K.S

獣医師になって35年、動物病院院長として30年、犬猫を中心に診療をしてきた。 あるとき…

K.S

獣医師になって35年、動物病院院長として30年、犬猫を中心に診療をしてきた。 あるときから身体に異変を感じ、診断されたのは肝内胆管癌ステージⅣ、すでに骨転移が見られる進行性末期がん。 5年生存率はほぼ0%。 飼い猫「マキ」「コソ」の眼を通して飼い主院長の闘病生活を綴る

最近の記事

確定診断(病名決定)

消化器内科(肝臓チーム)による肝生検検査の結果が、ついにきた。検査入院してから三週間後のことだ。肝臓チームの主治医から直接電話がきた。 「検査の結果、肝臓癌ではなく肝内胆管癌です。」CT検査やエコー検査でどうも肝臓癌では無いような像だということは聞いていたので、予想はしていたが「肝内胆管癌」は馴染みのない癌である。犬や猫でまずみられない癌である。膵臓癌や肝臓癌はまれに見られるが胆管系の癌は聞かない。犬や猫では胆嚢炎や胆管炎はたまに見られる病名ではあるが。 どういう癌であるか知

    • 腰部放射線照射

      検査入院の後、5日間連続で放射線照射治療が行われた。麻薬系鎮痛剤を服用しているので、眠気があり、車の運転は人に頼まざるを得ない。幸い数人の友人が時間の都合をつけて病院の送り迎えをしてくれた。これには院長はかなりの感謝の念と共に日頃の友人との関係が良好に保たれていることに嬉しさを感じずにはいられなかった。 この頃は院長の腰の痛みは薬で楽になっていたとはいえ、家で私マキがみているかぎりでも何とかしてあげたいくらい辛そうだった。本人も以前の痛みのピークの頃よりはマシになったとはいえ

      • 消化器内科(肝臓チーム)

        口腔外科での検査の結果、肝臓に腫瘍があることが明らかになり、さてそれが何であるかはまた検査を重ねていかなければならない。そしてそれは口腔外科ではなく消化器内科が担当することになる。院長のように動物病院の場合ほとんどの病院は全科診療であるため、ひとつの病院内で診療は完結するが(近年では獣医療界でも専門医が登場してきて、専門病院への紹介ができるようになってきたが)人医療ではかなり細かく分かれた 専門医制の縦割り医療である。消化器内科の中でも肝臓チーム、膵胆管チーム、胃腸チームのよ

        • 地獄の5時

          今回も私マキから、院長の様子を伝えるわね。 とにかく、癌が告知された訳だが、院長も副院長も動揺を隠しきれない状態だったわ。あまり笑わなくなった様子からもそれとわかるし。 口腔外科の先生は、消化器内科への紹介をしてくれたけど2週間後の予約だった。その間院長の激しい腰痛と股関節痛を抑えるため、麻薬系の強い鎮痛剤が処方された。同時に通常の鎮痛剤(ロキソニン)も併用された。さすがに麻薬系のオピオイド鎮痛剤はよく効くようで院長は痛みを訴えることが少なくなった。副作用として眠気が強くでる

        確定診断(病名決定)

          告知

          次女の帰省が終わり、お盆を過ぎた頃、いよいよ病理検査結果とPET検査結果が同時に伝えられる日が来た。この頃の院長はかなりの腰痛と股関節痛があり、家の中でも痛そうに歩いていたわね。私マキが甘えに行ってもしゃがむのが辛いようで、いつもならかがんで頭と腰を撫ででくれるのだけど、この頃はこえをかけてくれるだけだったわ。痛みで杖を付いて外出するような状態だってので、副院長も医大病院に一緒に行って!検査結果の説明を聞きに行くことにしたみたい。 今思えばこの頃が院長腰と股関節の痛みは最高潮

          告知

          家族日帰り旅行

          「もしもし、ちょっと落ち着いてきいてほしい 」大学院生の次女さんにこう切り出して電話している姿を動物病院の医局で見たのは8月初め頃だった。俺コソは、動物病院の医局が生活の中心なのだ。たまに裏庭や受付で寝転んでいることがあるが、病院での出来事にはかなり詳しい。 次女さんは、驚いただろう。元気に毎日働いて、日曜日は海の上で釣りをしている父親のイメージが強いので、とても病気と結びつけるのは簡単なことでは無いだろう。だから院長から「悪性腫瘍の可能性が高く、どうやら骨転移もしているよう

          家族日帰り旅行

          体と感情の遊離

          毎日夜に泣いているような声を聞くようになってのはこの頃からだ。私たちネコは基本的に夜行性なので、夜の方が感覚が鋭いのだ。だから、昼行性の犬と違ってホルモンの分泌も昼夜逆転するものもあり、それに応じて薬の投与の仕方が犬と違ったりする。獣医さんは同じ病気でも犬は犬として、猫は猫として分けて考えなければならないので一苦労あるようだ。さらに犬種猫種による差も考えないと行けないので大変なのだ。日本では人間のお医者さんはあまり人種差を考えずに診療できるが多人種国家のアメリカなどでは治療に

