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いつもツンデレな本屋さんが、好きになってしまっている。

ここって、じぶんの部屋の本棚なのか?

って思うほど、乱雑に棚に並べられている本屋さんがある。

わたしがよく通っていたこの本屋さん。

海の匂いのするこの街に引っ越してきて、間もない頃は、まだ
棚の整理中なのねって思って独り合点していたけれど。

それから何年経っても、そのままで。

ますますその状態はひどくなっていたりする。

棚の上のへりに、本は横に倒れていて、でもきれいに倒れていて。

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(☝イメージ映像です😊)

積み重ねてあるので、タイトルや著者のことは体を斜めにして、みなくてはよくわからない。

そして。

本を買っているのにもかかわらず。なぜか、レジ打ちが面倒くさそうで、買ったことがまちがいだったのかと思うぐらい、おばさんの店員さんは愛想がないんだけど。

いつだったか。

母とその書店に行った。そして別々に入り口に入った。

母にはその女性店員さんは、世間話をしてどこの美術館がよかったとか
フラワーパークの話で盛り上がっていた。

その店員はわたしを単品でみていて、いつもの態度をとろうとしたのだけれど。

でも、母とおなじツレであること知って。

態度を一変させた。

信じられないぐらい、口角挙げてにっこりとレジを打つ。

ていねいに袋に本を入れてくれた。

別人やんこのおばさん!って思ったぐらい。

この手のことはわたしはよく、経験してる。

昔も書いたけど、マウントとられるタイプらしく。

そして驚いたことに。

このおばさんだけではなく、その親族二人の人たちも同様の態度を取る。

血は争えないね。

そんななんていうか、

ドラマの中のキャラの濃い書店員さんみたいな老舗デパートの3Fにあるこの店がなんか好きで。

ことあるごとに、本が欲しくなると寄ってみたりしていた。

そこのおばさんとおじさんは3人の親族で経営していて。

昔は薬局と本屋がひとつになっていたらしい。

やり手やん!

そしてその店の人たちはいつも、誰かが怒ってる。

売り上げの事や、注文の品が入ってこないとか、月刊誌の付録とか多すぎるわってぼやいてる。

店の人がいつも怒ってるってどうなん?

って思ってたけど。大型書店に比べるとなぜかここが居心地よく
なっている。

背中辺りがぜんぶ耳になってしまったみたいに。

怒号の飛び交う本屋で、彼や彼女たちの声を聴いてると。

落ち着きは悪いはずなのに、そんなスリルいっぱいの中で集中して本棚に
視線を向けていると。

思いがけなく古びた本に出会ったり。

これまた、入荷していないと思ってた最新刊に出会ってしまったりして
うれしくなる。

あ、ここに新しい本がある。

そういうこと自体が珍しいという不思議な書店なので。

とりわけ得をしたみたいな気分になる。

いやよいやよはやっぱりすきよ。

そんな妙な雰囲気を醸し出している書店だ。

お客さんが少ないと思っていたら、そうでもなく。

みんな結構そこに吸い寄せられてゆく。

ただ、あいうえお順とか出版社順とかじゃないというか、はなから
そこにこだわっていないというか、

まったくその点を無視している並び方なので

ほんとうに、出会ってしまわないととっておきの一冊には出会えない。

店内には、生々しい売り上げの話や、ひどい時には○○○○という作家は
ぜんぜん売れないから、もう入荷とかやめたいねっていう、そういう時だけ、親族一同は異議なし! みたいに一致団結する。

店内に、彼らの怒号や意見のエキサイトした会話がゆきかう中の延長線上で見つけた本のページをめくっていると

本屋さんと本の物語の中に描かれたなにか、営みということが
ひとつに混ざり合っているようで、そういう意味では馴染みがいい。

きれいきれいだけじゃないよ、世の中は。

とも思うし。

いろいろあるやん、生きてると。

とかも思うし。

そういう世界が綴られた本を読むのに、ふさわしい場所のようにも思えて
くる。

コロナの緊急事態宣言が明けて、すぐにそのデパートに行ったとき他の店舗は、いくつか撤退していることがあった。

いつも待ち合わせに使っていた神戸が本社のケーキ屋さんも終わっていたりして。

ちゃんとお店の人に声をかけたかったのに。それもままならなくて。ちょっとだけ後悔している。

そして、ある日その書店があった3Fに行った。

そこだけは、時間が止まったかのように。

親族一同みんなマスクをつけて、そこのおじさんはいつも運び入れ担当みたいだったけれど。

おばさん二人にいつものように怒られながら、本を運び入れていた。

小さくて、生活くさくて、いつも開店前みたいな顔でしれっとしている
本屋さんだけど。

なくなってしまったら寂しい。

そしてその日も、本を一冊だけ買った。

かなり昔の本だった。

そしてレジ打ちの時、なんかツンデレのツンが微妙にやさしくて。

丁寧に葡萄のイラストのついたブックカバーを巻いてくれた。

それがわたしはすこしだけ、物足りなくて。

もっとツンしてくれてもよかったのにって思いながら店を後にした。

#聞きながら書いてみた

今日は

♬郭秀楓さんの空想書店です。

歌詞の意味はわからなかったんですけど、ちょっとのどかなので。

ではどうぞお聞きくださいませ♬

       出会う人 出会えない人 ほころびる文字
       森のどこかで ページがゆれる 栞そよいで






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