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肉はギリギリが一番うまい 〜職人の旅日記〜

2014年6月。
当時、自転車で日本一周中。
北海道北部のライダーハウスにて。

「クッサ!!生臭っ!!」

夕食の支度をしようとリュックを開けたとたん、とんでもない生臭さが漂ってきた。

臭いの正体は、つい数時間前に閑散とした個人商店で買った半額引きの鶏肉だ。

お店でパックを手にとった時から、「やけに灰色がかった汁が出てるな、、、腐りかけか?」とは思っていた。

その日はずっと薄曇りで、6月といえども北海道北部は寒いくらいだった。
鶏肉は腐りかけにも思えるが、宿に着くまでのあと数時間に外気温が原因で腐ることはないだろうと判断。
その日のうちに食べきれば問題ないだろうと思ってレジカゴに投入したのであった。


ライダーハウスの外で肉を焼こうとしていると、同じ宿に泊まる自転車乗りのおじさんが、しゃくれ気味に言う。



「肉はギリギリが一番うまいから大丈夫だよ。」


ニオイをごまかすために、塩コショウをたっぷり振りかけたからか、味に問題はなかった。

のちに、お腹に銃弾をくらう夢を見るほどの腹痛におそわれた。
その夜、夢の中に腹痛が侵入してきてはトイレに駆け込むというやりとりが合計で4回あった。

翌日、例の自転車乗りのおじさんと同じライダーハウス泊になって再会した。

腹痛の事を報告すると、またしてもしゃくれ気味に言う。

「あー、鳥肉だったかー。鳥肉は食べちゃだめだよ」と。

先に教えてくれよ。

みなさまのご支援で伝統の技が未来に、いや、僕の生活に希望が生まれます。