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記録癖の効能と副作用

昔から何につけても記録しておかないと気が済まない、いわば嗜癖のような記録癖があります。
毎食のカロリーと毎朝の体重、体脂肪率を3年、観た映画メモを5年、夢日記を10年、通院や日常の日記を11年。
今継続しているものだけでもこれだけあります。
どれも記録の量は膨大で、中にはすっかり忘れていたような出来事も少なくありません。

昨日から長々時間をかけて、11年続けている日記を読み返していました。
当時の自分が抱えていた生々しい感情に圧倒され、記録の持つ効能と副作用を感じているところです。
記録から受け取った感情すら記録したくなって、またこうしてタイプし始めてしまいました。

記録癖の持つ効能は認知療法的

何といっても忘れていた出来事や、その時受け取った感情を改めて客観的に俯瞰できること。
時間が経ったことで、冷静な目線で自分を再評価できます。
この時に比べればだいぶ落ち着いたな、とか、あの時は何もかもダメだと思っていたけどそうでもなかったな、とか、認知療法的な効果を感じられました。
記録を読み返しながら当時の認知の歪みを観察して、一つ一つ受け止め直していきます。

以前解離の症状がひどかった時期があり、その時のことは今でもあまり思い出せません。
だからこそ、余計客観的な目線を持てるような気もします。

通院の記録は、主治医と交わした会話の内容から心理面接の話題や処方の変遷まで、丁寧に残してありました。また、過去に受けたWAIS-III、ロールシャッハ、バウムテスト、エゴグラム、SCTなど心理検査の結果も残されています。
そのお陰でどのような経過をたどって今の状態まで持ってきたのか、これを再確認することもできました。
精神疾患が慢性化すると、治療期間は年単位に及びます。
この治療経過がカルテのように残っているのは今後にも役立ちそうです。

記録癖の副作用はフラッシュバックに似ている

一方、精神状態が悪かったときの記録は、いくら客観的に見ようとしても辛さが蘇ってきました。
過去の自分の生々しい心情の吐露に圧倒され、古傷が痛むような苦しさを感じます。
まるで自発的にフラッシュバックを起こしているような気分になって、途中何度か読むことを中断しました。

記録では、母親との関係性について頻繁に記述していました。
処方された薬を一切服薬させてもらえなかったこと、自分宛の郵便物をすべて開封されていたこと、母親と妹との喧嘩を常に仲裁していたこと、父親と喧嘩しては泣く母親を必死に慰めていたこと。
そして、母親への憎悪と謝罪が交互に現れています。
これはなかなかに奇妙で、グロテスクでさえありました。

よく「母親と娘の関係は難しい」というようなことを耳にします。
大なり小なりどこの家庭にも起こっていることで、自分のケースも珍しくはないのでしょう。
私の場合、解離中の行動やエスカレートする自傷行為と自殺企図で、母親へ負担をかけたことも関係悪化に拍車をかけていました。
それについて申し訳なさを感じつつも、未だ複雑な気持ちになります。
最近少し精神状態が持ち直してきたのは、病状の慢性期であるだけでなく実家を出たことが大きいように思います。

それでも、まだ実家に居たときのことを振り返るとフラッシュバックのような苦痛を感じました。

記録に触れることは治療的な自傷行為

「治療的な自傷行為」なんて言うと矛盾があるようですが、自傷を経験した方には何となく伝わるのではないでしょうか。
(身体的な)自傷行為は時に自分を落ち着かせたり、冷静さを保つ手段になります。
解離から現実感を取り戻す効果については、医学的根拠もあるそうです。

つまり,自傷行為には「反解離効果」があり,
「不快感情→解離による無感覚→自傷行為による痛み や血液といった知覚刺激→現実感回復」という一連の プロセスの中で,解離によって麻痺した感覚を取り戻 す意味があるのである 16)。

(引用元: https://core.ac.uk/download/pdf/15925623.pdf)

認知療法に近い治療的効果を感じるとともに、苦痛を呼び覚ますことへ自傷のような痛みも生みました。
これは、その当時の現実感を取り戻す自傷行為のような手段の一つなのかもしれません。

それでも記録癖を続けていこう

長年の習慣はそう簡単には変えられません。
そして、これらのアーカイブが消えてしまえば積み重ねた時間も同時に消えてしまうような気がします。
一種嗜癖となった記録癖は、今こうやってnoteを書いているようにこれからも続いていくのだと思います。

単純に自分用カルテを持てるのは便利というのもありますし、それとは別に映画メモなんかは読み直すと新しい発見があって面白いです。

記録に使っているアプリ一覧

継続して記録のために使っているアプリは以下の通り。

・カロリー・体重管理
https://www.myfitnesspal.com/ja/

・映画メモ
https://pedia.watcha.com/ja-JP/

・日記
https://www.utagoe.com/jp/momentdiary.html
https://evernote.com/intl/jp

昔から長く使っているアプリなので、最近は他にもっと便利なものがあるかもしれません。
データ移行が大変そうなので使い続けていますが、現状どれも使いやすく満足しています。

記録の残す記憶

自分のログを付けていると、良くも悪くもいろんなものが残ります。
若干強迫的なまでに付けている、もはやアディクションの記録癖。
それでも、記録が残した記憶に触れて徹夜するのも悪くないなと思うのでした。

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