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今日お前は、今までロクにサラダを食べてこなかった自分の人生を不思議な気持ちで振り返ることになる

梅雨入りしてからというもの、サラダばかり食べている。

レタス、きゅうり。
パプリカ、サラダ菜。
トマト、アボカド、モッツァレラチーズ
ベビーリーフ、スモークサーモン。
サラダホウレンソウ、ミニトマト、セロリ。
サニーレタス、豚バラ冷しゃぶ。
パイン、キウイ、バナナ、ヨーグルト。

サラダなんか、と昔は思っていた。
家でボソボソ生野菜なんか食ってられるか、と。

でも俺は間違っていた。

知らなかったんだ。俺はまったく知らなかった。
生の野菜を楽しむ術を身につければ、あらゆる面においてアドヴァンテージが得られるということを。
腸内環境、時間という有限のリソース、肌ツヤ、食そのものの楽しみ。
良きサラダはすべてをもたらしてくれるものなのだ。
ネギ玉牛丼のネギで野菜を摂っていると自分に言い聞かせていたあの頃は知らなかった。
生野菜の食べ方を知ることは、人生における勝利の方程式を知ることそのものなのだと。

丁寧な暮らし。オーガニック。美容。
そんな言葉に翻弄されて、野菜をお高くとまった連中の食べ物だなんて思わなくていい。
アカシアの木から葉を食いちぎるキリンのように、獲物の腕をむしりとるごとく、肉々しい緑葉や果実を噛み締めればいいんだ。
肉を食うように、米を食うように、野菜だって食えばいい。
野菜もまた生命であり、血肉の源であり、エネルギーの爆弾なのだから。

本日俺はこの記事で、世界一簡単な、誰にでも実践できるサラダの楽しみ方をレクチャーする。
それは頭を使うことのない、小難しい理屈を抜きにした、シンプルでソフィスティケートされたザ・グレートなソリューションだ。

この記事を読み終わったとき、なぜ今までサラダを食べてこなかったのかと、自分の人生を不思議な気持ちで振り返ることになるだろう。


サラダスピナーを買え

サラダスピナーという道具をご存知だろうか。

平たくいえば、水切りカゴ付きのボウルのような容器に野菜を入れて、ハンドルをぐるぐる回すと、水がさっぱり切れてシャキシャキのサラダが出来上がる、という代物だ。

生野菜を好かない人間のほとんどは、長いこと冷蔵庫に入りっぱなしでカラッカラに乾いた付け合わせのサラダとか、ろくに水切りしてないせいでせっかくの焙煎ごまドレッシングがしゃびっしゃびになったサラダとか、要するにまずいサラダしか食ってないからそういうことになってしまうのだ。
勘のいいやつはここまで読んだ内容から察してくれるはずだが、生野菜をうまく食べられるかどうかというのは水気の具合にものすごく左右される。
しなびていれば青臭さばかりが鼻について食欲を削がれるし、水気が残りすぎていればドレッシングの味わいが激減する。それに、びしゃびしゃのサラダなんて、一口食べるごとに水滴が飛び散って嫌な気持ちになるだろう。

嘘だと思ったなら、しっかり水を切ったレタスにシンプルな玉ねぎドレッシングをぶっかけて食らってみるといい。
レタスの甘さ、みずみずしさ、ほどよく絡む甘じょっぱいドレッシングのコク。
ああオレ最近まるでロクなサラダ食ってなかったんだな、と気づけばしめたものだ。
あるべきサラダの姿を胸に刻んだらやることは一つ。サラダスピナーを買うことだ。

意識の高い専業主婦が便利グッズを買い集めてはシンク下の棚の肥やしを増やしていく、そんなだらしない生き様を軽蔑するあまり、便利グッズを本能的に忌避する気持ちは俺にもわからないでもない。
しかしだ、サラダスピナーだけは、サラダスピナーのことだけは、頼むから信じてやってほしい。
本当に有能なのだ。コストパフォーマンスの鬼だ。並みのキッチングッズじゃ太刀打ちできない最高の初期投資になる。
生クリームを毎回泡立て器でせっせとかき混ぜては翌日筋肉痛に苦しんでいる俺でも、まともなコンロとサラダスピナーだけは充実した自炊に欠かせないと信じている。

さらに大変ありがたいことに、サラダスピナーは3COINSで買えてしまう。330円だ。330円で明日から最高のサラダを食えるようになると考えたら、あまりに安い買い物じゃないか。
ストッキング1枚と同じ値段で、毎日うまいサラダを食うためのインフラストラクチャーが整ってしまうんだ。明日には伝線しているかもしれないストッキング1枚と同じ値段で。どうでもいいんだ、ストッキングは別に。とにかくサラダスピナーを買ってほしい。

3COINSでなくたってかまわない。別に東急ハンズでもLOFTでも。そこは読者諸氏の一存に任せる。

ドレッシングで差をつけろ

普段からコンビニ飯や牛丼ばっかり食べているのに、どうして「素材の味」なんて言葉に振り回される必要があるのか。
誰しもがそこで勝負しなきゃいけない理由なんてない。俺たちは俺たちなりのやり方で勝負しようじゃないか。
つまりはドレッシングだ。そう、いいドレッシングを買って差をつけるのだ。

