詩人としての樋口一葉
明治29年、森鷗外は、自らが主幹する雑誌「めざまし草」に連載された幸田露伴・齋藤緑雨との鼎談連載「三人冗語」において、樋口一葉を絶賛した。評して「われはたとえ世の人に一葉崇拝の嘲を受けんまでも、この人にまことの詩人といふ称をおくることを惜まざるなり」(世間の人々に一葉を崇拝していると嘲りを受けようとも、一葉に「まことの詩人」の称号を贈りたい)と述べている。一葉はそれを知った喜びを「うれしさは胸にみちて物いはんひまもなく」云々と素直に日記に書いており、また、一葉本人のみならず