          体と感情の遊離

          腰痛と股関節痛

          マキです。少し前に口腔外科初診で4時間半待っている時に、院長が腰を痛めた話はしたと思うけど、それが後々大変な事になると書いた。いまはその大変なことは言わないで、その頃の院長の様子を伝えるわね。 長時間同じ姿勢で椅子に座っていたことが腰に負担をかけて腰痛が出たと思った院長は、まずは市販のシップ薬を貼って痛みに対応しようとした。院長は腰痛持ちという訳では無いが、40kg以上の大型犬を仕事で抱えて運んだり、重いものを担いだりした後、腰痛になることが数年に1回くらいはあった。腰痛ベル

          腰痛と股関節痛

          内視鏡検査

          今回は俺コソがその後をつたえる。口腔外科から消化器内科に内視鏡検査の予約がなされたことは、前回マキが記述したとおりである。その際、口腔外科医は食事抜きで消化器内科に行くよう指示し、予定表にも手書きで「食事無し」と記載した。院長は消化器内視鏡検査の経験が何回かある。だから、検査前空腹は理解していた。当日、朝から食事を抜いて昼からの予約時間に消化器内科の初診受付に備えていた。その頃の院長は下顎の腫れと腰痛、左足痛以外全身的な自覚症状はなく、お腹は普通に減るし、食欲も普通にあった。

          内視鏡検査

          各種検査

          PET検査(ペット検査) PET検査はがんの発見には不可欠な検査である。院長も過去数回PET検査を受けたことがあるようだ。癌細胞は活発に活動する細胞であるためそのエネルギー源として多くのブドウ糖が必要になる。PET検査はその癌細胞の特徴をうまく利用している。放射性物質で標識したブドウ糖を点滴して、しばらくブドウ糖が癌細胞に取り込まれるのを待つ、そしてその放射性物質を検出する装置で全身をくまなくスキャンしブドウ糖が集まっている部位つまり癌細胞が固まっている場所を見つけるのだ。

          各種検査

          医科大学附属病院口腔外科

          初診 歯科から帰ってきた院長は、とても悔しがっていた。院長という立場は、確かになかなか休みを取ることができない。病気がきとんと判明してからは、さすがに検査や治療で病院通いになったため、仕方なく、副院長とスタッフに動物病院を任せているが、院長でないと手に負えない外科系疾患や眼科疾患があり、また院長に見てもらいたいという飼い主さんの個人的要望も多い。やはり、院長がいないと動物病院の機能は半減するようだ。 それを分かっている院長は自分が気軽に休めないことは開業してから約30年ずっ

          医科大学附属病院口腔外科

          歯科

          後悔 院長の顎の話にもどるわね。二週間内科医で出された薬を飲んだけどいっこうに顎のしびれは改善しなかった。そういえば院長は二年前に右下の親知らずを抜いて一本前の奥歯をインプラントしてもっらていたのだ。どうやらその部分が腫れているのではないかということになって、インプラント施術した歯医者さんに行くことになった。 次回は一見したところインプラントには問題はなさそうだがと首をひねっていたが、確かに周辺が腫れているようだということで念のため歯科CTをとることになった。 右の下顎骨

          歯科

          院長家族

          娘たち 私マキは保護されたまだ数年しかたっていないので、院長家族について語れることは少ない。でもこれだけは言える、院長家族は本当に仲のいい暖かい家族なのだと。コソは動物病院で居候しているが、わたしは院長家族と一緒に動物病院とは少し離れた所に住んでいる。コソから聞いた話も含め、私が知っている院長家族のことを語ろう。 犬が二匹、院長、副院長、院長長女、その息子(院長の孫)と私で暮らしている。獣医師になった次女さんもいるのだが、大学院生で他県に住んでいる。年に数回帰ってくるが大の

          院長家族

          過去最大のストレス

          コソだニャー。動物病院で院長に何かあったかって?そりゃーこのことが過去最大のストレスと言える事件だったと思う。「○○吉飼い主窃盗事件」。あれはもう4年前になるのか、、、、、、、、、 全国的に先例がなかったわけではないが、地域の防犯や子供たちの通学の安全を見守るため、犬の散歩をする飼い主さんがその役をしようという運動が院長の住む自治体で始まった。「パトロール犬」という名で警察、行政のバックアップのもとマスコミにも取り上げられる話題だった。その中心的存在だった犬が○○吉という犬

          過去最大のストレス

          かかりつけ医

          毎日のように風呂上がりに顎を気にするようになったみたいだ。「おかしいな、しびれてるよなーーー」 院長は、数年前から高血圧で2ヶ月に一回くらい割で中高同級生のN先生のクリニックに通っている。そろそろ血圧の薬が無くなる頃で、受診のついでに顎の痺れについて聞いてみることにしたようだ。 ストレス?胃炎? 院長は獣医師で犬猫の病気について詳しいのは当たり前なのだか、医学的知識も一般的な人よりは持っている。顎の痺れで怖いの、やはり神経系しかも脳と関係していないかがとても気になってしま

          かかりつけ医

          変化

          お風呂上がりの院長がなんか変なことをしている。しきりに顎の当たりを触っている。「歯医者の麻酔の後みたいな感じやな?」どうやら右の下顎の前当たりがしびれているようだ。 「最近右の唇をよく噛むなーー」と院長が言い出したのは5月の連休明けくらいからだ。 コソ・デ・ポンタ ここからは、動物病院で居候されてもらっているマキの先輩保護猫である俺コソが動物病院での院長のようすを伝えよう。 院長が動物病院を開業したのは1993年6月のことと聞いている。大学の同級生だった副院長ミーミ先生

          変化