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読んだ本についてあれこれ語るマガジン

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#文学

紫式部 『謹訳「源氏物語1」』(1008年頃)

紫式部 『謹訳「源氏物語1」』(1008年頃)

リンボウ先生の「謹訳」はとても自然な感じが読みやすくていい。紫式部の原文がどういうものなのか、というのはわからないのだが、まずは全文を通読したい、という人にはいいと思う。

最初のほうは物語の展開がゆるやかで、これが平安時代の時間間隔なのだろうかと思っていたが、夕顔という女性が何者かに呪い殺されるあたりから展開が面白くなる。

1巻は、源氏の誕生(桐壺)から18歳(若紫)まで。
絶世の美男子として

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シェイクスピア「ヴェニスの商人」(1594年から1597年)

シェイクスピア「ヴェニスの商人」(1594年から1597年)

本編の面白さもさることながら、解説も含めて読むと、シェイクスピア作品がどうして現代にいたるまでの400年という時の流れで生き残ってきたのか、というのがなんとなく理解できた気がしてよかった。

タイトルになっている「ヴェニスの商人」はアントニオという男のこと。
彼は、友人のバサーニオのために借金をする。金を貸してくれたのは、ユダヤ人の金貸しであるシャイロック。借金をする際に、返せなかったら、自分の肉

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シェイクスピア「ジュリアス・シーザー」(1599年)

シェイクスピア「ジュリアス・シーザー」(1599年)

シェイクスピア作品の中ではさほど有名ではない印象だが、なかなか面白い。

シェイクスピアはなぜジュリアス・シーザーを取り上げたのだろうか、と不思議に思っていたのだが、wikipediaに回答がそのまま書いてあった。

タイトルは「ジュリアス・シーザー」だが、実際の主人公はブルータスだ。彼が同僚のキャシアスに説得されてシーザーを暗殺、その後の顛末が描かれる。シーザーは比較的早い段階で暗殺される。しか

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カフカ「審判」(1915年)

カフカ「審判」(1915年)

不条理というカテゴリーが適切かどうかという疑問はあるけれど、やはりカフカはおもしろい。

カフカ本人がモデルであろうKが、ある日突然訴訟に巻き込まれる。わけのわからないまま、Kは現実に対応しようとするが、そもそも理屈のわからないではじまった事態に、現実的に対応できるわけもない。

大雑把な骨組みをみると、これは「変身」や「城」にも似た構造なのがわかる。
カフカにとって現実は得体の知れない不気味なも

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