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詩 『 遙かなる友人 』
他の星からきたという人に 会いました
喫茶店の奥の席にすわり
珈琲カップをもつ仕草など とても自然なものだから
彼が異星の人だなんて
まわりの人にはきっと 分からなかったと思います
.
「故郷の星を離れてから
いつのまにか ずいぶん時間がたってしまいました
一人っきりで宇宙空間を彷徨っていると
時間の感覚が よく分からなくなってしまうんです 」
.
珈琲のサイフォンが コポコ
詩 『拳中(こぶしのなかに)』
日蝕の空は
見たこともない色をしていた
太陽の七色は
灰色の奥に影を潜めたままうごめき
時ならぬ夕暮れに驚き騒ぐ
山のカラスとおなじ気持ちにさせる色だった
・
不安はいつだって白い糸のような根をはり
まるで非常食のような実を地中に育てる
寂しくなったら この実をお食べ と囁く声には
確かに聞きおぼえがある
そう思うのは 気のせいだろうか
詩 『H₂O+Na』
なみだの分子構造を教えてください
涙には
悲しみ以外の別解があることを知るために
酸素に手が二本あるのなら
わたしの内には
何兆もの手があることを知るために
.
世の中なんて
しょせん意味でしばられているじゃない
冷静なあなたはそう言うけれど
世の中を縛るロープの先は
遠く銀河の果てまでのびていて
無限の空中ブランコみたいに
大きく揺れるものなのよ