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あなたを日本酒に喩えると?

人と人を繋いでくれる日本酒が、好きです。

今の部署に来た頃、飲み会で「わたしを日本酒に喩えるどんな感じ?」と質問を受けたことがありました。既に日本酒好きだとバレていたから。

少し考えて、こう答えました。

「酸がキラキラしてる鳳凰美田のこの新酒みたいな感じですかね…」
「やさしい包容力が、十旭日の特別純米のお燗並みだと思います」

そしたらまあ、えらく喜ばれたのを覚えています。それからしばらく、「わたしを日本酒で喩えてくれる人」と呼ばれました。嬉しかった。日本酒を好きになって、こんな風に喜べることもあるんだなあと思いました。

それをね、Twitterでやってみたんです。ツイートにいいねを付けてくれた人を日本酒に喩える。「いいね読み」ならぬ「いいね飲み」です。思っていた以上にいいねをしていただいてしまい、41人(2021/8/29 19:30追記:4名の方を追加して45人!)と乾杯することに。

お人柄や文章を日本酒に喩えるのはもちろん、代表作のnoteを読ませていただいて感じたことや、お好きなもののイメージで選んだものもあります。自分にゆかりのある日本酒、ぐらいに思っていただけたら嬉しいです。

「自分のイメージなのはわかったけど、これ、おいしいの?」という方へ。

ご参考までに、それぞれお酒の味わいのジャンルをカッコ書きで添えました。日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)が提案する「爽酒」「薫酒」「醇酒」「熟酒」の4ジャンル(ぼくの名前が入っている奇跡)。いずれかに必ず分けられるものではないけど、目安にはなるはずです。詳しくはこの記事の末尾で書いてるので、ご興味のある方はどうぞ。

前置きが長くなりました。では、お酒の旅に出ましょう。
先に言っておきますが、とんでもない文字数になりました。


2021/8/29 19:30 追記
昨夜いいねくださった4名の方を42.~で追記しました。これにて閉宴!


1.クニトミユキさん

富久長 白麹 純米 Shell Lovers

富久長 白麹 純米 Shell Lovers @広島(薫酒)
ミユキさんといえば岡山だから雄町(酒米)のお酒…ではなく、お隣広島からこちらを。牡蠣に合うといったらこれでしょ!もあるけど、白麹由来のキリッとしたクエン酸が引き締まってる感じで、カッコいいんです。酒米の八反草は土地に根付いた希少品種で、郷土愛にも満ちてる。素敵。

富久長の杜氏の今田美穂さんは、英BBCの世界に影響を与えた「100人の女性」にも選出されたすごい方。今田さんのお酒造りを描いたドキュメンタリー映画もあって、ぼくは映画館で心震わせながら観たのですが、妻が横で大あくびをしていたのが今でも忘れられません。


2.まるよさん

あら玉 純米吟醸 SILKY SNOW TIME

あら玉 純米吟醸 SILKY SNOW TIME @山形(薫酒)
まるよさんはいつも雪山のお写真が印象的なので、やわらかい粉雪が舞うようなスムースな飲み口のこちらをお届けします。冷涼感まとった旨味が喉元を華麗に過ぎ去っていく様子は、まるで雪原を滑降するかのよう。

冬は、その年に取れた新米を使ったお酒(いわゆる新酒)が出回る時期ですが、そこにあって敢えて「冬酒」を打ち出すのが面白い。四季折々の見せ方ができる日本のお酒ならではの醍醐味だと思います。


3.山羊メイルさん

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黒松剣菱 @兵庫(醇酒)
メイルさんといえば、確立された硬派な文体と一途な熱いロケンロー精神。これは、クラシックな火入れ酒を一貫して造り続ける剣菱の理念に重なります。「いいから黙ってろ洗練された米の旨みを教えてやる」と見せつけられた背中には惚れるしかありません。一生ついて行きます兄貴、って感じ。

剣菱は、720ml(四合瓶)ではなく900ml(五合瓶)で市場に出回っている数少ない銘柄。昔ながらの日本酒の味を徹底して守りながら、瓶のサイズにこだわっているのもカッコいい。お燗にして飲みたいお酒です。


4.目頭あつこさん

花巴 山廃純米大吟醸 無濾過生原酒

花巴 山廃純米大吟醸 無濾過生原酒 @奈良(薫醇酒)
あつこさんがツイートで大喜利に答えてるの、いつもニヤけながら見てます。思わず笑ってしまう。このお酒も、ジュワっときれいな甘酸っぱさが楽しく、ラベルの色のとおり元気いっぱいです。でも、水酛(みずもと)っていうむかーしの日本酒造りを守ってて、すっごく真面目な蔵でもあるんです。そこがまた、あつこさんともどこか似ている気がする。

銘柄名の「花巴」は、奈良吉野の千本桜が咲き誇っている様子にちなんだものだそうです。その光景を思い浮かべながら飲むと、また一段と美味しくなると思います。


5.森本しおりさん

澤の花 ささら 超辛口吟醸

澤の花 超辛口純米吟醸 ささら @長野(爽酒)
しおりさんは、ささらっぽい。薄く研ぎ澄まされた日本刀のような鋭さは、しおりさんがたまにスッ…っと切り込んでくる文章のイメージ。ラベルの文字が銀色なのも、またいい。

