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推しと推し、燃ゆ

1週間前に、推し(SixTONES)が載っている雑誌と「推し、燃ゆ」を購入しました。

そして、2日でイッキに読み切りました。

せっかくなので、感想を残しておこうと思います。

この先ネタバレありの部分は引用もあるので、作品の内容を知りたくない方は読まない方がいいと思います!「最後に」からは詳しい内容には触れずに感想を書いているので、ぜひいろんな方に読んでいただけたらと思います。(目次から飛べます!)



宇佐見りんさんの本作が、芥川賞を受賞してからずっと、気になっていたこの作品。1月に書いたこの記事でも「推し、燃ゆ」について触れていました。

読み終わった全体を通しての感想としては、"すっごくよくわかる描写が多々あるけど、核心にあるテーマは一度読んだだけじゃ理解しきれない。"って感じですね。




ネタバレあり

すっごくよくわかる描写が多々あるっていうのは例えば、

常に平等で相互的な関係を目指している人たちは、そのバランスが崩れた一方的な関係性を不健康だという。[中略] 見返りを求めているわけでもないのに、勝手にみじめだと言われるとうんざりする。あたしは推しの存在を愛でること自体が幸せなわけで、それはそれで成立するんだからとやかく言わないでほしい。             ー「推し、燃ゆ 61.62頁より」

わたし自身が直接、「追っかけなんかやめなよ」みたいなことを言われたことはありませんが、世間的にそういう意見はあると思っています。

いい年して現実世界から目を背けている、とか。

もちろん推しに恋愛感情を持つ人もいると思うし、それはそれでいいと思うけど、本当に"私は推しの存在を愛でること自体が幸せなわけで、それはそれで成立するんだからとやかく言わないでほしい。"これが全て。


そしてこれも作品の中で上手に言語化されていて、

アイドルとのかかわり方は十人十色で、推しのすべての行動を信奉する人もいれば、善し悪しがわからないとファンとは言えないと批評する人もいる。推しを恋愛的に好きで作品には興味がない人、そういった感情はないが推しにリプライを送るなど積極的に触れ合う人、逆に作品だけが好きでスキャンダルなどに一切興味を示さない人、お金を使うことに集中する人、ファン同士の交流が好きな人。         ー「推し、燃ゆ 17.18頁より」

日々、ファンの人たちのInstagramの投稿やYouTubeのコメントを見ていると、本当に関わり方は人それぞれだと実感します。

同時にこの一節を読んで、わたしはなんで今推しを推しているんだろうと考えさせられました。ちなみに答えはまだ出ていません。


ただ、わりとこの本の主人公"あかり"とスタンスは似ているかなと思いました。

推しが実際あたしを友好的に見てくれるかなんてわからないし、あたしだって、推しの近くにずっといて楽しいかと言われればまた別な気がする。もちろん、握手会で数秒言葉をかわすのなら爆発するほどテンション上がるけど。                   ー「推し、燃ゆ 62頁より」

わたしだったら可能なら、好きな人(推し)には自分のことを友好的に見てもらいたいけど・・・でも、"推しの近くにずっといて楽しいか"どうかが別問題なのはとってもよく分かる。きっと見たくない/見られたくない姿を見ることになるだろうし、近くに行きすぎると嫌いになってしまうかもしれない。

だけど、コンサートで会えるのは何よりも活力になる。

まさにまさにあかりの言うとおり。



あとはちょっとクスッとしたパートがこちら。

推しは、いつか引退したり、卒業したり、あるいはつかまったりして急にいなくなる。バンドメンバーなんかになると突然亡くなったり失踪することもあるらしい。             ー「推し、燃ゆ 35.36頁より」

わたしが応援していた人たちじゃないけど、世の中で引退・卒業したアイドルや芸能人をたくさん知っているし、捕まった人もいた。バンドのことは詳しくないけど、最近も一時期連絡が取れなくなっていた、とあるバンドメンバーのニュースを見たし、なんとなく、自分で命を絶ってしまう人がいるイメージもある。

全体的にこの部分、全くもってめでたい話題じゃないけど、でもその一般論というかイメージを"バンドメンバーなんかになると"という言い回しでうまく表しているところに少し笑ってしまいました。







最後に

現実世界ではうまく生きられないけど、推しを推す時は生きていると感じられてイキイキできるあかり。そんなあかりみたいな人が、程度の差はあれ、今の世の中にはたっっっっっくさんいると思います。きっとわたしもそのうちの1人。

そんな現代を小説の世界で詳細に表現していて、「推し、燃ゆ」の帯の朝井リョウさんのコメント「未来の考古学者に見つけてほしい 時代を見事に活写した傑作」のまさにそれだと思いました。


あかりと友人のやり取りの言葉遣い、登場するSNS上のみんなの言い回し、全部が全部、現実そのままで。推しがいて、今この現実で生きているわたしにとっては簡単に情景を思い浮かべられるし、理解できるけど・・・

この本を、SNSと出会っていない小学生時代に読んでいたら、全く描写が理解できないと思うし、SNSとはあまり縁のない年配の方が読んでもすらすら読めないかもしれない。将来、「推し」とか「アイドル」とか「SNS」「言葉の使い方」が今と変わっていったら、それはそれで読みにくい作品になってしまうと思う。

今を生きる筆者が書いたこの作品を、今を生きるわたしたちが読んでいるから響くものがあるんだろうなと思いました。


本作を読んで、そんなことを考えると、今まで苦手意識を持っていた有名文学や現代文が、当時の社会を、その時代の表現の仕方で、いかに素晴らしく表現していたのかということが感じられて、そういう作品も読み返してみたくなりました。



ここ最近全力で推している人たちがいるこの時期に、この作品を読むことができてよかったと思います。

何十年後かにまたこの本を読んだ時に、自分がどんなことを思うのか・・・気になります。


アイドルに限らず、推しがいる方に、ぜひ読んでみてほしいです!



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わたしの推しへのいろいろな想いはこのマガジンにまとめてあるので、よかったらこちらも覗いてみてください!

わたしはなんで推しを推しているのか、まだわからないと書きましたが、自分なりに考察してみた記事はこちら↓




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