安心するのは、百万年早かった。
愛していた黒猫ノワールが死んでから
喪服をきて過ごしていた栞は、
黒いものにまみれてしまいたかった。
時々、栞の心はどす黒く染まる。
みんなに可愛い黒猫ちゃんと
言われるたびに心が痛んだ。
なぜなら、ノワールははじめから
ノワールだったわけじゃない。
純白だった。
最初はシロだったのに闇をまとった
みたいに黒くなっていった。
世の中がシロなのかクロなのかと
言い合うのを聞いていた白猫は
次第に染まっていった。
不本意に黒く染まる猫をみている
たびに栞は悲しくなって、だきしめ
ながらごめんねっていってた。
栞のなかの投げやりな過剰防衛な
その言動をいつも聞かせてしまって
いたことも謝りたかった。
おしまいの日。
染まり行く体を、ノワールは
丁寧に毛づくろいしていた。
そして時々栞の、手の甲を丹念に舐める。
ざらついたその舌が舐めていった場所から
栞の身体も染まっていった。
やわらかな姿に転生していた。
白でも黒でもない猫に生まれた栞は
これが伝説の安心なのだと百万年前からの
夢を叶えていた。
🐈⬛ 🐈⬛ 🐈⬛ 🐈⬛ 🐈⬛
今夜は久々のショートショートnote書いてみました。
お題は「伝説の安心感」です。
むずかしい。
もどかしい。
こたえはあるのか。
ないようであるのでは
ないか、このショートショートnoteのこたえ。
そんな気持ちでいつも書いています。
神のみぞ知る。
ショートショートってそういう域なんだと勝手に
解釈しております。
最後までお読みいただきありがとうございます🐈
いつも、笑える方向を目指しています! 面白いもの書いてゆきますね😊