三ツ矢サイダー並みに澄みきっていた21歳、夏。 part 1
8年前の事。
当時、大学生だった私はバイク一人旅に憧れるあまり、学業はほどほどに妄想だけはたくましく育まれていた。
颯爽とバイクに乗って気ままに移動し、キャンプをしては焚き火をおこす。
一人静かにコーヒーをすすり、ため息とともに見上げた星空にあっとおどろき、視線が釘付けになる。
これらはすべて妄想である。
バイクには乗っていても、そんな経験はない。
後々の話であるが、新卒入社した会社の人が食堂でこんな質問をしてきた。
1人でキャンプして楽しいの?
さみしくないの?
ちょっとおかしいんじゃ、、、?
まったく、わかっていないとしか言いようがない。
そして大学生最後の夏休み、憧れの一人旅に出る時がやってきた。
バイト先の偉い人に、北海道に行くので、2週間休みをくださいと伝えた。
21歳の夏、私は全財産である5万円と北海道への憧れ、それと若干の経済的心許なさを胸に抱いてバイクのエンジンを始動させた。
あの朝、北海道へ向けて琵琶湖沿いを走りはじめた私の心は三ツ矢サイダー並みに澄みきっていた。
つづく
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