プライベートブランドのやつなんか使わないで、ちょっとお金を出して叙々苑ドレッシングとかを使おう。野菜はもう安いやつでいい。俺たちのフィールドはそっちじゃない、まず第一にドレッシングに金をかけるべきだ。
ちなみに生で食べる野菜だけはさすがに半額のご奉仕品じゃないほうがいい。人生においてケチるところは、絶対にそこじゃない。

そう、ドレッシングだ。いいドレッシングを買うべきだという話だ。
そりゃあ、スーパーの棚の最上段に鎮座まします500円超えの小瓶たちに恐れおののく気持ちはわかる。けれど、ドレッシングには人間の叡智が詰まっているのだ。ありふれたトマトやきゅうりをご馳走に変えるための、あらゆる工夫がそこにはある。
とりわけ、名店と称えられる店で使われるドレッシングにハズレはない。ドレッシングは店の顔だ。お客がその店で最初に口にするものと言ったら何だ? サラダじゃないか。ドレッシングじゃないか。
お客が最初に口にするものに対して手を抜く「名店」がいったいどこにあるだろう?

素材の味の違いを楽しむ。確かにそれも素敵なことだろう。
けれども、最初からそんな高いハードルに挑みかかる必要はないんだ。
気負わずにまずは一番わかりやすいところから攻めたらいい。
野菜を美味く食べるための工夫そのものであるところのドレッシングに金をかけ、そのわかりやすい違いを楽しむところから始めていくべきなのだ。


数にこだわるな

デパ地下のハイソなお惣菜屋で売られているサラダや、インスタ映えするカッフェのサラダに引きずられて、サラダたるもの具材たっぷりでなくてはならぬという思い込みの罠に囚われている人も少なくないだろう。

たしかに栄養価を考えれば、具材は多いに越したことはない。極論を言えば、一皿で一日分の栄養を摂りきるサラダを作ることだってできてしまう。
「多いは正義」であることを否定するのは難しい。まさに数の暴力だ。

しかしだからと言って、「〇〇種類のお野菜」に縛られそこにこだわる必要など一切ない。
たしかに栄養は大切だが、サラダの本質は野菜とドレッシングのコンビネーションを楽しむことにあると信じてやまない立場からすれば、品目の数など二の次、三の次なのだ。
適当な季節の野菜を2、3とうまいドレッシング。楽しむだけならこれで十分すぎるくらいだ。
栄養なんて他の食事とのトータルで考えればいい。
サラダ食ったら一日分の野菜飲んじゃいけないなんて誰が決めた? フルーツグラノーラを食べたっていいんだ。

サラダに限らず何にだって言える話だが、完璧を追い求めるあまりハードルを闇雲に上げてしまうなんていうのは実にバカげている。

たまたま安く売っている野菜やそのときその日に食べたい野菜、それらを適当に組み合わせるだけで全然かまわないんだ。
旬の野菜を気の赴くまま食べる、それだけでも食の楽しみとしては十分に有意義だということを覚えていて損はない。
ちなみに旬の野菜はうまいだけでなく栄養価も高い。夏になって丸々肥え太ったトマトの旨さといったら! 俺は夏以外ロクにトマトなんか食べない人間だが、梅雨入りを迎えてジトッとした暑さが続くようになって以来、2日に1回はトマトを食べなきゃやってられない身体になってしまったくらいだ。

なお、定番にも思えるトマトときゅうりのセットは食べ合わせがあまり良くないので注意されたし。きゅうりがトマトのビタミンCを酸化(要は台無しにしてしまうってこと)させてしまい、栄養が損なわれるというのだ。
この弊害を緩和するのにはドレッシングやマヨネーズが有用らしい。栄養価を重んずるなら心がけるといいだろう。

考えすぎるのもどうかと思うが、頭の片隅に入れておくぶんには損はあるまい。

おわりに

この記事を書こうと思ったのはほかでもない、買ったばかりのサラダスピナーの良さを世に伝えたかったからだ。
あれを買って以来ほんとうに毎日のごとくサラダを食べている。3〜4種類の具材を気の赴くままブチ込み、パッケージからして旨そうと判断してスーパーで買ったドレッシングのコレクションから選んだ一品を濃い目にかけてかっ食らう。洗うべき食器なども大して発生しない。ものによっては包丁やまな板を使う必要さえない。
サラダ菜を手でちぎって洗ったミニトマトをポンポンっと放り込めば、立派な一皿の出来上がりじゃあないか。
サラダとはげに素晴らしき食の楽しみ方であるということに、俺は気づいてしまったのだ。

少なくとも夏が終わるまで、俺はサラダを食べつづけるだろう。
今日はせっかくの日曜日、いつもより少し多めに具材を盛ってやろう。たまには袋入りのナッツをぶち込んでやるのも悪くないかもしれない。

さぁ、君はどうする?


なお、本記事は下記の記事へのリスペクトを込めつつ書かれたものです。


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