ぼくの中の王道辛口酒なんですが、どこかやわらかくて不思議なんです。達人のしなやかな太刀には、気付かないうちに切られてるみたいな(おい)。でも、優しく、静かに、大切なことを語り掛けてくれる感じとも似ている。しおりさんの文章を最初読んだときから、ずっと変わらない印象です。


6.フクイチさん

三千盛 純米大吟醸 超からくち にごり酒

三千盛 純米大吟醸にごり酒 Active & Extra Dry @三重(薫酒)
フクイチさんのnoteは、圧倒的な調査力と分析力によって、いつも「えっ、そこまでやるの!」という驚きと笑いに"満ち"ている。三千盛(みちさかり)だけにね。こんなギャグでフクイチさんの面白さを表現しようだなんてEXTRA無礼千万ほんとすみません。

これ、超辛口・大吟醸・にごりという3つの贅沢な要素を「そこまで!」とつぎ込んだ珍しいお酒で、正直「薫酒」に分類しきれません。人類にはまだちょっと早いんです。と思ったら、フクイチさんはラーメン全部乗せのnoteも書かれていたことに後から気付く。もうこれはフクイチさんのためにあるお酒としか思えません。


7.大学の友人Oさん

会津ほまれ 雲嶺庵 純米吟醸 生原酒

会津ほまれ 雲嶺庵 純米吟醸 生原酒 @福島(薫酒)
福島県喜多方の雄である「会津ほまれ」の蔵限定銘柄で、生原酒って書いてなければわからないぐらいきれいな軽めの酒質。蔵にお立ち寄りの際は、敷地内にある日本庭園の美しさを堪能した後、Oさん大好物の喜多方ラーメンをご堪能あれ。ちぢれ面が最高に美味しいよ。


8.麦酒ゆみ(ゆみっぺ)さん

富久長 辛口夏吟醸 プラスX

富久長 辛口夏吟醸 プラスX @広島(爽酒)
ゆみさんには、ビールが恋しくなるこの季節にぴったり、止渇性の高いこちらをお届け。静かでしなやかな旨味に続く、ドライな喉越しが最高に心地よい一本です。よく冷やしたトマトやキュウリとか夏野菜と軽く合わせれば、暑い日の夕暮れ、柔らかい日々が波の音に染まります。幻でなければ醒めないでほしいくらいの美味しさです。

上でミユキさんにお届けしたものと同じ銘柄(富久長)です。ぼく、冨久長のお酒大好きでして。爽やかで、仄かに緑薫るニュアンスがたまりません。自分の名前で表現するとどうも気が引けるのですが、頑張って続けます。


9.Micaさん

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松竹梅 白壁蔵 澪 DRY @京都(薫酒)
Micaさんはやっぱ澪で。澪は、水路の道標である澪標(みおつくし)のことで、目標に向かって真っ直ぐ前に進むという意味に重ね、「身を尽くし」て情熱を捧げるというメッセージもあります。こないだお届けしたファンレターでお伝えしたようなひたむきな強さを感じる名前で、Micaさんにこれ以上相応しいお酒はないと思う。瑞々しくやわらかい味わいなのも、いい。

澪にはいくつか種類があり、上のはDRYバージョン。通常版よりちょっと硬派な発泡感で、音楽語ってるときのMicaさん並みにイケメンなお酒です。宝酒造さんには、MioからMicaに変えてもらうしかありません。


10.地中海性気候さん

天の戸 美稲 特別純米

天の戸 美稲 特別純米 @秋田(醇酒)
飲む人の気持ちを穏やかにさせてくれるお酒です。ここの杜氏・森谷康市さんが語る「日本酒は“なにぬねの”のお酒。なごむ、にぎやか、ぬくもり、ねむる、のんびり。」という言葉、本当に素敵で。地中海さんが描かれるやさしいご家族のエッセイの雰囲気そのままだなあと思って選んでみました。

想いを込めて、手間暇かけて行われる酒造り。蔵元がある緑ゆたかな土地の風景を詰め込んだようなお酒です。美稲(うましね)という名前も、大和言葉のようで心惹かれてしまいます。


11.ささいな笹さん

玉川 純米吟醸 アイスブレーカー 無濾過生原酒

玉川 純米吟醸 Ice Breaker @京都(薫酒)
じゅわっと濃い甘旨味が印象的な、夏酒の大御所。イギリス人の杜氏さんが京都で醸すゆたかな地域性、ラベルのポップなかわいさ、ロックアイスを浮かべて楽しめる意外性は、笹さんのユーモア溢れるエッセイや創作にぴったりです。青色のスリムな瓶も、また夏らしくて。

アイスブレイカーという名前のとおり、ロックアイスを浮かべて飲むと最高です。濃醇な味わいが徐々にやらわいでいく様子は、「場を和ませる」という英語(Ice break)のとおりで頷きたくなります。


