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創作の糧(皆様の気になった記事を紹介)

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ライティングや創作のヒントになるような記事。特に再読したい記事をスクラップしています。素晴らしい記事を集めています。ご参考になれば幸いです。
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2021年4月の記事一覧

古本は、タイムスリップだ。 

わたしは古本が好きです。 買う本のほとんどが、じつは古本。 安い、というが1番の理由です(^^) でも、もうひとつ理由があって、 古本は、タイムスリップだと思うんです。 深田久弥の「日本百名山」。 2年ほど前に古本屋で買いました。 後ろを見ると、消費税がない。 奥付を見てみましょう。 「昭和53年11月27日発行  昭和62年11月25日18刷」 消費税は平成元年に導入されたから、まだこの頃は表示されていないんですね。 初版は昭和39年ですが、著者の深田久弥は、百名

俳の森-俳論風エッセイ第21週

百四十一、信頼ということ俳句という短詩文学が成立する背景には、ことばに対する信頼、さらにいえば人に対する信頼が横たわっているように思います。その信頼の上にたって、提示という方法によって感動の場面を描くのが、写生の方法ではないかと思うのです。 遠山に日の当りたる枯野かな       高浜 虚子 この句は何を言っているのでしょうか。自分が感動した場面を提示しているだけで、何故感動したのかは言っていないように思われます。いや、言えないと言ったほうがいいのかもしれません。もし、それ

フキフキ。

小説を書き始めて三年目。去年の今頃は応募作品のことばかり毎日考え、仕事にも支障が出そうな時がありました(いや多分出てたと思います。スミマセン)。 重要 小説を書き、何かの賞に応募する際、とても大切になってくるポイントがあります。それを伝えたいと思います。 当たり前のことかもしれませんが、なんにでも守るべきルールがあります。私はその中で、二つの大きなミスをおかし、一次通過発表の間まで後悔と不安に苛まれました。 もっと本を読んでいれば自然と防げていたことでもあり、あらかじ

「なるほど、本か!」

 英国の代表的なロマン派詩人ワーズワース(William Wordsworth)の"The Tables Turned"(邦訳「発想の転換をこそ」)は、本を捨てて自然に出ようというメッセージを力いっぱいに押し出した痛快な詩である。岩波文庫の『イギリス名詩選』(平井正穂編)に収録されているこの詩に出会ったのは学生時代だったが、生活が苦しかったうえ、本分たる研究(の真似事)のための文献解読にも四苦八苦し、文字通り書物の海に圧倒されている若きわが身を朗らかに笑い飛ばしてくれたものだ

河合隼雄さんの『こころの処方箋』より(4)人間関係について

『こころの処方箋』をあちこち「つまみぐい」のように紹介するシリーズ4回目です。 今回は、人間関係を保つ会話について。 うそは常備薬 真実は劇薬 人間関係を維持することは、あんがい難しいことである。 (一般にひとは)適当なうそを上手に混じえて、人間関係を円滑にしている。しかし、そのような常備薬としての「うそ」も、いつもいつも用いていると、中毒症状がでてくる。 お世辞ばかりで、会話がしらじらしくなり、周りも不愉快になるというのです。 中毒症状に陥らぬためには、われわれ

自分の感受性くらい自分で守ればかものよ。

詩人茨木のり子氏の詩、「自分の感受性くらい」の一節。 自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ 初めてこの詩に触れたとき、衝撃を受けた。 自分が鈍くなっていくこと、 ぎすぎすしていくこと、 目指すところと離れていくこと、 すべてを「何か」のせいにするな、という詩。 厳しい… 厳しいけども。 納得。 人のせいにしたり、環境のせいにしたり、時代のせいにしたりして、「仕方がない」って言いがちだけれど。 何を「感じ」て、何を「感じない」かは、自分で選べることなんじゃないだ

『短歌タイムカプセル』東直子ほか編 (書肆侃侃房)

短歌のアンソロジー。ソフトカバーで軽くてカバンに入れやすい本。値段も手ごろ。通勤電車の中で読んだら良さそう。(わたしは通勤していないけどね。)わたしは俳句や短歌にはあまり縁がなくて、どちらかというと詩を読むことが多いのだが、このアンソロジーで短歌を集中的に読んでみて、五七五七七の短歌独特の言葉の空間がとても面白いと思った。狭すぎず、かといってそれほど広くないのでやっぱり不自由なのである。たくさん読んでいくうちに、自分でも詠めないものかと思ってしまう。でも五七五七七はけっこうき

