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僕は君になりたい。

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自作の小説をまとめています。連載中です。 美少女アイドルとして奮闘する男子中学生の葛藤の日々を描いています。不定期ですが、月2話ほどのペースで投稿しています。
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2023年9月の記事一覧

僕は君になりたい。 あらすじ

僕は君になりたい。 あらすじ

中学2年の4月1日、榊原流伊はたまたま誘われて見に行った、地元アイドルグループ「あじさいガールズ」で1番冴えないメンバー黛薫ことカオルンのステージ上の姿に心を奪われるが、数日後、カオルンが救急車で運ばれたことを知り、居ても立ってもいられず、情報を得る為、また彼女に会うため、彼女の所属する芸能事務所のオーディションに"女装"で受けに行く。当然男子の自分が本当に受かるはずがないと思っていたのに、社長に

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僕は君になりたい。 第7話「アイドルは負けない」

僕は君になりたい。 第7話「アイドルは負けない」

#7

「あの、えーと。オレ、どうしたらいいと思う? 姉貴」

上げた腰を下ろせばいいのか、そのまま立ち去ったほうがいいのか。
「待ってって、言われてるんだから、行かないほうがいいと思うわよ」
まあ…今すぐ出ていけば、再びアイツに出くわしてしまうかもしれないしな。
僕はとりあえず、周りに軽く会釈してイスに座り直した。
そして、味の良さはよく分からなかったが、大きな白い皿にちょこんと盛られた高級な

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僕は君になりたい。 第6話「アイドルより好きな人」

僕は君になりたい。 第6話「アイドルより好きな人」

#6

なんで?

月城琉唯じゃなくて、

榊原流伊なの? 

なんで?

僕はしばらく言葉が出て来なかった。
その場に立ち尽くしていると、お嬢様たちにはスーツ姿のお迎えが来て、強引に夜の街灯に黒光りするベンツに乗せられていった。
「流伊さまー! お待ちしておりますわー。ぜひいらしてくださいませー!」
「いらしてくださいませー!」
瑛里亜、愛里亜の声がこだまする。
ベンツは滑らかな動きで走り去っ

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僕は君になりたい。 第5話「アイドルの悩みごと」

僕は君になりたい。 第5話「アイドルの悩みごと」

#5

バタバタと、ドアの向こうから近づいてくる足音にハッとする。

ヤバい。

アイツらだ…。

僕は、国語の教科書から顔を上げ、周囲を見回す。
部屋にいた綾香が、きょとんとしているのも構わず、僕はダッシュする。
そして、僕のために物置きを改修して造ったロッカールームへ逃げ込み、内側から鍵をかけた。

「琉唯さま〜♡ どちらですかー、ご機嫌麗しゅう、でございますわ〜!」

やっぱりだ。
アイツ

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僕は君になりたい。 第4話「アイドルはここにいる」

僕は君になりたい。 第4話「アイドルはここにいる」

#4

「…でへっ」
目の前に、ニヤついたクラスメートの顔があった。
目尻はだらしなく垂れているのに、口角は異様なまでの角度に上がり、ヨダレを今にも垂らしそうになっている高柳だ。

人間、こんな顔が出来るんだなと、僕は少し感心してしまった。

夏休み前の期末テスト。2限目の数学のテストを回収された後の休み時間だった。
次は英語のテストで、最終チェックをしようとしていたらこの顔が来た…。
「流伊〜

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僕は君になりたい。 第3話「僕は、アイドル」

僕は君になりたい。 第3話「僕は、アイドル」

  #3

「あれ、流伊くん。今日は一人なの?」
山谷さんが声をかけてきてくれた。
僕は「ええ…まあ」と小声で頷き、何となく目を逸らした。
「流伊くん、薫ちゃん推しなんだって? 渋いね。オジサンはやっぱ紫織ちゃんだね。清楚な感じがたまらなくてさ」
山谷さんは、またチラリと僕を見て、うんうんと何故か一人で納得している。
「いやー、好きな子に会うのって、緊張しちゃうよね? あ、呼んできてあげようか? 

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僕は君になりたい。 第2話「僕がアイドル⁈」

僕は君になりたい。 第2話「僕がアイドル⁈」

#2

家の中は、静まり返っていた。

夜遅く帰ってきた母に、僕は姉と一緒に改まって報告をしなければならなかった。

母は、友達と飲んで、ほろ酔いになっており、いい気分だったに違いない。
父の出張中は、よく「自分へのご褒美」だと言って、仲の良い女友達とエステや日帰り温泉に行ったり、食事に出かける。
そんな上々の気分のときに、もう幼くはない子供2人が、神妙な顔を揃えて、母の帰りを待っていたのだから

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