12.安野ニツカさん

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新政 亜麻猫 @秋田(薫醇酒)
レモンのような酸味が個性的で美味しいお酒。ニツカさんと言ったらかわいい猫さん、だけじゃなくて文学と物語!地産の酒米(美山錦)を、生酛造りと木桶仕込みという昔ながらの製法で醸す異例の酒蔵で、そこには伝統を未来へ繋ごうとする大切な物語が重なって見えます。

新政は、「日本酒界のスティーブ・ジョブズ」の異名を持つ蔵元さんが牽引する稀代の銘柄です。文化・歴史・地域・個性にこだわり、伝統を守りながら新しい時代を開拓する様は、一介の飲み手も胸を躍らせずにはいられません。新時代の日本酒は、ここにあるような気もします。


13.はるさん

刈穂 純米吟醸 春kawasemi

刈穂 純米吟醸 春kawasemi @秋田(薫酒)
春酒という点はもちろん、ラベルの青色ではるさんのアイコンを思い出しました。うっすら漂うにごりのおかげでふんわりやさしい飲み心地。ラベルイメージどおりの若々しい爽やかさは、どこか初夏に向かう印象もあり、はるさんのエッセイを感じます。

カワセミは渡り鳥。今年社会人となり、新しい旅立ちをしたはるさんには、そこも重なるような気がしました。機会があれば、よく冷やして、すーっと身体に沁み込む宝石のような味わいを是非試してみてください。


14.涼雨 零音さん

美和桜 特別純米 秋あがり

美和桜 特別純米 秋上がり @広島(醇酒)
一足早い落葉を彷彿とさせる渋みの際立った火入れ酒が、涼雨さんのダンディなイケボに完全マッチしました。大人の落ち着きを放つ乾いた旨みと、バランスある甘酸の調和。一夏越えた涼しい夕暮れ時に、遠くの空を眺めながら飲みたい一本です。乾いた旨味って、ほんと好きでして。

ちなみにこの銘柄、「みわざくら」じゃなくて「みわさくら」と読みます。どうしてかというと、清酒(日本酒の別名)たるもの、濁っちゃいけないからです。ってたまに飲み会とかで話すと想像以上のリアクションをもらえるので、機会があったら使ってみてください(なんの話)。


15.深澤佑介/yusuke fukazawaさん

志太泉 純米吟醸 生酛造り ラヂオ正宗

志太泉 純米吟醸 ラヂオ正宗 @静岡(醇酒)
深澤さんが愛する地元・静岡の銘酒。静岡らしい無音の余韻たなびく、美しい生酛造り(昔ながらの製法)によるお酒です。滑らかで軽快な旨味は、熱さをまとえば本領発揮。志し太く、泉が湧き続けるように毎日noteを書かれている姿はこのお酒の生き写しです。大好きなラジオにゆかりがあるのも、深澤さんにぴったりだなと。

東西で大きく分けたら、東の日本酒では静岡が圧倒的に好み。ぼくの中で常に優勝してます。それぐらい静岡のお酒が好きです。いつか近い未来、深澤さんと静岡のお酒で盃を交わせる日を心待ちにしています。


16.ことふりさん

十旭日 特別純米

十旭日 特別純米 @島根(醇酒)
銘柄名は「じゅうじあさひ」。快晴のカラっとした冬空の下、ポカポカの陽だまりを思い起こさせる穏やかなお酒です。全部包み込んでくれる温かいご飯みたいで、ことふりさんの文章の全方位に向けた明るいやさしさや、ライフ、否、ライスワークのような愛情を感じます。

十旭日は、夫婦で杜氏をされている珍しい蔵元。発酵食品の一つである日本酒は、微生物の力なしにはつくることができません。微生物が主役で、自分たちにできるのはそれをしっかり見守ることだと考えるご夫婦の姿勢には、やはり何かを守り続けようとする想いが見える気がします。


17.マリナ油森さん

鯉川 純米吟醸 別嬪

鯉川 純米吟醸 別嬪 @山形(醇酒)
もうね、これはラベルのイメージそのままです。マリナさんのお酒…って考えてから0.5秒でこの瓶のことを思い出しました。得意の文章酔拳で一撃…と思いきや、実はすっごく繊細な味で、マリナさんのやさしいきめ細やかな気配りを感じます。でも伝説の酒米「亀の尾」を復活させた蔵ってのを考えると、やっぱつよつよなので、やっぱマリナさんです。

「亀の尾」という酒米は、漫画「夏子の酒」に出てくる幻の酒米「龍錦」のモデルになったことでも有名です。100年の時を超えて復活された酒米ってどんだけ浪漫。noteの伝説になるであろうマリナさんに相応しい。


18.トラガラさん

達磨正宗 熟成三年

達磨正宗 熟成三年 @岐阜(熟酒)
静かに時が刻まれるのを待つ熟成酒の雄。「なぜ米という穀類を使って、ワインのような柑橘系の香りを追っかけるのか」と日本酒のトレンドに問いを投げかける蔵元の姿勢や、深遠で複雑な味わいは、まるでトラガラさんの深い人生哲学のようです。