【徒然草】よき細工は(第二百二十九段)

よき細工は、少し鈍き刀を使ふといふ。妙観が刀はいたく立たず。 【解釈】 腕のいい彫刻師などの職人は、少しだけ切れ味の鈍い刀を使うという。名工とされる妙観(みょうかん)の短刀も、それほどよく切れない。 全文がたったこれだけの、あっさりと短いトピックです。あまりに短い段なので、もう少し理由やエピソードも交えて解説してほしかったな、なんて言うのは野暮なのでしょうか。 なぜ「少し鈍い刀を使う」のか、さまざまな解釈があるようです。 利きすぎる腕をおさえるため。彫刻などは、削り

俳句のススメ③〜お名前俳句〜

今回は、少し変わり種の俳句(一部、短歌)についてです。 名付けて「お名前俳句」! 俳句の中に人の名前が隠れているよ〜、というものです。勝手に命名しました(笑) 例えば、私のTwitterのヘッダーにはこんな俳句が書いてあります。 ああ暇さ可笑しきことも無き春よ (ああひまさおかしきこともなきはるよ) 中ほどに、「正岡子規(まさおかしき)」という名前が隠れていますね。 ぱっと見では分からないんだけど、よーく見たら名前が隠れてる。それが「お名前俳句」です! いくつか作り

連作 残り香より(7)

お金では買えないものがほしくなることがこわくて香水を買う 何人もからだのなかにひとがいてうるさいうるさいゆるしてほしい いくつものことばをふるいにかけながら書いたメールがまだとどかない しゃりしゃりと砕かれてゆくリンゴたち真冬に生まれ落ちたこいびと 春を呼ぶこともできずに泣いているあの子の声を暗闇で聞く

誕生日を過ぎても(4/20の夢)

誕生日。かつてあんなに楽しみにしていた日が、なんとなく煩わしくなってしまったのはいつからか。 それでも、60の還暦を皮切りに、人は再び誕生日を祝い事にする。生まれ変わって0からやり直すのなら、100歳だってまだ40の壮年か。 そうなると、91で亡くなった祖父も、まだまだ人生やり直すことを考えても可笑しくはないのだ。例えば私(の夢)の中ででさえ。 朱色の折りたたみ傘で、雨の中を祖父母宅へ。傘を玄関でたたみながら、この傘は母が昔持ってたような傘だと思い出す。玄関に貼ってあったか

俳句で味はふホタルイカ

 富山方言で「まついか」と呼ばれ、滑川(なめりかわ)では1585年にすでに漁獲されていた記録が残るホタルイカがこの名を与えられたのは、1905年(明治38年)渡瀬庄三郎博士によってであり、東京大学教授だったこの学者の名前は学名Watacenia sintillansとなって記憶されている。ホタルイカによく似た小型のイカにホタルイカモドキがいるが、両者はともにツツイカ目ホタルイカモドキ科に属し、どういうわけか科名は偽者の方に即して付けられている。  産地として富山県が圧倒的に

けふもいちにち風のなかを歩いてきた——山頭火はどんな情景を詠んだのか

季節にあった季語を用いた俳句を紹介する連載「魂の俳句」。 第6回目は、「けふもいちにち風のなかを歩いてきた」(種田山頭火)。季語や意味、どんな情景が詠まれた句なのか、一緒に勉強していきましょう! そして、その俳句を題材にして、大学で書道を学んでいた花塚がかな作品(日本のかな文字を用いて書かれる書道のこと)を書きますので、そちらもお楽しみに! 文・書:花塚水結 放浪していた山頭火が詠んだ句 け(介)ふ(不)も一日風のなか(可)をあるいてき(支)た 俳句:けふもいちに

朝寝について

こんにちは。ictmと申します。 私は、春の季語である朝寝を知った時、 この感覚が季語になっているんだと驚きました。 今回は、角川学芸出版編『俳句歳時記第五版春』 角川学芸出版、2018年 88頁以下89頁に載っている 「朝寝」という季語について紹介いたします。 「春の朝は、心地よさからつい寝過ごしてしまう。 その眠たさが心地よく、寝床を離れがたい。」 次に「朝寝」という季語が 使われている俳句を紹介いたします。 「美しき眉をひそめて朝寝かな」 高浜虚子が作った句です