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#2「あそぶようにはたらく」。イセさんの「はたらく」ができるまで。

今回の「あの人の“はたらく”ができるまで」は、イセオサムさん。



イセさんは、非常に「感度」の優れた人だ。フットワークが軽く、柔軟性があり、そしてロジカル。

インタビューを通し、そのような印象を受けた。
 
お話を聞かせて頂く中で感じた点として、イセさんの「はたらく」を紐解く要素は大きく2つ。

それは、イセさんが何度も口にした「実験」「あそぶようにはたらく」という言葉。この2つがキーワードだと感じた。
 
数々の「実験」を経て辿り着いた、現在のイセさんの「あそぶようにはたらく」は、どのようにして創られてきたのだろうか。お話をうかがった。
 

 

【プロフィール】
イセ オサムさん
現在は、PLAY(株)代表取締役として、企業のデジタル活用アドバイザー。(株)Roadie取締役、(株)オモロキ取締役として、「bokete」のアプリを運営。
HSCにて「サラリーマンが本業以外の活動へ一歩踏み出すコミュニティづくり」を推進。
㈱NAVICUS社外取締役としてSNSマーケティング事業。エンジェル投資家として10社ほどのスタートアップを支援中。

「あそぶようにはたらく」


―イセさんと言えば、大喜利アプリ「bokete」のプロデューサー、経営者、投資家、DXアドバイザー、など様々な面がありますが、それらは聞かれまくっていると思うので聞きません(笑)
私が、最も聞きたかったのが「あそぶようにはたらく」という働き方についてです。まず、この「あそぶようにはたらく」とは、どのような意味でしょうか?
 
イセさん(以下敬称略) 最近、孫泰蔵さんの著作「冒険の書」で良い表現を見つけたんですが、一言で言えば、「学び」「遊び」「働き」がいっしょくたの状態のことかと。昔は、「学び」「遊び」「働き」が一緒だったのが、今はそれぞれが分かれちゃってる感じがして。
 
―なるほど。「学んで遊んで働いて」。今はそれらが分離してしまっている、という解釈ですね。そうではなく、それらを混ぜた状態、繋がっている状態が「あそぶようにはたらく」というニュアンスなんですね。
 
イセ そうですね。
 
―ちなみに、イセさんが「あそぶようにはたらく」という言葉を使うようになった頃から、そのように考えていたんですか?
 
イセ 以前は、「1日中働くなら楽しい方が良いよね」というシンプルな意味でした。念の為に言っておくと、今、僕のTwitterやfacebookを見た方は「遊ぶ」にフォーカスがあたっていて「働いていない」と思う人もいるかもしれませんが(笑)
「あそぶように」という言葉は、「はたらく」にかかっている言葉なので、基本的には「ちゃんと働いている人」です(笑)
 
―釣りの写真とか、めっちゃ多いですもんね(笑)きちんと働いているんだぞ、ということですね(笑)
 
イセ そうそう(笑)「あそぶようにはたらく」という言葉は、そもそも、ハードに働いていた頃に言い出した言葉で。10年くらい前に使い始めました。
 
―なるほど。だから、当初は、長時間「働く」なら「遊ぶように」という意味を付けていたんですね。
 
イセ そうですね。
 
―ちなみに、イセさんの中で「遊ぶ」という概念には、グラデーションがありますか?
 
イセ そうですね、「遊び」にも2つあると思っていて、「消費する遊び」と「何かを生みだす遊び」ですね。
 
―「働く」うえでは、後者に重きを置いているんでしょうか? 
 
イセ まさに、そうですね。
 
―では、「遊ぶこと」と「(お金を稼いで)ご飯を食べられること」、この2つの関係性はどのように捉えていますか?
 
イセ 実際、ご飯を食べられないと困るので、リアルな数字は帳尻を合わせていますが、基本的には、全て遊びだと思っています。だから、食えるか食えないか、という尺度では捉えていないかもしれません。色々実験していく中で、たまたま価値が認められれば「仕事」になる。だから楽しそうなことを色々やってみる、そんな捉え方ですかね。
 
―なるほど!「稼げるから」という入口ではなく、そこに「遊び」という要素を入れているからこそ「これ、楽しそうだな。実験してみよう!」という立ち位置になるんですね。すると、そのように形付けられる「働く」は、とても間口が広い印象を受けますね。「働く」という概念が広く、その中で「たまたま価値が認められれば仕事になる」と。おもしろいです!
 
