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「その1ページは、本当に人を幸せにできるだろうか」を忘れない/編集者の言葉#8

今日は、雑誌「暮らしの手帖」の元編集長で、エッセイストの松浦弥太郎さんの言葉から、「表現する」ということについて書いてみたいと思います。

僕がいつも恐れるのは、それらしくあることで、それに関わった者が、それらしく「良い」と思ってしまうことです。/

『暮らしの手帖日記』

たとえば「花を撮る」ということと、「花の美しさを表現」するということは違いますよね。文章にしてもイラストを描くにしても同じことです。

心動かすものに出合ったとき、その感動を、そして美しさを、ひとりよがりにならずに、いかにして伝えるか。それが表現することだと思います。

「それらしく」ということは「この仕事は、花を撮れば終わり」と考えることです。それでこの仕事はOKと考えることです。ものづくりに携わる人間にとって、それは恐ろしいことではないでしょうか。

言いたいことは、それらしいものほど、無責任なものはないということです。今、私たちが作っている『暮しの手帖』は、それらしいものとしない努力をしなければいけません。編集部一人ひとりが、それらしいものと、ほんとうに美しいものの違いが何かを、常に考えなくてはいけません。

『暮しの手帖日記』

それらしくできたことを「よし」としてしまえば、それらしくできた雑誌として、『暮しの手帖』は、全国の書店さんに並んでしまいます。だからこそ松浦さんは、「それらしいものほど、無責任なものはない」と考えるのでしょう。

「その一ページはほんとうにひとをしあわせにできるのだろうか」。最後の最後まで、この問いかけを続けていても、一度も満足のいくことはありません。/『暮しの手帖日記』

雑誌と書籍、手がけるものは違いますが、私は松浦さんのこのスタンスに共感します。経験を重ねてきた今だからこそ、慣れず、驕らず、読む人の幸せを考えていきながら本をつくっていきたいと強く思いました。

本書は、松浦さんが「暮しの手帖」編集長として毎号書いた読者へのメッセージ「編集者の手帖」と、連載エッセイ「こんにちはさようなら」、定期購読の付録として作った小冊子委に掲載した「編集長日記」で構成された一冊です。

ていねいに暮らすことのなかにある喜びや驚きがこの一冊につまっていて、読んでいると気持ちが穏やかになっていきます。まだ全部読んでいないのですが、少しずつ読んで楽しみたいと思います。

「暮しの手帖」創刊編集長の花森安治さんの名言についても記事を書いていますので、よかったらあわせてご笑覧ください。

最後まで読んでくださりありがとうございました。
よい一日を!


ただいま4刷 構成を担当した書籍が発売中です!


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