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「僕と目をあわせてくださいませんか」という言葉に出会って。

この間、デパ地下で夕ご飯を探していた時に。

新潟から来てお魚を売っていた方がいらっしゃって。

なんどかそこをぐるぐる回っていてちょっとその場から
離れた時に

「お願いですからぼくと目をあわせてくださいませんか」
って声が聞こえた。

大阪弁の人懐っこさで道行く人にとにかく懇願していた。

え?

聞き間違ったかなった思って。
もう一度聴いていたら、もっと大きな声で

「お願いですから、ぼくと目をあわせてくださいませんか」。

ってやっぱりひたすらに言っていた。

通路をすすすと通っていくおばさまたちが
愛想笑いしながらスルーされていた。

わたしも目を合わせなくてすみません。
そういわれると合わせにくい!

そして一人の御婦人がするっと引き寄せ
られていた、それはそれでよかった。

でもはじめてそのフレーズを聞いて、とっても
チャーミングなセールストークだと思った。

セールスという言葉は今も苦手で。
がっつがつな感じをどうしても
やれない。

物を作るのは好きな方だけど。

作った後の売るということが未だに
なかなか積極的にできていない。

セールスとか宣伝とか苦手なのになんで
広告の仕事を目指したのかわからないけど。

言葉でなにかを伝えることならできると
夢見ていたのかもしれない。

わたしが憧れていたコピーライターの方の
事務所にお招きいただいてスタッフの方々と
はじめて会った2月。

その憧れの方だけがわたしと目をずっと
あわせてくれなくて。

すこしだけ心の中はしょんぼりしていた。

わたしの話に興味がないのかな?って
思ったのだ。

そして今日訪れたの間違っていたのかなと。

でもわたしはめげずに目を合わせていた。

時間が経つと一瞬あわせてくれるように
なった時に、わたしはドキッとした。

ずっと好きだったコピーライターの方が
わたしと目を合わせてくれていると
思うと心の中でちいさくヨシ!と
微笑みながらも、そのままで合わせなくても
いいですと。

ふいに緊張が襲ってきた。

でも半ば営業も兼ねていたのでわたしはその方と
おろおろしながらも目を合わせてお話を聞いていた。

ぎらぎらと獣のような眼をしながら内心どきどき
していた。

わたしがそのデパ地下のセールスされていた方と
同じように。

お願いですからわたしと目をあわせてください
という気持ちになりつつ、やっぱいいです
そのままでという気持ちになったのは
初めてかもしれない。

それにしてもあの床暖房とスタバラテ、素敵な
温かさだった。

その後仕事の依頼を受けたので、嫌われた
わけじゃなかったんだなと、ほっとした。

最近、セールスするとか宣伝するという
ことで色々と立ち止まったりしていたけど。

物を売るっていうことは、まずその物、商品と
目を合わせてもらうということなんだなと
今更ながら納得していた。

商品と目を合わす場合はセールスになるし。

人の場合は、プライベートだとその人の
話を聞くその人を知る「はじまりのドア」みたいな
ことになるのかもしれない。

わたしはたいてい人と会うと目をがっつり見て
話さないと不安になるので、見てます!
というアクションをしがちなのだけど。

お願いだからぼくと目をあわせてください

という懇願にも似た切実な想いは、セールスパーソン
としてとても正しい佇まいだと思った。

あの売り場の方はその後誰かと目があったの
かなって思いながら夜のデパ地下を歩く。

1日の終わりのひとり反省もオプションに
つけながら。

何かを作り直接誰かに買ってもらうことで
暮らしている人の言葉が痛いほど心に
ピンポイントで響いてきた夜だった。



📚𖤣𖥧𖥣𖡡𖥧𖤣宣伝してすみません。
ⁿᵒᵗᵉで出会った
イシノアサミさんと
  絵本を作りました𖤣𖥧𖥣𖡡𖥧𖤣📚




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