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恋文

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いつか思いが届きますように
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#創作大賞2023

記憶の海を泳ぐ①9月の再開

記憶の海を泳ぐ①9月の再開

突然の不意打ちに、僕は意識を失いそうになった。

「大丈夫かよ、お前。そういや大恋愛だったもんな。」
宮本は8年ぶりに会ったボクを見て、心配そうに微笑んだ。
「お前あれから引っ越して転職しちゃったし、全然連絡もよこさないからさ。お前の方が死んじゃったんじゃないのって、時々冗談いったりしてさ。」
相変わらず屈託のない笑顔だった。爽やかな笑顔というのは年を取らないようだ。

「で、本当なのか。それって

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記憶の海を泳ぐ②紡ぐ糸

記憶の海を泳ぐ②紡ぐ糸

微かな記憶を思い起こす。そうだ、コンビニ。和美の家はコンビニの駐車場の近くだった。ボクはスマホの地図アプリを立ち上げて、市内のコンビニを探した。記憶とすり合わせて、それらしい数件を当たってみることにした。駐車場にバイクを止めて周囲を歩き回る。申し訳程度に店で缶コーヒーや水を買ってみたが、3件目にはもう買う物がなくなった。

家並みも街並みもすっかり変わっている。ふと目が合った店のガラスに映ったのは

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記憶の海を泳ぐ③過去からの手紙

記憶の海を泳ぐ③過去からの手紙

聡さん

普段は聡だったけど、手紙だから聡さんにします。
なんかかしこまっておかしいね。

聡、元気にしてる?
落ち込んでない?。さっさと立ち直ってくれたらいいのに。私は元気だよ。すっかり痩せちゃって、髪も抜けちゃって、お肌もボロボロで、もうおばあちゃんみたい。だから聡には会いたいけど、私のこと見て欲しくないかな。

宮本君がね、こないだ面会に来てくれたんだ。亜紀も一緒だった。スゴく幸せそうで、私

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