ラベルに「熟成三年」とあるように、ワインのヴィンテージのように寝かせたお酒です。従来、日本酒は寝かせるお酒でした。最近は熟成梅酒が出回ったり、サントリーのウイスキー「白州」が品薄になったりと、熟成に対する評価も変わってきている気がします。


19.鈴木鮎/SuzukiAyuさん

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酔鯨 香魚 @高知(爽酒)
Twitterで紹介したのとは違う商品ですが、同じ銘柄「酔鯨」からお届けします。土佐ならでは淡麗辛口のキレの良さは、まるで誤字脱字を見逃さないすーさんの鋭い眼光。そして高知といえば鮎(お名前!)。野根川の清流で仕込んだお酒が、鮎に合わないわけがありません。鮎の繊細な味を邪魔せず、むしろ際立たせてくれる最高の伴侶だと思います。

酔鯨は、特別純米という別の商品が全国区で販売されています。よく淡麗辛口と呼ばれるスッキリした味の日本酒の代表格。リーズナブルな価格でコンビニとかでお手に入るので、見かけたらぜひ。


20.高校の友人Wさん

るみ子の酒 純米 無濾過生

るみ子の酒 純米 無濾過生 @三重(爽醇酒)
きみと名前は違うけど、似てるからこれで(雑だな)。でも、日本酒造りに真正面から向き合う女性杜氏(森喜るみ子さん)の、熱く、ひたむきな想いは、どことなく通ったものがあると思います。ラベルよく見てたら、なんかきみに似てるような気もしてきたよ(褒めてる)。

これも余談ですが、ラベルの絵は、前述した漫画「夏子の酒」の作者・尾瀬あきらさんが描かれたもの。漫画を読んだことある方なら、思わず手に取ってしまうこと間違いなしです。


21.サトウ カエデさん

天青 純米吟醸 千峰 生詰

天青 千峰 夏 純米吟醸 生詰 @神奈川(爽薫酒)
カエデさんの文章に相応しいお酒を探すの至難の業だった…。でも、夏と空でこのお酒を思い出しました。透き通った青い瓶の装いのとおり、今の(日本の)季節に飲みたい瑞々しく爽やかな味わいです。湘南唯一の酒蔵。輝く海から届く光も、まるでカエデさんの物語みたいで。

もひとつお伝えしたいのが、ここの蔵には、イタリアンレストランと割烹が併設されていること。日本にお戻りの際、機会があればぜひ足を運ばれてみてください。イタリアン×日本酒のマリアージュは、楽しい発見がたくさんあると思います。敷地内の緑もとてもきれいです。


22.suzucoさん

冨玲 生酛仕込 山田錦 H25 60

冨玲 生酛仕込 山田錦 応援乃酒 @鳥取(醇酒)
力強く、奥深く、優しいお酒を醸す酒蔵さんです。伝統的な製法(生酛造り)で醸される味はしっかり濃いけど、温めればすっと軽やかな佇まいになる。名前のとおり「フレー!」と応援してくれるお酒で、いつもやさしい言葉で励ましてくれるsuzucoさんにぴったり。ラベルには「応援之酒」とも書いてあり、贈答用にも使われるそうです。

中国地方、特に山陰のお酒は、味の濃いものが多い。たとえば東北には端麗なお酒が多いのと比べると、明らかな地域性があります。百花繚乱ではありますが、地域性で見ていくのも日本酒の楽しみの一つだと思います。


23.佐藤 じゅんいちさん

喜久酔 特別本醸造

喜久酔 特別本醸造 @静岡(醇酒)
またしても愛する静岡の銘酒から。穏やか、やわらかという言葉がこれ以上似合うお酒は少なくて、じゅんいちさんのお人柄そのままのようです。特に、消え入るような美しいキレは感動もの。やさしい静岡の地酒の中にあって、いつでも寄り添ってくれる安心感は随一だと思ってます。

日本酒の中でも高級酒とされる吟醸酒。低温発酵など手間がかかるお酒です。実は静岡は、「吟醸王国」の異名をもつほど吟醸造りが盛ん。喜久酔は、どのラインナップをとっても吟醸造りに遜色ない質の高いお酒を醸すことで有名です。どの仕事も丁寧に。そんなメッセージをもらえるお酒でもあると思っています。


24.こげちゃ丸さん

仙禽 かぶとむし 中汲み 無濾過生原酒

仙禽 かぶとむし 中汲み 無濾過生原酒 @栃木(薫酒)
大人のレモンスカッシュの異名のとおり、日本酒離れした甘酸っぱさが夏を誘います。ラベルの絵のかわいさが反則もの。でもユニークなラベルをはじめ、土地の個性(ワインで言う「ドメーヌ」)、昔ながらの製法、オーガニックなど、ものづくりの背景も含めた「デザイン」の意識を感じる蔵元の姿勢は、こげちゃ丸さんと共鳴する気がしました。

四季の移ろい豊かな日本で、土地ごとに違う気候、水質、米をもって醸されたお酒にはそれぞれの顔があります。造り手の想いや文化や歴史を知ると味に深みが増し、味だけで語るには惜しい。デザインとして、物語として楽しむと、美味しさは何倍にもなる気がするのです。


