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子供が”プログラミング”を続けられるかどうかは大人次第だ。

 2020年、混乱の中、全国の小学校でプログラミングの授業が始まりました。プログラミング嫌いが増えるだけでは、と心配する声も当初ありましたが、プログラミングを経験した子供たちは「もっとやりたい」。
 でも継続できるかどうかは大人次第。無理強いする必要はまったくないけど、情報とチャンスは与えてあげてほしい。

プログラミングした子供の継続意欲高し

 小学校で開始されたプログラミング。昨年夏の時点ですでに半数の小学生は学校でプログラミングを経験済み。

プログラミングをすでに経験した小学生は約半数で、高学年になると6割に上っていた。

みんなのコード「プログラミング教育実態調査報告書」2021年11月14日公開

 そして学校でやった子供たちの8割以上は、継続してプログラミングを学びたいと思っていました。なんと。慣れないプログラミングやGIGAスクール端末に四苦八苦しながらも、学校の先生たちが、子供たちにとって楽しい授業を展開された成果ではないでしょうか。「もっとやりたい」こんな嬉しい言葉ないですね。

学校でプログラミング教育を経験した子供たちのほうが、未経験の子供たちよりもプログラミングに対してポジティブな印象を抱いている。授業で扱うことで「プログラミング嫌い」が増えるのではないかという懸念は当てはまらないと言える。

同上

 また、将来の夢に、IT系の職業と回答する子供も増えています。

小学生男子の将来の夢ランキングでは、「ゲームクリエイター(2位)」「エンジニア(5位)」「IT関係(9位)」がトップ10入り

「小学6年生の「将来就きたい職業」」2022年度版㈱クラレ

数年前まではネガティブな大人が多かった

 思い返せば、前職のシンクタンクにいた2014年から、プログラミング教育の調査には関わってきました。当時は保護者や学校関係者からの「義務教育ではやるべきではない」といった意見だけでなく、ITエンジニアや情報系の方々からも「学校で無理強いするとプログラミング嫌いが生まれるだけ」といった意見も耳にしていました。
 7年前に社内半公式ブログでプログラミング教育について書いたものがあります。この頃の雰囲気はまさにこんな感じ。(昔のものなので、文章の稚拙さはご容赦ください…。)

しかし、プログラミング教育の目的として高度IT人材育成が主眼だとすると、公教育で職能的な内容をそもそも教えるべきではないといった反発が強い。

プログラミング教育は「稼げない」イメージと戦え(2015年2月)

好意的なものには「IT人材育成やITリテラシの底上げにつながる」と期待するもの等があり、批判的なものには「小学校でプログラマーを育てるのか」「プログラミング嫌いが増えるだけではないか」等がある。ただし発言者によって思い描く「プログラミング教育」の姿に大きな違いがあるように思える。

同床異夢のプログラミング教育(2016年5月)

 そんな状況から、様々な経営者や教育事業者、学校関係者の方々が賢明に必要性を訴え続け、小中学校の中でプログラミングが扱われることになりました。心の底から応援していたので、ついに指導要領に入ることが決まった時はとても嬉しかったことを覚えています。

プログラミングで世界の解像度が上がった 

 私がプログラミング教育の普及を推していたのは、大学時代の個人的な経験からきています。

 研究の一環で大量のDNAデータを処理しなければならず、大学院1年目のときにプログラミングを勉強しました(PerlとC言語)。簡単なことしかやっていませんでしたが、ちょっとプログラミングをかじっただけで、世界の見え方がガラリと変わりました。
 (プログラミングの本質ではないのですが…)例えば、C言語では一番はじめに「Xには整数が入ります」「Yには文字列が入ります」といった「変数の宣言」を行います。これ、法律や契約書類の書式に似ています。「甲は~である」「乙は~である」みたいな。さらに、本文では、一般的な条件(~の場合は~します)を書いた後、例外処理(ただし~の場合は~になります)をするこや、処理を段階に分けて記述することなどもとても似ている。論文の書き方も共通するものがあります。なるほど、正確に物事を記述し、論理破綻を避けると似たような構造になるのか。など、他にも色々と気づくことがありました。
 腹落ちするポイントは人によって異なると思いますが、少なくとも私にとってはプログラミングを学ぶ過程で、論理的な考え方・記述のお作法を知れたことは、大きな学びとなりました。そしてもちろん、情報系・IT関連の知識と理解度もぐっと増すことに。「これは多くの人がやったほうがいいのでは」と思うに至りました。
 受動的なプログラミング経験でしたが、当時の感動に背を押され今もIT人材育成やプログラミング教育の普及に携わっています。気づけば10年。

2022年現在、子供たちはやる気。では大人は?

