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父の「がんばれよ」の言葉が、にじんでる。

最近わたしは、若干緊張がほどけない。

理由はわかっている。

たったひとつだけ。

連休を機に、父が上京することが決まって

いるせいだと思う。

世界中を暴れまわっているあの病よりもずっと

前から会っていないのでもしかしたら

7,8年前かもしれない。

noteをはじめたのはいろいろと、理由づければ

いろいろあるけれど。

ひとつは、わたしのコンプレックスやトラウマ、

ある種の傷をいやすためのものだった。

もう平気だよと言えるために「書いて」きたの

かもしれない。

その「書く」の宛先は自分であり父親だった。

最初のnoteは、文字通り父への「憎」に

近い感情を俯瞰しながら自分の文章に

ボケてツッコんで、もう平気だよと書くことで

演出してきたのかもしれない。

でも、不思議な感じだけど、noteで時々

父のことを溜息を吐くように綴っている間に、

わたしの父へのアングルも多少変化して

きたのを感じた。

角がとれた感情。

ゆるすとかゆるさないという次元は

もういいよという感情。

それを如実に感じたのは、本棚を整理

してきた時かもしれない。

父と母が別れてからわたしへの

クリスマスプレゼントとして本を毎年

20年ほどかけて贈ってくれていた。

父のセレクトした本のコーナーをこの間

じぶんの部屋に、はじめてつくった。

父がクリスマスプレゼントに贈ってくれた
本棚のコーナー。


一番最初の絵本。
なぜか、ウチのことがタイトルになってるみたい(笑船越桂さんを
舟越桂さんを好きだって一言も
言わないのに送られてきた
エスパーか!


それは、noteのお題#わたしの本棚 の

せいかもしれないけれど。

記事の為に棚に、ひとつひとつの本の居場所を

作っているうちに、父の想いに突然触れた

気がした。



わたしは、かつて父から受けたトラウマを

断ち切りたいがために本に寄せられていた

手紙をぜんぶ捨てたことがある。

読み返すことが、その頃のわたしの精神状態を

ぐらつかせるに十分だと思い、

一度目を通した後、捨てた。

そして、本のことだけは、大切にしてきた

つもりだ。

いろいろあったけど、いまがよかったで、

ふたをするわけじゃないけれど。

父から受けたいろいろあったことは

視点を変えると、父が娘から受けた

いろいろあったことにもなるなって

思うと。

測れないけれど、もういいやって思えた。

note書き始めてから、ひとつだけ昔とかなり

ちがうことのひとつに、父からの電話が

それほど億劫じゃなくなっていた。

むかしは会話にならなかった。

お互いのむごんと無言でつながる時間だった。

いつだったかの電話で、まるであと何回桜が

みられるのかなと同じ感じで。

あとどれぐらい本を読めるのかなって嘆いた

言葉を聞いた。

その時わたしははじめて、父のいない世界を

一瞬想像したのかもしれない。

その父がもうすぐ、わたしの住む街にやってくる。

数日前から緊張を覚えているのはそのせいだ。

前回会った時、横浜駅で別れた。

わたしがごちそうさまでしたって言ったら

父が駅の改札を通る前に一度振り返って

「がんばれよ」って言った。

涙ぐみながら言うから、そういうの勘弁して

ほしいから会いたくなかったんだよと

わたしの心は、ちぎれそうだった。

おまけに「がんばれよ」ってずっと嫌いな

言葉だった。

すなおにありがとうって言いたい気持ちが

生まれない天邪鬼なわたしだから。

そう言われる度に、頑張ってないと思われて

いるようで、まぁそんなに頑張れてないけどって

いいたい自分もその頃は確実にいた。

あの日の「がんばれよ」。

あの5文字にこめたわたしへの想いを想う。

いろいろあったふたりだから、精一杯

その5文字にしかできなかったのかも

しれない。

父の涙をその時、はじめてみた。

あたらしく芽生えた自分の感情。

胸が、じびじびする痛みを感じた。

その感情をはやく、わたしの中から

追い出したくて繁華街を夜までほっつき

歩いた。

あの日も、もう昔だけど。

父が今度上京するのは、定年退職してから

描き始めた絵が、ある賞をもらったそうで

その授賞式のためだという。

がんばれよって娘に言っていたその父が

いろいろとがんばっていたのかって、

わたしはその知らせをもらった時、思った。

電話口でよかったやんって言っていた。

「よかったやん」。

今度会う時はたぶん、そんな言葉をなんども

かわすんだろうなって思いつつ。

でも生身で父に会うことには、まだ緊張が

ほぐれてはいない。

尖った緊張ではないけれど。

そんな気持ちをnoteになぜか書いて置きたくて。

書けない気持ちで じんせいは 形作られて
書きたい気持ちに 鍵かけて 置いておく









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