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短歌

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#現代口語短歌

短歌単作七首「虚無虚無の実」

短歌単作七首「虚無虚無の実」

身も蓋もない話だよ人生は
「絶望するな」だが生き急げ

深海に沈んだ日でも青空を
見つけるように生きていこうね

夢何処、人生(みち)に迷って手をあげた
我をこのまま運べタクシー

何事もなかったようにも生きていく
ことはできるよ?できる、だけどさ

くだらない全部が全部くだらないの中に
譲れぬ確かなものが

ひとひらの言葉をポッケで握ってる
今日を生き抜くお守りとして

虚無虚無の実でも食べたか

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連作短歌「92年夏。六歳」

連作短歌「92年夏。六歳」

コマネチで泣くほど笑った父がいた
蝉も泣いてた初夏の病棟

父さんが少しのあいだ留守にする
家はまかせて長男だもん

病棟の裏手の森にキジムナー
いるらしいんだ僕とよく似た

クワガタを集めるために蜂蜜を
差し入れみたいに抱えた七月

大声で笑って叫んで怒ってる
廊下のおじさんたちが朝から

ジャッキーチェンみたいに木登り
落っこちて心配される病院の庭

ママとパパどっちが好きと言われても
ママが

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自選短歌「深海の夢」

自選短歌「深海の夢」

君といた記憶に潜る深海で
溺れぬように泳がぬように

毎日が漂うだけの夜の海
夢の波間に星を仰いで

波風にさらされたのは息継ぎを
諦めらきれず手を伸ばすから

月明かり滲む海原に海月(くらげ)が
ゆらりゆれてるきらりとひかり

立ちどまり動けないまま若さだけ
絡めとられる浦島太郎

シーラカンス「本当」のこと
知り得たかい 心の海底遺跡で君は

ゆるやかに呼吸を止めておだやかに
泡(あぶく)とな

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自選短歌・其の三 「黄昏をとめたい」

自選短歌・其の三 「黄昏をとめたい」

月曜の朝からぜんぶやめちまえ
それができたら誰も死なない

朝晩と中島みゆきで励まされ
ユーミン聴いて泣いてる馬鹿だ

「難しい問題ですね」そうですね
予定調和が居心地いいね

チラシだけやたら過剰な映画見て
B級の意味噛み締めている

「ショーシャンクの空に」を見てから思うこと
ビールの美味さはロケーションだと

西洋人のフリした東洋人たちが
大口開けてチップをねだる

「正解」があちらこちらに

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