見出し画像

心理的安全性(THE FIRST SLAM DUNKで考察)

お目通しいただきありがとうございます!プロコーチの寅さんです。

映画館に二回足を運んだのは人生初。
90年代にスラムダンクをさらっと眺めていた
学生時代には気がつかなかったのですが、
今回はリーダーシップがてんこ盛りな物語だと思いました。

スラムダンクの最終章「王者山王戦」に
「心理的安全性」の要素が沢山含まれていたので、
ここでnoteしておこうと思います。
少しネタバレが入っていますので、
まだ観ていない方はご容赦ください。

スラムダンクをご存じではない方に簡単に説明しますと、
不良高校生だった桜木花道が、わずか4カ月間で
バスケの様々な技術を習得し、
スポーツマンに成長していくという物語。
恵まれた超人的な跳躍力により、
初心者ながら様々なチャンスを作ります。

対する山王工業高校バスケ部は高校バスケ界の絶対王者。
「湘北高校」は、桜木花道が所属する
インターハイ初出場のバスケ部。
チーム全員の成長を描いたスポーツドラマです。

「心理的安全性」とは、
何らかの恥ずかしい思い、疎外感、罰などを恐れることなく、
(1)仲間として認められ、(2)安全に学べ、(3)安全に貢献し、
(4)現状打破に安全に挑戦できる、と感じられる状態を示す。

4段階で実現する心理的安全性 ティモシー・R・クラーク著 日経BP

クラーク氏は心理的安全性にはリーダーがメンバーに対して
「尊敬」と「許可」を出すことと言っています。

安西先生(湘北高校監督)や湘北メンバーは
それを体現していると思いました。

(1)仲間として認める(インクルージョン安全性)
赤木が2年生の時、先輩のパス回しがままならず、
大敗の湘北高校。
宮城は「そこでパスを出せるだろ!
俺を出せよ!」
とベンチでイライラしている。

試合後のロッカールーム。
3年生の先輩が1年生の宮城リョータに対して、
「カタブツ(赤木)と問題児(宮城)、
上手くいくわけねーよな。おまえは夏まで持たねぇな」
と吐き捨てた直後、

赤木がその先輩の目の前に立ち、
「宮城はパスが出来ます」
と真っすぐに提言する。
仲間として認めた瞬間です。

この後、宮城は「赤木のダンナ」と
呼び慕うようになります。
この人のために貢献しようと
思うようになりますよね。

(2)安全に学べる(学習者安全性)
花道はバスケ初心者だったので、
ドリブルなどの基礎練習から始めます。
普通のミドルシュート
(ジャンプシュート)さえ入りません。
安西先生(湘北高校監督)は桜木に
2万本のシュート練習を課します。

インターハイまであと10日余り…
…だが初心者の桜木君なら10日でも成長する可能性がある
彼は本当に飲み込みが早い…
驚くほど…
この10日─
彼には中途半端にチーム練習をやらせるより
徹底した個人練習を積ませる方がいいでしょう
彼の成長はチームに確かなプラスとなるはずです。

スラムダンク/井上雄彦

「合宿シュート」と桜木が
呼んでいたシーンです。
この時、ヒロインの春子さんや
水戸と大楠、高宮や野間の
不良仲間が合宿に付き合います。
しかも徹底して。
決して見捨てないところ、
桜木ならできると思う気持ちが
そこにありました。
ひとりだったらなかなかできないし、
入らないシュートに苛立ちを
感じるはず。
安全に学ぶ環境が作られていたと
思います。
これが映画のラストシーンに
ばっちり繋がっている所も、
感動を誘いますよね。
「左手は添えるだけ」

