神田の喫茶店で味わうスローライフな「のりトースト」
ー ここにしかないモノに会いに行こう ー
「JR神田駅から徒歩2分」
私はGoogle map に表示される経路を頼りに真夏の神田を突き進んだ。
そして小道を歩いていると今日の目的地が突然現れた。
「珈琲専門店エース」
昔ながらの、という安直な言葉がぴったりで、朝ドラに出てきそう。
(あまちゃんで言うところの喫茶リアス、的な)
口コミがなかったら、「いつもだいたいサンマルクカフェ☆ガール」の私は絶対入っていなかっただろうなという外観。
思い切って重そうなドアを開ける。
ほのかに香るタバコの匂い
マスターと奥様(?)がこっちをきょとんと見ながら「いらっしゃいませ」と声をかけてくれる。
(たぶん私が緊張のあまり、入るかどうかを迷っている不審な女に見えたんだろう。)
消費型カフェの無機質で返事を求めない「いらっしゃいませー!」に慣れてしまった私はこういうときの適当な返事が思いつかず、
「こんにちは〜」
と一応つぶやいた。
(あってたのか?)
こういう時は堂々と突き進むのが正解なんだろうな。
(てか正解って何?)
店内は常連と思われるおじさま方で賑わっていた。
頼むのはもう「のりトースト」と決めている。
このお店の名物であり一番人気でもあるメニュー。
でもメニューを見てびっくり。
「のりトースト 200円」
や、安い、、。
(ドリンクも頼むでしょ?という無言の圧力を感じる。そりゃそうだ。)
ドリンクメニューを眺める。
このお店の名前は「珈琲専門店エース」だ。
なら珈琲にしよう。
って思ったけれど、さすが珈琲専門店、珈琲の種類が多すぎて決められない。
ホットコーヒー難しい。
結局暑さで思考回路がショートした私、
種類が1つしかないアイスコーヒーを頼む。
(なんてこった。)
店内を眺めていると、
程なくしてアイスコーヒーとのりトーストが運ばれてきた。
ミルクの小人感がプリティー。
ぱくっ
期待値高めののりトーストを意気揚々とつかんでついに口に入れた。
おお!おお!!おお!!!
のりトースト選手、私が高めに設定したハードルを難なく飛び越えてくれた!
(期待を超えられたときほど嬉しいことはない。)
まずバターのじゅわっと感がいい具合。
主役ののりも、あの薄さで抜群の存在感を放っているから不思議なものだ。
思ったより醤油の塩気が効いていた。
(しょっぱいものってレトロだなって思う。)
よくあるバター醤油味のお菓子の生ぬるいおいしさじゃなくて、わりとがつんとくる味。
薄切りのこんがりした食パンもこのがつんと作戦に一役買っている。
ふとコーヒーに目をやる。
六角形に角ばっているコーヒーグラスとゴロゴロ入った氷。
ミルクを注いだ私がストローをかき混ぜるたびに、氷がグラスの角にぶつかってカランコロンと涼しげな音を立てる。
うわ、夏だわ、、
と浸っていると、
隣のお客さんも同じことを思ったのだろう。
同じようにめっちゃカランコロンし始めたではないか。
ちょっと笑った。
マスターはエプロンもせずにワイシャツ姿でサンドウィッチをこしらえている。
終始猫背なのは、たぶん台と身長が合っていないからだろう。
1971年生まれだというこののりトーストは、チェーンの喫茶店が台頭する時代にオープンさせたこのお店が、他店との差別化を図るために作ったアイデンティティメニューらしい。
確かに他の喫茶店でのりトーストなんて見たことない。
このお店、令和ガールにはもう懐かしすぎますよ、、。
「昭和レトロ」と「大正ロマン」とかいうワードが頭の中をぐるぐるまわり出した。
ここにしかないメニューを作ること、か、。
お店づくりにオリジナリティって大事なんだなって再認識。
物もなんでも使い捨てが便利に感じる大量生産消費型社会を生きる令和ガールな私だし、喫茶店も今までは時間を潰すための適当な飲み物をしょうがなく飲むだけの場所として捉えていた私だけど、この社会と自分になんとか抗いながら、そこにしかないものを求めて、ひとつひとつスローに味わうように暮らしていきたいものだ、なんて思った。
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