25.湖嶋いてらさん

七本槍 山廃純米 琥刻 2012

七本槍 山廃純米 琥刻 2013 @滋賀(熟酒)
仮面おゆうぎ会の「蛍売り」でいてらさんの作品に出会い、衝撃を受けました。夫婦そろって読んで、最初から最後まで「すごい…」の一言でした。そんな風に、目の前に並ぶ言葉のずっと奥から語りかけてくださる文章は、時を刻み琥珀色へと深みを増していくこのお酒のようです。

「2013」とあるように、これは2013年に製造されたもの。トラガラさんのところでご紹介した達磨正宗に続き、これもヴィンテージのお酒です。静かな眠りの中で紡がれる美しさ。いてらさんのnote、まだ読めていない作品がたくさんあるので、またお邪魔させてください。


26.ルミさん

笑四季 竹島榮三郎 玉栄 おりざけ生 Extreme

笑四季 竹島榮三郎 玉栄 @滋賀(薫醇酒)
「えみしき」と読みます。南国フルーツのような甘みが特徴で、初代蔵元の名前を冠したこのお酒は、搾りたてのぶどう果汁のニュアンスもあるジューシーなお酒。本当にお米から作ってるの?と疑いたくなる。四季折々思わず笑みが零れる酒造りは、 ハッピーになるかもしれない朝エッセイをはじめ、るみさんの言葉が切り取られる素敵な日常にぴたりと重なる気がします。

あと、ツイートでは文字数の関係で触れられなかったのですが、ラベルのお花もルミさんを思い出しました。お花を生けるときの静謐な空気って、良いですよね。


27.水野 うたさん

天の戸 美稲80 純米 無濾過生原酒

天の戸 美稲80 純米 無濾過生原酒 @秋田(醇酒)
地中海さんと同じ銘柄「天の戸」から。蔵元の掲げる「半径5km以内の米」で造るお酒と、うたさんの掲げる「半径1.5m以内の日常」を描くエッセイ。そして、20%しかお米を削らない(だから80)お酒と、2千字まで文字を削るという今年のうたさんの目標。日常を大切にする蔵の想いがそんな風にシンクロして見えたので、こちらを選んでみました。

何がすごいって、きめ細かく味蕾を突く旨味と、生酒らしいフレッシュさを、食用米(あきたこまち)で作り出しているところ。ええ、酒米ってじゃあなんなの…と思ってしまう。楽しみも驚きもあるナイスガイです。


28.タダノヒトミさん

天寶一 特別純米 八反錦

天寶一 特別純米 八反錦 @広島(醇酒)
軽快な旨味が仄かな香ばしさを伴ってふわっと余韻引いていく、広島の銘酒です。ぼくの中では和食を生かす最高の食中酒で、ヒトミさんのいちまいごはんに寄り添ってくれそう…と思って選んでみました。飾らない、温かい食事に合うお酒って、心の底から安心できるんですよえ。

ここまで具に読まれた方はお気付きかもしれませんが、ぼくは広島のお酒が好きです。東が静岡なら、西は広島といったところ。どちらも軟水仕込みのやわらかいお酒が多くて、儚くキレていく余韻がたまらんのです(この辺でやめておこう…)。ヒトミさんの企画は今月末まで。ぼくも31日までに間に合うように応募します。


29.パン好き🍞ありぱんさん

南遷 プレミアムオーガニック 山廃仕込み有機純米酒

花巴 南遷 プレミアムオーガニック 山廃仕込み有機純米酒 @奈良(熟酒)
蜜の風味漂う、貴腐ワインみたいな極甘口の日本酒です(貴醸酒といいます)。前に、フレンチトーストをラムに浸してオーブンしたなんちゃってパンプディングと合わせたら、最高に美味しかったので選んでみました。高尾さんといえばパン。安直とか言わないで。泣いちゃうから。

これを飲むと「日本酒にもこんな甘口があるんだ…!」という新鮮な気付きがあると思います。そう。日本酒は辛口がすべてじゃないし、何なら甘辛だけで味わえるものでもない。もっと自由に味わえたら、日本酒を飲む楽しさは何倍にも膨らむと思っています。


30.小野 ぽのこさん

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神亀 手造り 純米 @埼玉(醇酒)
ぽのこさんとお話したのはつい最近なのですが、実は去年の感情解像度の最優秀賞を拝読してました。そこで扱われていた焼肉で思い出したこのお酒。肉の旨味や脂をしっかり受け止めてくれる、濃醇辛口の銘酒です。味は濃いのに、ズバンと太い刀のようにキレるからまたすごい。

この蔵には涙なしに語れないエピソードがあって、そこでも感情解像度が優勝してるのは偶然とは思えません。日本酒のエッセイやドキュメンタリーを描いた本はたくさんありますが、神亀の歴史を扱ったこちらの一冊は別格。現代の日本酒にたしかに繋がれたバトンが、ここにあります。


