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月の詩

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月ごとに季節の詩を書いています
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記事一覧

詩『July』

大人になってからは
夏の始まりをいつも見逃している
夏が待ち遠しいと思う気持ちを
もう忘れてしまった
宿題を放り出して夏だけを楽しむバケーションは二度と繰り返せない
クーラーの効いた部屋で
暇を持て余している私
あの頃の夏へ、
まだ何も知らなかった夏へと思いを馳せる
今年の夏はもう既に始まっているのだろうか?

詩『June』

君の肩を守っている
雨に濡れないように、包み込む

前の雨の日、君は僕を置いていった
僕はここにいるよ、気づいて
その声は届かなかったみたい

君は僕を置いていった
ずっとずっと待っていた

毎日この場所で行き交う人を眺めていた

雨が止んで、晴れて、また雨が降っても
僕は君がここへ戻ってくるのを待ち続けていた

待たされるのは別に苦ではないよ
ずっと君のことを考えていられるから
絶対君は迎えに来

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詩『May』

空白の五月、
病む五月、
変わらない五月、
変わる五月、
見て見ぬふり五月。

あの子の五月、
気づく五月、
長い五月、
短い五月、
どうしようもない五月。

夜の五月、
溢れる五月、
寂しい五月、
満たされる五月、
風通る五月、
もうすぐ六月、
 
 
 
 

詩『April』

久しぶり。
この風、この匂いがやっぱりくすぐったくて、懐かしくって。
ずっと前から散りばめておいたハートから芽が出て花が咲いた。
この花を見るために季節はきっと回るのね。
今、ようやく気づいたわ。
何も身に纏っていない裸の私が一番きれいなの。
きっとあなたの目には私の周りに蝶がひらりと舞っているように映るのでしょうね。
その蝶はどんな色をしているのだろう。
どんな花の蜜を吸うのだろう。
どこからや

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詩『March』

 

今日から私、別の人になるの。
ほら、よく見てみて。
違いが一目で分かるでしょう?
私の周りを彩るハートたち。
彼女たちが今の自分の背中を強く押す。
頭の高い位置でくぐっていたヘアゴムをスルりとほどく。
私の肩で力強く跳ねる子が一束。
それらを指先で絡ませて、遊ぶ。
運命の人はいないって悟った大人にはなりたくない。
何も考えずにやっぱり私は私のままでいたいから。
朝に見つけた道端で咲くあの花の

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詩『 February』

ひらひらと舞う星たち

今、この空間に必要なのは重力と純粋な心だけ

足元に散らばった、謙虚に光るオリオン座のかけらたちが真冬の硬い夜空を和らげていく

その場所から私の元へ再び舞ってくる無垢なままの原型をそっと手で掬ってみる

一万度の熱が二月の夜の冷気と絡まって心地よい暖かさを私に与えた

私は無数の破片の中から最も青く光るものを選び、こっそりコートの胸ポケットにしまい込んだ

長い長い家路を

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