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好きな人の世界が、まじりあう時。

じぶんの好きな世界を誰かにこれいいんだよ

ってなかなか言いにくいタイプだから。

いつもひとりで、これいいねって思っていた。

ごくごく親しい年上の女の人にだけは、

じぶんの好きな世界を知ってもらっていた。

その人はすぐ忘れてしまうので、つぎに

おなじことを言った時にわたしが好きな

あれねって言うと。

ちょっとぼんやりした表情で、好きだっけ?

って聞いてくる。

だからわたしはそれ好きなんだよっていう

ことを、何度も言う。

すきなものの話をしているとき、わたしの

こころは整う。

そして、そのことを受け入れてもらえる

という安心感があるから。

逆に、誰かの好きな世界を聞くのは好きだ。

好きな人の好きな世界は、凄く知りたいと

思う。

ともだち。

っていうか、「好きな人」といったほうが

落ち着くので、その人のことは好きな人

と、自分の中で呼んでいる。

好きな人と古都で会っていた昼下り。

ふたりのお気に入りの古いカフェで

一枚のCDをもらった。

彼女がずっと心の底から応援している

ミュージシャンの方。

ちょっとどきどきしたって、言いながら

そのCDを渡してくれた。

森翼さん「naive」。

歌詞カードを開いたらわたしの名前も

ちゃんづけで書いてくれていた。

サインもらってくれたんだと、思うと

じんとした。

昔よく呼ばれていた呼ばれ方の名前が

そこに綴られていて、照れくさいような

うれしさがあった。

そこまでして贈り物をしてくれたМちゃん

の気持ちがありがたかった。

この歌がとくべつに好きなんだっていって

くれたのは、彼の「窓」という曲だった。

カーテンを揺らす外の風を浴びて
終りのなり夢を見てる
手をつなぎながら目は合わさず
僕らは泣いていた
その涙のわけは今は聞かないで

助手席で眠る君を起こさないように
ゆっくりとブレーキを踏む
ラジオから聞こえたラストソング
懐かしい映画の歌
僕らの軌跡をもう少しこのまま聞かせて

森翼さん作詞「窓」。

好きな人の世界をみせてもらえて、

すこしわけてもらえるっていいなって

思った。

じぶんの好きな世界に好きなひとの

好きな世界がまじりあうとき。

わたしは心の底が、むかし底なし沼の

ようになっていた人を避けていたあの頃を

すっかり忘れられる。

その歌詞が音の船に乗っているような気持に

なる森翼さんの声は、なんていうんだろう

ありきたりにしか形容できなくて

もどかしいけれどほんとうに天使みたいな

ミラクルな声。

歌と声と言葉がひとつになって、わたしの

耳に幸せを届けてくれているような魅力が

ある。

ひとりになった部屋でわたしは最近

使わなくなったコンポのCDトレーに

この一枚を乗っけて、聞いている。

部屋が音に包まれてゆく。

人と出会うということは、じぶんの世界が

じんわりとひろがってゆくことなんだなって

そんなことを思っていた。

ありがとうМちゃん。



いつも、笑える方向を目指しています! 面白いもの書いてゆきますね😊