(3)安全に貢献する(貢献者安全性)
山王戦の2ndピリオドで、
20点差をつけられます。
普通のバスケの試合なら、
負けは確実と言われるラインです。
安西先生は桜木をベンチに呼びます。
桜木に分かりやすくリバウンドの説明をします。
相手が打ったシュートがこぼれたとして、
オフェンスリバウンドを取られて、
得点されると湘北にとって-2点、
しかし、そのリバウンドを桜木が取り、
湘北が得点すると+2点。

安西先生
「つまり-2点が消え
+2点のチャンスが生まれる
わかるかね 桜木君 君がオフェンスリバウンドをとれるなら それは・・・」
桜木
「4点分の働きってことか‼」

スラムダンク/井上雄彦

貢献者安全性を育む環境では、
リーダーは「探求」と「提言」が
必要です。
「探求」とは「質問」のこと。
「提言」とは「話す」こと。
ティモシー・R・クラーク氏は
質問と提言の割合は、
質問(探求)を多くすることが大事と言っています。
質問によって、メンバーの中にある可能性の探求を行うことで、
思考の刺激を行うことができます。
ああしろこうしろという提言が超過すると
それがノイズになり、メンバーは混乱し、
やがて思考が停止し、声を聴かなくなります。

私の仕事であるコーチングでは、この質問を使って、
クライアントの思考を刺激し続ける創造的なプロセスを行います。

安西先生はこの試合で「提言」したのは、
桜木に対するこのアドバイスと、
宮城がゾーンプレスに苦しんでいるときに
「三井くんと流川くん、君たちも前に走っちゃお」
そして、宮城に
「湘北の切り込み隊長ですよ・・・・・・・‼」
とグッと肩に触れた時ぐらい。
提言したのはほぼこの2回のみです。
これも宮城の突っ込み隊長のポテンシャルを信じて、
ゾーンプレスを崩す可能性を信じての
「尊敬」と「許可」を含んだ提言です。

ノイズを最小限にし、
選手たちに創造的な思考をさせる環境を整えていました。
安西先生は多くを言葉にしませんが、
常に俯瞰的に選手を観察して「探求」しています。
いざという時に、そのストックした観察結果を結合させていますね。
何よりも安西先生自身が、選手たちを観察して、
その成長を楽しんでいます。

(4)現状打破に安全に挑戦できる(挑戦者安全性)
山王のエース、沢北の攻略法を、バスケット素人の桜木が、
キャプテンの赤木に提言するシーンがあります。
「やつ(沢北)はパスしねえ 負けたことが ねーからだ」
これで、沢北のシュートをブロックし、ゴリ(=赤木)のハエ叩き
(相手のシュートをバレーボールのスパイクのように叩き落すこと)
を引き出します。
ここは、自由に意見できる環境を普段から作っていたからこそ、
伝えられたのではないでしょうか。
まあ、桜木が怖いもの知らずという性格でもありますが。
ただ、これを実社会に置き換えてみると、
創造的で知的な提言が許される環境は
現状打破を生むきっかけになるということだと思います。

まとめ:
SLAM DUNKはフィクションです。
でも、この物語に感動や共感を覚えるのは、
裏を返せば
「こういう世界になったらいいよね」
という観る側に内在している願いや
理想的な人間関係などが、
物語の中に描かれているからで、
私たちは、その物語に
強く引き込まれるのではないでしょうか。

現実社会でこれを実現するために必要なことは、
リーダーが様々な障害を理由に
「心理的安全性」を確保する義務を
怠たらないということではないでしょうか。

自分の一挙手一投足、
周囲との行動と学習が
あらゆるノイズに強い社会を実現するぐらいの
大きな野望を持つことが必要かもしれません。

私の野望は、
真の心理的安全性がある社会の実現と
誰もが、ごきげんに、
自身の可能性を公私において最大化でき、
新たなイノベーションを起こせる社会
を実現することです。

貢献者安全性のある場所は「ブルーゾーン」だそうです。
THE FIRST SLAM DUNKを観るときに、
以下の特徴がいくつあるか確認しながら
鑑賞すると色々な気付きがありました。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?