イセ 中学生の頃から、好きになれて、なおかつ食える仕事を模索していました。例えば、「釣り」が好きだからルアーを作って売ってみたり。その他にも、バンド活動、演劇活動、Youtuberと、色々やっていたんです。
 
―中学校の頃から既に「実験」しているんですね(笑)

イセ そうですね(笑)中学校では明らかにアタマのデキが違う奴が周りに多くて(笑)生存戦略として、ここで勝負しても勝てない、と思って勉強以外で生きていく道を探していましたね。
 
 

「実験」とは「先に価値をつくる」こと。


―イセさんが仰る「実験」の根底には「遊ぶ」があることが分かりました。言い換えれば、「たのしく」「はたらく」という思いがある。そうとも言えそうで、とても共感します。加えて質問ですが、「実験」が「お金を得ること」に紐づく時、そこにはどのような関係性が存在していると思いますか?
 
イセ 「実験」を別の言葉で表現すれば、「先に価値をつくること」ですね。あくまでも価値が先。お金は価値を具現化したものだから、価値があればお金が生まれるはず。関係性で言うと、そう言えるかもしれません。それすらも実験かもしれないけど(笑)
 
―いいですね(笑)価値があるはず、だからお金も生まれて当然だ、と。時間差はあるかもだけど(笑)
 
イセ そうそう(笑)そういう意味で、いきなり仕事にはならないけど、「これは楽しそうだ!」とか「これ、なんかいいかも!」と感じたものに時間を投下する。その時点で、仕事になるか分からないけど、とりあえずやってみる。そういう感覚ですね。
 
―なるほどですね!「先に価値をつくる」という文脈から始めた取り組みで、具体的に形になっているものはありますか?
 
イセ 一風変わったところで言えば、「事業」と呼べる形にはしていないけど、日本文化芸術国際振興協議会というNPOの理事をやっています。京都の祇園で日本文化を学びながら、芸妓さん、舞妓さんと遊ぶお座敷ツアーをやったり。そこで面白い人との交流の機会を生みつつ、日本文化を学んでいます。
 
―おもしろいですね!「遊び要素」満載のニオイがしますね。
 
イセ そうそう。仕事になるかは未知数だけど、なんか面白そうでしょ(笑)
 
―ええ(笑)他にもありますか?
 
イセ 他には…例えば、「HSC(ハイブリッドサラリーマンズクラブ)」ですかね。
 
―それはどのような取り組みでしょうか?
 
イセ サラリーマンが、本業以外の活動に一歩踏み出すコミュニティづくりをしています。現在、200名ほどのコミュニティになっていて、ここで出会った参加者同士で新しいテクノロジーを学ぶイベントを開催したり、実際にワーケーションに行ったりプロジェクトを進めていたりしています。中には、参加者同士で会社を作ったり、なんてケースもあります。
 
―おもしろい取り組みですね。参加されている方の属性は、どのような人が多いですか?
 
イセ 比較的大きい企業に所属している人が多いかもしれません。あと、楽しそうな人が多いかも。所属している会社も楽しんでいる、そんな人が多い印象ですね。イイ人が多い(笑)
 
―なるほど(笑)プロジェクトが生まれたり、会社を作ったりする実例を挙げて頂きましたが、それを推奨している訳ではないんですか?
 
イセ そうそう、むしろ逆で、「いきなり会社勤めをやめない方が良い」と言っています。いきなり辞めると、食うための仕事をしなければならず、そこに時間がもってかれるので。だから、参加するメリットは、会社員に軸足を置きながらも、自分1人ではできない何かを始める推進力になる、という点かと。自分がやりたいことを実践している人と出会うと自分もできる気がする、みたいな。さっき挙げた例もコミュニティの力だと思うんです。
 
―「ハイブリッドサラリーマンズクラブ」も「先に価値をつくる」という文脈から生まれていると思うと、おもしろいですね。
 
イセ まだ本格的な仕事にはなっていないけど、自分も参加していて楽しいからやっている感じですよね。コミュニティ運営のスキルを得られたり、そこで新たな交流、繋がりは生まれたりするのは事実だから。そこには価値があると思っています。
 
―お話を聞きながら思いましたけど、出口が固定化されていない点が良いと思いました。つまり、「サラリーマンからフリーランスに!」とか、「起業へ一直線!」みたいな。固定化した、特定の方向だけをお勧めしていない点も、とても良いと思いました。
 
イセ そうですね。サラリーマンを辞めたからって上手くいくとも限らないし。そもそも事業って10本つくって1本当たるかどうか、みたいなとこあるじゃないですか?最初からホームランを狙って打つのは難しいですよね(笑)
 
