアプローチしていた気がする。
今思うと彼は、同世代の男子より、かなり大人びているように見えた。
はっきりとは覚えていないけれど、告白はすでに気持ちもバレバレの2年生の12月、クリスマス前の彼の誕生日にしたんじゃなかったかな。
プレゼントを渡したけど、好きな人がいるからって言われた。
多分それも知っていたけど、だからと言って告白しない理由にはならなかった。
振られても好きは諦められなかったし、友達のおかげで、その後もテープもらったり一緒に遊んだりした。
いつか、夜中に何日か長電話したこともあった。
学校だと話せないのに、電話だといろんなことを話せた。
話の内容なんて全く覚えていないけど、
電話の最中は相思相愛な気がした。
話しながら眠くなって、そのまま寝てしまったりもした。
あるとき、電話の声がうるさいって母に怒られて、電話を切られた。夜中だったけど窓から脱走して、電話ボックスまで走ったこともあった。
でも彼はもう眠ってしまっていて、電話に出なかった。彼との記憶はそこで止まっている気がする。
その後も学校で会っているはずだけど、全く覚えていない。
卒業式のとき、アルバムに一言寄せ書きを書いてもらった。
そこには「君の瞳にI love you」って綴られていた。
当時その寄せ書きの意味はよくわからなかったけど、やっぱりどこか大人びていて、かっこつけていてる感じだった。
卒業後、彼は17歳で結婚したと言う噂を聞いた。
そして、そのあと別れたことも。
わたしにいつも協力してくれていた友達が、卒業後も彼と時々連絡を取っていたり、会ったりしていたみたいで、そんな話をたまに教えてくれた。
卒業後、一度くらいは会ったような気もするけれど、定かではない。
夢に出てくる彼とは、最初は夢の中でも全然話せなかった。
でも、わたし自身の解放が進むに連れて、夢を見る毎にどんどん彼との距離が縮まっていった。
今朝は、ちゃんと近い距離で話をしていて、それがとても心地よくて、でも、彼はわたしの友達が好きで、うれしいけど胸が痛くなる夢だった。
朝目が覚めた時、やっと自然に話せるようになったんだなって思った。
なんとも言えない切ない余韻が残っていた。
でも多分それは、彼との関係どうこうではなく、本当は私とわたしの和解であって、自分と相思相愛になるまで、もうちょっとのところまで来ているという、そんなお知らせなんじゃないかなって思っている。
今、彼のことを思い出しながら、この記事を書きながら、浪漫飛行を聴きながら、涙が止まらないけど、決して彼のことが恋しいわけじゃない。
わたしの中に誰かを恋しく思う感情みたいなものはここ数年で、穏やかな愛しさに変わっていて、強く激しく何かを求める感覚みたいなものはほとんど出てこない。
でも、夢の中で彼をいつも遠くからもどかしく見ていて、この3年で少しずつ距離が縮んで、やっと話せるようになって、自分が少しずつでも確かに変化していることに気付けている今、自分でも理解できない想いが、深いところで癒されようとしている、そんな風に感じている。
彼のこと、すごく好きだったな。
彼氏彼女っていう始まりと終わりがなかったからこそ、ずっと心の奥に残っているのかもしれない。
形あるものに憧れ縛られる年代だったはずだけれど、そういうのを取っ払って、彼と繋がれた時間は、わたしにとってかけがえのない体験だったんだと、今ならそう思える。
元気でいてくれたらいいな。
30年経っても、夢の中にまで出てきてくれて、ありがとね。
タイトル【愛の距離】
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