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消化器内科(肝臓チーム)

口腔外科での検査の結果、肝臓に腫瘍があることが明らかになり、さてそれが何であるかはまた検査を重ねていかなければならない。そしてそれは口腔外科ではなく消化器内科が担当することになる。院長のように動物病院の場合ほとんどの病院は全科診療であるため、ひとつの病院内で診療は完結するが(近年では獣医療界でも専門医が登場してきて、専門病院への紹介ができるようになってきたが)人医療ではかなり細かく分かれた
専門医制の縦割り医療である。消化器内科の中でも肝臓チーム、膵胆管チーム、胃腸チームのようにいくつかの専門分野に分かれている。院長の場合、肝炎ウイルスがあり肝臓癌の疑いがあるため、まずは肝臓チームが担当することになった。
造影CT検査と造影超音波(エコー)検査を行い、肝臓にある腫瘤(塊:マス)が何であるか調べることになった。担当の消化器内科医はテキパキと動き、ハキハキとした感じのいいドクターだった。優しそうな講師クラスのチーム長も同行して検査が行われたが、どうも肝細胞癌ではないような所見であり、ふたつの検査からは確定診断がなされなかった。なかなか診断に至らないケースというのは、珍しいことでは無いというのは、院長は自分の仕事から理解できるものであったが、自分のこととなるともどかしく感じてしまう。しかも次は入院しての肝生検(肝バイオプシー)となると不安な気持ちになる。
入院と同時に痛みの強い腰椎転移病巣に対して放射線照射治療を行うことになった。麻薬系鎮痛剤でかなり痛みは抑えられていたが長期的に見て半年くらいは痛みを抑えられるだろうという期待のある放射線照射治療はありがたい。
話を肝生検に戻そう。2泊3日の予定で入院した。院長にとって、人生2回目の入院である。動物病院を開院して数年した今から約25年前、朝起きたら突然の頭痛と目眩(めまい)という症状の髄膜炎(原因は不明だった)で1週間ほど入院して以来のことである。
院長は寂しがり屋で小心者なのでひとりでの入院は辛いものである。新型コロナウイルス感染症でいわゆるコロナ禍の中、面会禁止という状況の中の入院はさらに寂しさが増す。入院して1時間後には「帰りたい」と副院長にLINEをする始末。
コロナ禍で、密を避けるためか、4人部屋のそれぞれのベットはカーテンで個室化されていた。ただでさえ狭い四人部屋が閉塞感と孤独感が増していた。カーテンで仕切られているとはいえ室内の他の患者の立てる物音や夜のイビキ音はまったく減音されることなく不快な音として耳に入ってくる。隣りの患者さんは担当医に不満があるらしく看護師さんが入れ代わり立ち代わり出入りしている。そんな中「○○さーーん!麻薬の時間ですよーー」っと麻薬系鎮痛剤をナースステーションから病室に持ってくるのには閉口してしまった。麻薬系鎮痛剤はその薬物の性格上(麻薬取締法の制限を受ける)ナースステーション預かりとなり、服用時間になると看護師さんが病室に持ってきてくれる。静かに持ってきてくれるといいのだが、大きな声で「麻薬」という言葉を発するのはどうかなと思う。別に違法なことをしている訳では無いが周りで聞いいていて聞き流す言葉では無いように感じる。病院の、至る所に個人情報保護云々、患者のプライバシー保護云々と掲示されているが、入院病棟初め一般診察室でも大きな病院ほどプライバシー配慮にはかけている。となりの人の病状や治療法など丸聞こえに聞こえてくる。働いている医療従事者のプライバシー保護感性と一般世間の感性とは大きな乖離がありそうだと感じる。一日目の看護師さんには「麻薬」と大きな声で言わないで持ってきて欲しいと注意したが、翌日の看護師さんも大きな声で「麻薬の時間でーーす」と言いながら鎮痛剤を持ってきていただきました。夜勤交代の申し送りなどで伝わっていなかったのだろうか。このことは後々病棟師長と会う機会があった時に話しておいた。師長は「気をつけないといけないことですね。よく教えてくれました」と言っていたがどうなったかはわらかない。
さて本題の肝生検だか、全身的には鎮静剤とかはなく局所麻酔だけで18Gのツルーカット針で3箇所採材された。肝臓は痛みを感じない沈黙の臓器と言われるように、針を刺されても痛みはなかったがお腹の中にモゾモゾとした妙な感覚はあった。
処置後しばらくしてから動悸がはげしくなり、吐き気が出てきた。担当医がすぐに来てくれ、吐き気止めの点滴をしてくれたおかげで吐き気は収まったがその日の夕食は食べられなかった。
次の日は特に問題なく、針の刺入部の皮膚が少し気になる程度であった。
次の日は痛みのある腰椎転移部への放射線照射治療のための位置決めCT撮影をして退院した。


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