31.ケイさん

都美人 純米原酒 Rafale

都美人 純米原酒 Rafale @神戸(醇酒)
淡路島の銘柄「都美人」の夏酒。これ、ラベルに描かれた入道雲の上昇気流のように、口に含んでから突き抜ける速度がすごいんです。暑さを吹き飛ばす、ボディ強めだけど軽めのフットワーク。きっと色も速さもケイさんのスバルには敵わないと思うけど、世間がこんな状況なので、旅好きのケイさんを淡路島までお運びしてみようと思い選んでみました。

最近の日本酒は、ラベルがどんどんお洒落になってます。銘柄名が全部イタリア語のお酒もあったり。食の欧米化(ってもうだいぶ前からだけど)に合わせて、日本酒も変わってきたのだと思いますが、やっぱり、「都美人」みたいなクラシックな名前にはどこか惹かれてしまいます。


32.ふみーさん

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三井の寿 純米吟醸 山田錦 @福岡(醇酒)
ふみーさんと最初にお話したときにも話題になった、こちらのお酒。ドライさの中に見え隠れする旨味が印象的な辛口酒です。蔵元の名字は井上(!)、近くを流川(!!)が流れてて、桜並木が有名(!!!)
。日本酒度は甘辛度のおおよその目安になる指標で、それが+14。流川の背番号やないか…!という、スラダン好きのふみーさんのためにあるお酒です(でも実は、漫画がこちらの蔵をモデルにしたらしい)。

今回はじめて登場した福岡のお酒。北九州は米どころということもあって、焼酎文化と思いきや、実は日本酒造りもとても盛んです。九州の食がゆたかな理由がこれでわかりましたね(短絡的すぎる)。


33.野やぎさん

奥能登の白菊 純米 寧音 無濾過火入れ

奥能登の白菊 純米 寧音 @石川(醇酒)
ここの蔵元さんは本当にやさしいお酒を醸すんですが、寧音(ねね)の名前のとおり、ほんのりした甘さ漂うこれは格別です。野やぎさんの文章は、エッセイにしても小説にしても、どれもほっこりしていて、いつも必ずどこかで笑顔にしてくれる。人と人、笑顔と笑顔を繋ぎたいという蔵の想いを運んでくれているのかもと思ってしまうほどです。

日本酒の世界には「和醸良酒」という言葉があります。和の心は良酒を醸し、良酒は和の心を醸す。日本酒は人と人を繋ぐ。そう信じています。


34.ゆっこ|yukiko yamadaさん

みむろ杉 特別純米 辛口 露葉風 火入れ

みむろ杉 特別純米 露葉風 火入れ @奈良(醇酒)
このお酒を飲んだときに残した「やさしい木の温もりのような旨味が、常温で引き立つ」の手記。ゆっこさんの文章から伝わってくる、じんわりとした熱と似ています。そのままでもどこかあったくて、ずっと続いていくようなあったかさです。

日本酒は温めても美味しいお酒です。よく熱燗という言葉で知られますが、温度帯は色々あり、温めたものは人肌燗(35度)、ぬる燗(40度)、冷酒は花冷え(10度)、雪冷え(5度)といった感じ。ちなみに熱燗は50度のこと。5度ごとに変わる美しい表現と味わいに、日本酒の奥深さを感じます。


35.定家明香さん

郷乃誉 純米大吟醸

郷乃誉 純米大吟醸 @茨城(薫酒)
純米大吟醸しか造らない高品質へのこだわりは、美を追求しつづけた藤原定家のよう。何より最古の酒蔵(創業1141年)として、定家と同じ時代を生きた唯一の蔵だと思います。研ぐように洗練された果実様の味わいに、焼くや藻塩の身もこがれつつ(と思わず定家の歌を詠みたくなります)。

日本の酒蔵は、古いものは江戸時代やそれ以上前から続く老舗も多く、世界的に見て非常に貴重な長寿企業です。悲しいことにその数は年々減っていますが、日本酒は近年、海外での評価が高まって輸出量は右肩上がり。国内の盛り上がりももう一押ししたい。だからぼくは、今日も飲むのです(でも何故か妻にはこの論理が通用しない)。


36.コメノツブさん

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Ohmine Junmai 3grain 58 @山口(薫酒)
米の粒をここまでラベル全面に出しているお酒、多分ないです。ひんやり溶け込むフルーティな甘さと、繊細な酸が紡ぐ余韻が儚く美しい。微発泡、無濾過、生原酒、酸といったトレンドのどれとも違う、多様性ある日本酒新時代を静かに切り開いたお酒だと思います。

今の日本酒は、本当に色んな味があります。ここに紹介した中でも、甘酸っぱいものや、ドライで爽快なもの、こっくり時をゆるやかにしてくれるようなものなど様々。このnoteを読んでくれた方が、少しでも日本酒に興味を持って、自分の好きな一本を見つけてくれたら嬉しいなと思ってます。


37.森野きのこさん

琵琶のささ浪 Sasanami 純米吟醸 雄町 秋

琵琶のささ浪 Sasanami秋 @埼玉(醇酒)
穏やかな旨味と、引き際の良さに思わず舌鼓を打つ。さざ波のように静かに人から人へ繋がっていってほしいという蔵の想いは、きのこさんがご自身を称される「少動」にも、少しずつ輪を広げられようとする姿にも重なります。秋の色をまとったラベルの葉が、またいい雰囲気です。