 冒頭で紹介したアンケート調査では、子供とセットで大人にも回答してもらいました。特に注目したいのはこちら。
「子供にプログラミング教育を学校外で学ばせたいか?」

ピンク:はい、グレー:どちらでもない、グリーン:いいえ
(出典:同上)

 ITへの関心が高い親の6割は子供にプログラミングを学ばせたい。一方で、関心が薄い親だと2割を切っています。3倍の開き。つまり、子供自身がプログラミングをもっと続けたい!と感じていても、保護者が首を縦に振るかどうかは、保護者のITリテラシーに大きく左右されるのです。
 もちろん、子供の学習機会が保護者の考え方に大きく影響されるのは、プログラミング教育に限りません。ただ、IT分野については変化が速いため、倫理観や価値観の差よりも情報不足ゆえのネガティブな反応となっている方が多い。
 アンケート調査と並行して、グループインタビューも実施しましたが、プログラミング教育にネガティブな保護者のグループに、プログラミング教育でどんな授業が展開されるかなど説明したところ、印象が変わったとお答えになる方が複数いらっしゃいました。(だいたいの方が、子供がPCに向かってひたすらコードを写経するイメージをもっていらっしゃいました。字面しか知らなければそう思いますよね。)

(実際の授業例を聞いて)印象が変わりました。…(中略)…従来の黒板・鉛筆・ノートの学習方法では算数が苦手だった子供でも、興味をひけたり理解しやすい可能性がありそうです。

同調査報告書)プログラミング教育にネガティブな小学校5年生の保護者の発言より

 子供たちが取り組んで、おもしろい!と感じているプログラミング、まずはどんなものなのか大人に知ってもらいたい。そしてぜひ自分でも体感してほしいと思っています。

ここからは参考情報…

①プログラミングコンテストはいい機会になりませんか?

第4回ジュニアプロコンin静岡

 静岡県庁が主催で、全国の小・中・高校生が応募できるプログラミングコンテストを開催しています。いままさに作品を募集中(締め切りは9/21(水))。

プログラミングが使われた作品ならばなんでも応募可能です。プログラミング言語不問!

 子供たちがどれだけ意欲的だったとしても、なにごとも継続するためには目標が必要です。学校でプログラミングをやって面白いとおもった子供たちには、このコンテストへ応募するこをと第一の目標として、夏休みにプログラミングに取り組んでくれたらなぁと思っています。
 この大会の最終審査会は11月3日に公開で行われます。

 最終審査に残った子供たちには、静岡市内の会場(グランシップ)で作品のプレゼンをしてもらいます。一般観覧可能なので、プログラミング教育ってどんなものか、ぜひ見に来てください。オンライン配信もあるので、YoutubeLiveでももちろん。
 気になった方は、ぜひこちらのコンテスト特設サイトを見てみてください。

②プログラミング教育実態調査報告書

本文で引用した「プログラミング教育実態調査報告書」のアンケート及びグループインタビューについて調査を担当しておりました。
 合計3000組の親子と2000人の教員へプログラミング教育について聞いたアンケート調査でした。同テーマの中では最大規模の調査だったかと思います。
 以下から、報告書のPDFをダウンロードできます。noteでは調査結果のごくごく一部にしか触れられておりませんので、ぜひ全体をご覧いただければと思います。

③静岡県内の大人向けの講座とか

 子ども向けだけでなく、大人向けにIT系の講座も開催しています。静岡県庁が主催。こちらのWEBサイトに、講座の開催情報をまとめているので、ぜひ。秋から始まる「社内高度AI人材育成講座」絶賛募集中です。


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