―確かにそうですよね(笑)それに、「手放し方」1つとっても、全部手放してから何かを始めるハードランディングタイプが合う人もいれば、少し残して何かを始めるような、ソフトランディングタイプが合う人もいる気がします。誰かと出会い交流することで、その辺も自然な形で整う、なんてこともある気がします。
 
イセ そうですね。あると思います。
 
―そういう意味でも、1人1人が異なるゴールへ向かったり、異なる状態だけど同じ空間にいられる、そういうコミュニティは良いですね。
 


経緯・きっかけ


―今のイセさんは、プロデューサー、経営者、投資家、DXアドバイザーなど様々な面がありますが、最初からそのような方向を意図されていたんでしょうか?

イセ いや。30歳くらいまでは、分かりやすい起業家タイプだったかも(笑)
 
―と言いますと(笑)?
 
イセ 一発当てて、フェラーリ買って、ハワイに住んで、みたいな(笑)
 
―今からだと想像できないですね(笑)でも、そっちじゃないと思ったんですか?
 
イセ そう。ある時、「ちょっと違うかも」と思った。なぜなら、少なくとも自分の場合は、周りを見た時に、そっちに進んでいる人で幸せそうな人を見つけられなかった。もちろん、達成してごほうびを得るのも良いんだけど、何かを達成すること自体を楽しむ方が、自分にとっては面白いかも、と思ったんですよね。
 
―おぉ〜。そうなると、「どうやって事業をスケールしてゆくか」みたいな考え方から、「どんな状態が楽しいか」のような考え方にシフトしていった、ということでしょうか。
 
イセ そうですね。そうとも言えるかも。
 
―その考え方だと、「仕事のつくり方」も変わってきそうですね。ちなみに、今って、「仕事をつくろう」としている感覚はありますか?
 
イセ あぁ、あんまりないかも(笑)。誰かと話していて、「それ面白い」とか「こういうのつくろうよ」みたいな流れがあって。そこに僕がいる、みたいな。
 
―そんで「面白いからやってみよう」と(笑)?
 
イセ そうそう、まさにそんな感じ(笑)流れてきた球を打つ、みたいな感じかな。
 
―やっぱり、イセさんは「プロデューサー」「演出家」なんですね。それを支えるのは、フットワークの軽さ、世代を問わない広い交流、そのような要素が存在しているからこそ、できることだと感じました。それって「才能」ですかね?
 
イセ 幅広い世代の人と交流しているのは事実ですね。あと、「才能=自然にやってしまうこと」だと思っていて、出会った人がその人の才能を世の中で発揮するお手伝いをしている、とも思っていますね。起業家のアイデアや事業をドライブさせる活動もそうだし。
 
―起業家、投資先の壁打ち役になっていますもんね。思考は深いんですが、行動が軽やか。非常にロジカルなんですけど、直観的でもある。そのバランス感は、どのようなことから生まれていると思いますか?幼少期はどんな過ごし方をされていましたか?
 
イセ 小さい頃に、既に論理の限界を感じていたかもしれません(笑)論理を詰めていっても限界があるなぁと思っていた節はあります。
 
―いや~おもしろいですね(笑)。「論理の限界」。好きです、その言葉。最後の質問になりますが、「あそぶようにはたらく」為に必要なものって何でしょうか?環境?時間?自由?覚悟?
 
イセ んーどうだろう。「勇気」じゃないですか?用意した答えっぽいけど(笑)時間がないとか、お金がないとか言うけど、今の日本であれば、選り好みせず働けば死なないですからね(笑)さらっとやってみてダメなら、さくっとやめちぇばいいんだと思います。それに、考えすぎると、だいたいやらないので、まずは直感で決めちゃって、あとから論理を積み重ねるのも一手かと。だからまずは決めることですね。
 
―なるほど。その際に「年収」は考えますか?
 
イセ そういう意味では、「年収」を短期ではなく長期スパン(生涯年収)で考えていますね。一回凹んでもあとから上げれば良い訳だし。それよりも、社会関係資本があったり、パートナーの収入があったりすれば、現年収は関係ない気がします。
 
―確かに!では、リスクヘッジとか、ここまではチャレンジする、みたいな「線引き」はありますか?
 
イセ 失敗の線引きの問題ですよね。無理しないことかな。あと、楽しくないことはなるべくやらないこと。僕の場合、ダメならすぐやめちゃう(笑)たのしく生きれている姿が1番自然だと思うんで。
 
―いいですね~!とっても共感します!!本日は貴重なお時間を頂きまして、ありがとうございましたー!!!
 

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