冬に造られた日本酒の中で、ひと夏越して落ち着いたものは「ひやおろし」と呼ばれます。ちょうど今ぐらいの時期から酒屋の店頭を賑やかにしてくれる、秋の風物詩。蔵ごとに秋らしさの表現が違うのも面白いです。


38.ふみぐら社 / Yunde Ippei さん

秋鹿 山廃純米 山田錦 無濾過生原酒

秋鹿 山廃純米 山田錦 無濾過生原酒 @大阪(醇酒)
ボリュームたっぷりの厚い旨味が、お燗で映える芸術的なお酒です。大阪の秘境、能勢で行われる有機の米作りから一貫した酒造りは、まさに大地を醸すかのよう。土のそばで生きるふみぐらさんみたいです。でも山羊じゃなくて鹿ですみません。秋山羊?ちょっとよくわからない。

従来は、別の地域から取り寄せた酒米で仕込むのが一般的でしたが、蔵のある地元で、そこだからこそできる米作りに勤しむ蔵元さんが増えたという話を聞きます。一層ゆたかになる日本酒の地域性から、目が離せません。


39.kuuさん

小桜 夏純吟 中汲み

小桜 夏純吟 中汲み @山形(薫酒)
実はkuuさんとまだちゃんとお話したこともないのに、勝手にこんなお届け物をしてしまい恐縮です…。残ってた日本酒メモで唯一「小さく花開く酸味がかわいい」とかわいさにコメントをしていて、さくらんぼの聖地の山形、しかも銘柄名に桜は偶然とは思えず。かわいく、美味しい夏酒です。

中汲みは、日本酒製造工程の終盤の「搾り」において、ちょうど搾りの真ん中あたりだけを集めたもの。何かを絞ったときの最初と最後って、味が渋かったり苦かったりしますよね。それがない、一番きれいなところです。一番贅沢な部分で、透明感も抜群。そんな違いも楽しめたりします。


40.碧月はるさん

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伝心 春 純米吟醸 無濾過生酒 @福井(薫酒)
冷やして凛とした甘み引き立ち、すっきりとした余韻は清々しく心地良い。読む人の心の深くに届く文章を書かれるはるさんに、伝心の名前はぴったりと思いました。はるさんの春酒に乾杯!…と思ったら、写真左側で我が家のエアコンのリモコンが壮絶な邪魔をしていて本当に申し訳ないです…。

日本酒には、四季折々の顔があります。手前味噌で恐縮ですが、前にそのあたりを書いたnoteがあったので、こちらに貼っておきますね。今だからこそ楽しめる味わいって、本当はすごく儚いものなのかもしれません。


41.ゆのめともふみさん


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薩州正宗 純米 @鹿児島(醇酒)
焼酎優勢な鹿児島県で醸される唯一の清酒。40年の時を超えて再開した日本酒造りは、ゆのめさんが奥様と種子島に渡った挑戦を彷彿とさせます。お酒は、遠く離れた人と人を繋ぐ。まさに和醸良酒。酒蔵の心意気に想いを馳せつつ、頑張る人に乾杯したくなるお酒です。

以前、仕事で九州に行ったとき、ここの蔵に立ち寄ろうとしたのですが、諸事情あって断念。蔵で味わうお酒は、一味も二味も違う。ここに限らず、旅行先で酒蔵を見つけたら立ち寄ってみると楽しいと思います。


42.七屋 糸さん

南部美人 あわさけ スパークリング

南部美人 あわさけ スパークリング @岩手(薫酒)
繊細な泡がほろほろと口の中で弾けては儚く消える、日本酒のシャンパン。七屋さんの小説が描かれる人の心の機微、どこか物寂しく手の届かない想いを感じます。七屋さんの言葉だからこそ見える世界。酒米が岩手県地産の「ぎんおとめ」という女性らしい名前なのも偶然とは思えません。

スパークリング日本酒と通称されるものの中で、屈指のクオリティを誇る高級酒。「儚さ」はぼくにとって日本酒の重要なキーワードでして。お値段もそれなりにしますが、立ち上る泡のきめ細やかさが芸術的で、お酒呑みつつ息を呑んでしまいます。


43.かのうおりがみ|コンテンツ企画とSEOさん

天明 さらさら純米

天明 さらさら純米 lovely summer @福島(薫酒)
奥様との出逢いを綴ったnoteが忘れられず、愛を酒名に冠したこちらをお届けします。"lovely"と名前にあるので甘酸っぱさで来るかと思いきや、口当たりはふわりとソフトで、さらりとした甘みに続く、きっちり潔い後口。「さらさら純米」という名前がまさにしっくりきます。

かのうさんといえば、折り紙。noteを始めた頃に折り紙を通じてお話させていただいたのを忘れません。実はこの銘柄(天明)には、 origami大吟醸なる別商品があるようです…!いつか機会があったらぜひ。


