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きみのしっぽのことを、何で想いだしてるんだろう。

「わたしずっとほしいんだ、しっぽ」っていう
言葉をみつけた。

しっぽが何故欲しいのかその理由もわからないのに

わたしもずっとほしいよ、しっぽって思った。

家族と犬の物語にでてくる主人公「ぼく」の妹の言葉。

しっぽって、つくろわなくていいからまんまの

気持ちがでてるからいいんだって彼女は思う。

じぶんの顔って人間ってどうしても

<ついつくろってしまう>。

尻尾は誰かに気を遣うこともないし、ありのままの

心でいられるような気がするから。

尻尾があったらよかったのにって思ってしまう

なにかが物語の中で彼女に起きたんだなって。

だからもっとじぶんでいたいんだっていう妹の

想いを読みながらふいに昔よく知っていた

きみの尻尾のことを思い出す。

ほしいものへの要求がしごく明解でやなことは

やだし、

ばかにしたいときはおもいきりシカトして。

眠りたい時に眠り、起きたい時にはひとの安眠を

かきわけるようにいっしょに起きろとなかば

乱暴的にわたしを揺り起こす。

彼はいつの季節も黒いものを着ているから

突然の冠婚葬祭だってちょっとアレンジ

すればオッケーないでたちだ。

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階段をかけのぼるときはいつだってわたしよりも

先に目的地についていなきゃ納得できない負けず

嫌いな性格の持ち主。

でも言っておく。

きみが先に日課のようにそこに辿り着いたとしても

きみはきみのほしいものは手に入らないんだよ。

わたしが辿り着くのを待って、静かにに座って

いたって。

もしかしたら

きみが喉から手がでるほどほしいって叫んだって

無理なときもあるかもしれない。

わたしがきみを愛してるきもちが変わらずにそこに

あるから、こやってきみのほしいものをぞんぶんに

あげることができるんだよ!・・・。

とかなんとかびしっとたまには言い放ちたかった

のに。

わたしはいつも彼の後ろ姿に追い付いて、甲斐甲斐

しくも彼のいまいちばんほしいものをいちはやく

察知して与えてしまう。

背中とお尻のあいだに携えている別の生き物みたいに

うごめくそれの先だけを触っても気づくらしくって、

さわんなよ しっぽを! ってするっとかわされる。

あんなにとっておきフードを欲しいっていうから、

たくさんあふれるほどにあげたのに、ほしいものを

さっさとじぶんのものにしてしまえば、

いましばらくはいらないという感じで背中を向ける。

死んだらつよいよね~。

そんなことばをある人から聞いたことがある。

やっぱり死んだらつよいのだ。

死んだもの勝ちという意味では決してない。

生きていたときに見返りなんて言葉が存在する

ことを忘れてしまうぐらい日がな一日かすがいを

感じていたそんな溺れきっていた対象が

死ぬからいつまでも心にすみついてしまうのだ。

黒猫が死ぬさいごの日。

彼は桑田佳祐の歌う『花』を聞きながら

しんでいった。

わたしはいつものようにあの尻尾をつつむように

触った。

それはあたしに抗うことなく。

てのひらにゆだねられたはじめてのこと。

拒んでほしい。

あの時みたいに邪魔くさそうにうごめいて

ほしい。

人も猫もしんでからやっとじぶんのものに

なってゆくのだ。

きのうすこしだけページをめくって見つけた

詩のことばがある。

夕暮れの庭である
カトマンズの朽ちた寺院の
階段でさわった
固い腸のような尾だ
あの物に 恋をしている
(中略)
すでに散った桃の木へ歩み
ぶらさがる雲を見る
下の方から 尾になっていくのだろうか
生きもの 人のからだ
とはいえ 泣くとやばいよ
森原智子『尾のような』

今、泣いてはいない。

泣いてはいないけど、きみのしっぽみたいに

わたしもしっぽがほしい時あるよって

思ったりしている。

尻尾って 君の言葉だった って思ってもいい? 
こころのしっぽ ふってみました うずくまる夜


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