ゆらしたら、わかる。(ショートショート的な)526文字
それは、ゆらしてみたらわかるからとその人はいった。
なにもみえないしろいうつわのなかに、その液体がどれだけ
入っているのか、さだかじゃなくて。
ゆらした。ゆらす。ゆれる。
でもわかったようなわからないような。
わからないって云おうとおもったら、そのひとは、重さを測って
みたらっていって、赤い測りをもってきた。
赤い測り。それはあなたのマイスケールだった。なんでも測るのが
あなたの仕事だったから。
もういいよ、って言いながら、その器をそのひとに手渡す。
蜂のおしりみたいな形で、ぽってりとしていた。
測ってみてもわからないね、測りたかっただけって言いながら。
その器をあなたは唐突に振った。
振る時は、終わってしまう時に似た音がふたりの頭の上で鳴った。
シェイクするみたいに振る。鈍いぽちゃんっていう音がした。
今の音、相当やばいねってふたりで笑った。
ふたりで測ることに飽きたので、それを戸棚にしまった。
もうしばらくしたら、その器のことは、きっと忘れてしまっている気がする。
でも、ふたりでなにかを測ったことだけを覚えているような。
そんな気がするって思っていた刹那。
戸棚の奥の方で、なにかをカウントしているこもった音がふたりの耳に聞こえた。
ふたりは。ふたり同時に目を閉じていた。
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