44.猫野サラさん

千代むすび 純米吟醸 強力

千代むすび 純米吟醸 強力 @鳥取(醇酒)
強力は酒米の名前。サラさんがお住まいの岡山のお隣、鳥取で醸される山陰らしい、どっしり濃醇な辛口酒です。この夏のふみぐら小品で多くの人を結んでくださったのが忘れられず、この銘柄がぴったりだなと。お酒好きのサラさんのお口に、この濃い辛口酒が合うことを願って。

千代むすびは、水木しげるさんが手掛けたラベルの鬼太郎シリーズもあり、漫画にも縁が深いお酒です。生憎飲んだことがないので、上では看板酒の純米吟醸 強力をお届けしましたが、いつか鬼太郎で乾杯しましょうね。


45.長谷川 晃子 / happiness music stさん

蔵粋 特別純米 アマデウス

蔵粋 特別純米 アマデウス @福島(醇酒)
モーツァルトを聴かせて醸された日本酒として、その名を馳せる喜多方の銘酒です。そんなお酒ある!?という衝撃がすごい。ラベルに楽譜書いてあるし。晃子さんのようなソプラノのヴォーカルの方なら、これじゃなくて、同じ銘柄のもっとキラキラした大吟醸かな…と思いつつ、飲んだことのあるこちらをお届けします。

蔵粋で「くらしっく」と読ませるのが、文字どおり粋。音楽とお酒が繋がるなんて、想像もしたことなかった。日本酒に限らないとは思うのですが、こうやって文化が横断的に交わるのって、とても美しいですよね。noteの街で色々な方と出逢うと、いつも新しい発見があって楽しいです。


あとがき

勢いで始めた「いいね飲み」の旅も、ようやくゴール目前。お付き合いくださりありがとうございました。勝手なことをたくさん申し上げましたが、こんな日本酒あるんだ!と思ってもらえたら、それだけで感無量です。

最後にちょっとだけ、日本酒選びに関するお話を。

冒頭にも書いた「爽酒」「薫酒」「醇酒」「熟酒」の4ジャンル。大まかに各ジャンルの味わいを紹介すると、次のような感じです。

爽酒:いわゆる淡麗辛口で、すっきり飲みやすい。
薫酒:華やかな香り漂い、フルーティな甘みを感じる。
醇酒:しっかりした味付けの和食に合う、いわゆる日本酒らしい味。
熟酒:スパイス、ナッツ、蜜などが合わさった濃醇で複雑な味。

上の45本に添えたジャンルはぼくの主観によるものなので、当てはまらないものもあると思います。口に含んだときの重さや後口のすっきりした感じなどは、温度や酒器によっても様々。合わせる料理によっても違います。本当は日本酒ってもっと奥深くて、色んな種類があります。

…なんて言われたら、困ると思うんです。

奥深いのはいいけど、そこに足を踏み入れてみたい人を躊躇させてしまっては意味がない。上の4ジャンルの分け方には賛否両論ありそうですが、わかりやすく、初めて日本酒を選ぶ人にとっては心強い目印になるんじゃないかなと思っています(わかりやすさと日本酒は、ここで繋がるな…。あっ、ひとりごとです)。

爽酒や薫酒は、日本酒に慣れてない方にも飲みやすいものが多く、まずはそこから試してみるのがおすすめです。でもお肉料理や中華料理と合わせるなら、濃いめの醇酒にチャレンジしてみるのもアリ。チョコレートやドライフルーツと一緒になら、熟酒もひと口。そんな風に少しずつ試していく中で、自分の好きなものが見つかるかもしれません。

悩んだら、お店の人に聞くのが一番です。喜んで教えてくれると思います。味わいを伝えなくても大丈夫。「こんな料理と一緒に飲むお酒がほしい」「こんな雰囲気で飲むお酒ありますか?」といった感じでOKです。むしろぼくはその方が伝わるんじゃないかなと思ってます。

ぼくは一介の飲み手ですが、日本酒を心から愛しています。深遠な歴史と豊かな文化を兼ね備え、多彩な味わいで食を懐深く包み込む。惹き付けるに余りあるその魅力は、12年間ぼくを虜にし続けました。きっとこれからも変わらず、いや、今まで以上にのめりこんでいく気がしています。

それは、今回皆さんに日本酒をお届けする中で、日本酒が人と人とを繋いでくれるものだと改めて知ったから。ビールもワインも好きですが、やっぱり、日本の地域・歴史・文化に根差したこのお酒には、特別なメッセージを感じるんです。そしてそれは、飲み手一人ひとりの何かに重なり、お互いを結ぶ線の存在を確かにしながら、輪となって広がっていきます。

世間がこの状況で、今、日本酒に限らず多くのお酒が日の目を浴びる機会を失っています。頑張って家飲みで耐えるけれど、それはそれで楽しいけれど、やっぱり誰かと語らいながら、楽しいお酒を飲みたい。

まだ誰とも乾杯したことがないのに、お酒だけ届けてしまいました。いつか、皆さんと盃を交わせる日が来ることを心から祈っています。そのときまでどうか、お元気で。





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