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詩と詩人のはなし

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詩についての考え方や、詩人のエピソードをまとめてみました。
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記事一覧

赤い闇に詩が灯る

 週末に時間を見つけて、自宅で映画を観るようになった。今回はアマゾンプライムビデオで『赤…

垂直居士
1か月前
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詞華集と日本文化 —丸谷才一『日本文学史早わかり』を読む—

 本書において筆者はまず、文学を楽しむための道具とは何か、それはすなわち本であると説く。…

垂直居士
2か月前
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詩人としての樋口一葉

 明治29年、森鷗外は、自らが主幹する雑誌「めざまし草」に連載された幸田露伴・齋藤緑雨との…

垂直居士
3か月前
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詩と情熱によって世界を捉える

 以前からことあるごとに目にして気になっていた数学者・岡潔と批評家・小林秀雄の対談本『人…

垂直居士
6か月前
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詩人の寿命を燃やすこと

 国文学研究者の西郷信綱は、「詩人の命」(『古典の影』収録)という短文で、大伴旅人や山上…

垂直居士
9か月前
85

殻を破って迸る(松永伍一『農民詩紀行』を読む)

 松永伍一『農民詩紀行』(1974年 NHKブックス)は、今となってはほぼ半世紀前の著作であるし…

垂直居士
1年前
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孤独詩人とロマンの刻印(伊東静雄について)

 小川和佑『伊東静雄』(講談社現代新書)は古書店で何気なく手に取って購入したものだったが、思いのほか興味深い内容で、しかも新書という性質から一般人・初学者にもわかりやすく書かれていた。特に彼の人間関係に着目しながら、抜き書きを作りつつ読んだ。  昭和初期から戦後にかけて詩人として活動した伊東静雄(1906~1953年)は、長崎県諫早市の出身。旧制佐賀高等学校を経て京都大学文学部国文学科に進学し、在学中から詩を作り始める。後に友人関係となる蓮田善明とは同じ九州の出身であって、

太宰治と鴨長明と蓮田善明

 手元に一冊の古書がある。  昭和18年9月に刊行された太宰治の『右大臣実朝』。大阪にある錦…

垂直居士
2年前
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忘れられた詩人

 明治中期に奇行の詩人がいた。ある時その詩人が友人と一緒に酒を飲んでいたとき、自分の盃が…

垂直居士
3年前
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垂直に生き、論理で乗り越えよ。

 一人の学徒として、学問に向き合う態度はいかにあるべきか。  人それぞれの考え方はあると…

垂直居士
3年前
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そして人は詩に立ち戻る

 いつも、詩を書きたいと思いながら文章を連ねている。  しかし、どういうわけか形式として…

垂直居士
3年前
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詩人の友情

 萩原朔太郎に「本質的な文学者」という短文がある。これは梶井基次郎(1901~1932年)の文学…

垂直居士
3年前
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大人げのない文人たち

 文章が人格をあらわすとすれば、書き表したものは年相応の経験が反映されて然るべきだ。若書…

垂直居士
3年前
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「なるほど、本か!」

 英国の代表的なロマン派詩人ワーズワース(William Wordsworth)の"The Tables Turned"(邦訳「発想の転換をこそ」)は、本を捨てて自然に出ようというメッセージを力いっぱいに押し出した痛快な詩である。岩波文庫の『イギリス名詩選』(平井正穂編)に収録されているこの詩に出会ったのは学生時代だったが、生活が苦しかったうえ、本分たる研究(の真似事)のための文献解読にも四苦八苦し、文字通り書物の海に圧倒されている若きわが身を朗らかに笑い飛ばしてくれたものだ